Nov 28, 2020 column

『劇場版 鬼滅の刃』という事件は、いつかアニメを見る人たちの革命になるのかも知れない

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とにかく今年のアニメと映画興行における最大のトピックであり事件が『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の超ヒットであることに異論がある人はいないだろう。10月16日の公開からの1ヶ月半その勢いに驚きっぱなしだ。TVを見ていてもラジオを聴いていても連日なんらかしらの話題があり、社会現象になるというのはこういうことなのかと思い知らされる。

シネコンで多スクリーンを占め、30分おきに上映があるという無限列車どころか通勤列車並の上映時間を目にしてクラクラしてきた。スクリーン数の多さはコロナ禍で新作の公開が減っていた隙であったことや50%入場者数制限への対応でもあったが、こんな光景を目にするのは初めてだ。都市部だけの現象ではなく地方でも多スクリーン型の劇場では同様のことになっている。正直に書くとTVシリーズの最後にこの劇場版が発表されたとき、僕は「深夜アニメの続編劇場版の上映より少し大きいくらいの規模」だと想像していたので面食らった。

11月24日には動員数が1939万7589人、興行収入が259億1704万3800円になったとの発表がされた。邦画・洋画を含めた日本国内の歴代興行収入ランキングで、ついに14年の『アナと雪の女王』(興収約255億円)を超えて3位になった。ちなみに2位は『タイタニック』の約262億円であるので十分に超える圏内だ。(もしかするとこの記事が公開されるときにはもう超えているかもしれない)
この半年、コロナ禍の影響で危機的な状況にまでに落ち込んでいた映画館にとってはまさに救いの神だ。
人気は国内にとどまらず台湾や香港でも大ヒットスタートとなり、さらに12月には韓国でも公開が控えている。

この超ヒットが「あらゆる意味において異例であり予想外であり規格外の出来事」とまで言われることにはいくつも理由があるが、その1つがこの作品が「シリーズ全体の途中のエピソードだけの劇場版」というところだ。TVアニメシリーズのそのままの続きで、それまでを知っていないとわからない。しかもこれが完結編というわけでもなく“この後”もあるので物語全体の結末でもない。途中のエピソードだけの劇場版はアニメファン向けのコアな作品では珍しくない手法とはいえ、それがここまで大々的に公開され、しかもそれが一般大多数層まで引き込んだというのはあまりにも稀だ。