Jun 04, 2017 column

アニメビジネスの先進的なチャレンジにテレビ業界は何をみるか?

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僕がこういったアニメ業界の行動を見ていて感じることは別のところにある。 それは、近年伸び悩みが話題となる、TV事業のことだ。TVそのものの視聴者離れが言われ始めて久しい。加えて長引いた不景気もあり、当然ながら製作費も下がる。見ている人が減り製作費も下がっているわけだから、悪循環がもう長いこと続いている。だいたい、スポンサー料は各企業の広告費だ。そして不況になったときに各社が減らすのも広告費だ。スポンサーによって成り立つ民放番組は、不況の影響を真っ先に受け、最後まで影響が残る業種の1つである。 その状況に放送業はどう向かい合ってきたのだろうか?

それがこの何年もずーっと引っかかり続けていることだ。華々しい一部の番組を除けば、製作費が下がったことでギャラだって減るしスタッフも減らされる(作家などは真っ先に削られる)。取材に行ける場所も回数も減る。アニメ業界の離職率の高さがよく話題となるが、放送業界の離職率も正直言ってかなり高い。だからずっと気になり続けてきた。

僕が過去に見た「TV放送の未来」を伝えるドキュメンタリーで大きな衝撃を受けたものが2つある。

1つは(これはあまりにも古い記憶が頼りなのだが)80年代中盤の深夜の海外ニュースドキュメンタリーで、その中ではアメリカ3大ネットワークの会長が「地上波に未来はない」という話をしていた。当時、「地上波に未来がない」というヴィジョン自体を考えたこともなかったため、この話にはとても驚いた。実際、90年代以降のアメリカはCATVが当たり前になり、さらに今では放送局は従来と役割を大きく変え、放送自体が大きな変化を遂げている。

もう1つは、2008年に放送されたNHKの『放送記念日特集 新動画時代』という番組だ。 「放送記念日特集」はNHKが毎年3月22日の放送記念日に流しているもので、08年に放送された同特集では、すでにネット配信による番組視聴が当たり前となっている北米をはじめとした海外の状況などが紹介された。そこには、僕らにとってはいまだ当たり前である地上波の姿(製作事業形態)は、もはやほとんど留めていなかった。「地上波に未来がない」と言われてから四半世紀ほどで、アメリカではCATVすら過去のものとなりつつあり、ストリーミング放送が急拡大していた。さらにこの特集番組から9年後の今年には、CATVの契約者数が過去最悪の減少となったことが伝えられた。

以前、放送関係者とそんな話をしていた時に「日本の放送は“江戸時代”なんですよ」と言われた。後年に大手配信事業が日本でのサービスを開始したときに、幕末の「黒船」になぞらえた見出し記事をいくつか目にしたが、その比喩は上手いものだと思う。既存の事業を守ることばかりを苦心する日本の放送事業はあまりにも江戸時代的な鎖国政策だったのだ。