Sep 18, 2026 interview

Yuki Saito監督が語る 松岡茉優と仲里依紗、タイプの違う2人だから生まれた“掛け算” Netflixシリーズ「ダウンタイム」

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俳優の力と “テイク1” がもたらす臨場感

池ノ辺 松岡茉優さんと仲里依紗さん、お二人の演技は特に素晴らしかったです。監督はどういうふうに演出をされたんですか。

Yuki 僕の信念として、演じるのは松岡さんであり仲さんですから、実際に演じる人の言うことに耳を傾ける、というシンプルなところを心がけました。僕らの狙いとして、このキャラクターにはこういう行動をとってほしいという思いはあるんですけど、それをそのまま全部伝えて演じてもらうと、ロボットみたいになってしまいます。

例えば、俳優さんがすごく引っ掛かっている、ちょっと違うなと思っているセリフがあるとすると、それを無理に言ってもらっても、そこにはちゃんと感情がのらないんじゃないかと思うんです。もちろんドラマというのは本当に起きていることじゃなく俳優さんが演じていることではあるんですけど、そこでちゃんと感情が伴っていたら見る人の心に届くと信じているので、そこはセリフを変えることも含めて大事にしたい。

とにかく松岡さんだったら沼田文として、仲さんだったら遠山凜として生きてほしいし、そういう二人をまるでドキュメンタリーを撮るようにありのままを撮りたいという思いが根底にあります。ですから、カメラもステディカムで、どう動いても対応できるようにして、基本は長回しでテイク1を使う。もちろん何度もテイクを重ねる良さというのも否定はしないんですが、僕としてはテイク1のフレッシュさ、何度もテイクを重ねる前の1回目でしか撮れないものを信じているので。さらに言えば松岡茉優さんと仲里依紗さんという素晴らしい才能を持った、しかもタイプの違う女優さんが掛け合わさることによって、その場でしか生まれないものが撮れるだろう、そこを大切に撮っていくというのが一つの大きなアプローチでした。

池ノ辺 お二人の会話のあの臨場感も、そこから生まれていたんですね。

Yuki とはいえ何回かはクローズアップを押さえたりツーショットを押さえたりというのもあります。あとはバミらない。いい画を撮るために、照明も完璧に当たるスポットというのがあるんですが、基本は、どう動いてもカメラが対応できるような場や空気をつくって、自由に俳優さんたちに動いてもらうというところから臨場感も生まれているのかなと思います。

僕らは、俳優さんたちに段取りのときに動いてもらい、その演技から受けた感動を現場で生で見られるので、それをそのままお届けしたいという気持ちがあるんです。見ている人にもこの臨場感、感動をなるべくそのまま伝えるにはテイク1のフレッシュさは大事だと思うし、現場ではできる限りカットを割らずに撮る。それをその後で、どこをどう伝えるのがベストかは編集室で組み立てていきますけどね。

池ノ辺 相手とキャッチボールをしているときにどんどん変わっていく自分がいるというのは、仲さんもおっしゃっていますね。

Yuki 特に仲さんはとても直感型で本番で爆発力があって、相手が投じたものに生のリアクションで返す人なんです。だからその場で起きていることをとても大切にする。その場で松岡さん演じる文ちゃんがガーッと行くことによって、そこに反応する凜さんがいてという掛け合い、まさに掛け算が行われていたわけです。ある程度「こうしたい」というディレクションはあっても、実際どうなるかは現場でやってみないとわからない。特にあの二人のシーンはそれがあったので、僕自身もスタッフもそれを楽しみにしていたところがありました。