Sep 18, 2026 interview

Yuki Saito監督が語る 松岡茉優と仲里依紗、タイプの違う2人だから生まれた“掛け算” Netflixシリーズ「ダウンタイム」

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天才的なオペ技術を持つ形成外科医・沼田文は、ある出来事で大学病院を追われ、不本意ながら美容医療の世界へ転身する。そこでカリスマ美容外科医・遠山凜と出会い、それぞれの信念をかけて激しく対立するが、その関係はやがて思わぬ方向へと変化していく。

松岡茉優が演じる沼田文と、仲里依紗が演じる遠山凜を軸に、美容整形の世界を描くNetflixシリーズ「ダウンタイム」。美容医療の「ダウンタイム」とは、手術後、日常生活に戻るまでの期間を指すという。美容整形という華やかな表舞台の裏に潜む金への欲望と、人々の美への渇望が暴かれていく、渾身のヒューマンサスペンス。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、Netflixシリーズ「ダウンタイム」のYuki Saito監督に、本作品やドラマへの思いなどを伺いました。

いろんな価値観がある、でも正解は自分が見つける

池ノ辺 美容整形業界の裏側と親子関係の話がこれでもかというぐらいうまく描かれていて、とっても面白かったです。観ていてどんどん引き込まれていきました。

Yuki ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。

池ノ辺 本作「ダウンタイム」は、美容整形の世界を描いているわけですが、企画段階から美容業界をいろいろリサーチされたそうですね。実際に調べてみてどうでしたか?

Yuki まさに知らないことだらけでした。現在は、美容整形が流行っていて、昔はタブー視されていたものが随分とオープンになってきている、というあたりまではなんとなく知ってはいたんです。でも正直、これまで自分自身、美容整形についてそこまで深く考えたことがなかったんですが、美容整形を題材にしたオリジナルのドラマをやるとなって調べてみると、世の中はこんなにも美容整形の広告に囲まれていたんだというのがまず発見でした。

池ノ辺 言われてみれば確かに多いですね。

Yuki 今回のリサーチでは、まず美容外科のクリニックの先生にお話を伺いました。それはいわゆる「直美(ちょくび)」(医師免許取得後、初期研修を終えてすぐに美容医療の道に進むこと)の先生や形成外科から来た先生とかいろいろです。あとは、実際に美容整形を受けられた方、それも1回目の手術を受けたばかりの方や何度も受けている方とか、いろんな方を集めて座談会形式の取材もありました。そうした中で、それまでいかに自分の考え方が凝り固まっていたかに気づかされたんです。世間でも多様性の時代と言われていて自分でもそう口にしていたのに、自分はこんなに価値観というものを勝手に決めつけていたのかと。

池ノ辺 それはどういうことですか。

Yuki それまで美容整形は、なりたい自分になるとか自分を変えて違う顔になりたいとか、変身願望的に捉えていたんです。でも実際に美容整形を経験した人の話を聞くと、例えば毎朝起きて鏡を見た時に自分の顔で気になるところがある。そこを美容整形によってちょっとアップデートすると、鏡を見た時に自分が前向きになれる。そんなふうに割と明るく話してくれる人が多いんです。そういう価値観もあるよな、それはそれでいいのかな、というふうに自分自身がどんどん揺らいで変わっていった感覚があったんです。

このドラマの中でも、主人公である沼田文は、最初、形成外科医として美容整形に対してすごくアンチな考えを持って美容整形業界に来るんです。でもそこで出会う患者さんや遠山凜先生の患者への向き合い方や信念などに触れ、知っていくうちに、自分で自問自答していく。これはまさに僕が取材しながら自分で体験したことであり、ドラマを見る人が文を通してそれを体験してくれたら、結果として見る人の価値観も揺さぶられるような、そんな新しいドラマになるんじゃないかなという思いがあります。

池ノ辺 私も美容整形に対してちょっと引いた目で見ていたところがあったんですが、このドラマを見て、自分が生きる上ですごく大切な一つの選択肢なのかもしれないと思いましたし、気づかないうちに偏見を持っていたんだなということにも気づきましたね。

Yuki 自分自身で深く掘り下げていかないとなかなか気づけないんですが、自分で勝手に決めつけていることっていっぱいあるんだということですよね。だからこそ、このドラマで一番気をつけたのは、美容整形がいいとか悪いとかを決めつけないということでした。いろんな考え方や価値観があるんだというのを知ってもらった上で、その善し悪しはそれぞれが自分自身で決めてほしい。こちらで正解を決めないというのは、この作品の特長かなと思います。