Oct 23, 2020 column

破壊と再生と反映はどう描かれてきたのか『MANGA都市TOKYO』展が体験させるポップカルチャー都市論

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まだ徐々にだが、数々の映画や演劇やライブやスポーツイベント、そして美術展などの開催や入場にまつわる規制が緩和されてきた。そんな中、東京六本木の国立新美術館で企画展『MANGA都市TOKYO』が11月3日まで開催されている。

『MANGA都市TOKYO』展覧会サイト:
https://manga-toshi-tokyo.jp/

コミックやアニメやゲームや特撮作品といったポップカルチャーでの描かれ方を通し、江戸時代から現代まで幾度もの破壊や崩壊をへて何度も再興し、そのつど姿を大きく変えてきた東京の歴史や風俗を浮き彫りにするという、ちょっと変わった企画展だ。
本展は18年にパリで開催された日本文化を紹介する『ジャポニスム2018』公式プログラムとして開催された『MANGA⇔TOKYO』展の日本への凱旋展示で、展示そのものもほぼ同じ状態が再現されているという。

国立新美術館でこういう企画展と言えば、15年に『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』が開催されたことも記憶に新しい。これは日本のマンガ、アニメ、ゲーム作品が描いてきたものと現実の社会を結びつける事をテーマとした企画展だった。

さらにこういったコンセプトでは04年にイタリアで開催された『ヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展』の日本館で展示された『おたく:人格=空間=都市』という企画展示も話題となった。00年前後にそれまでの「パソコンとゲームの街」から「萌えブームにともなう広い“オタク”の街」へと新たな変貌をしていた秋葉原のオタク文化を、1つの空間にカリカチュアして詰め込み表現するということが試みられた企画展だった。(日本でも後に東京写真美術館で再現展示が行われた)

MANGA都市TOKYO
会場風景 撮影:上野則宏

ちなみに今回の『MANGA都市TOKYO』展は、その『おたく:人格=空間=都市』でも中心的役割を果たした明治大学国際日本学部准教授の森川嘉一郎がゲストキュレーターとしてコンセプトや展示に大きく関わっており、あの切り取り方や挑発性に面白さを感じた人であれば今回も間違いなく何かを感じられる物となっている。
会場の中央には1/1000という超巨大な東京の縮尺模型が展開し、その周囲を様々な作品と時代が彩っている。

コミックやアニメやゲームや特撮作品において東京が舞台の作品は数え切れないが、本展ではその中から選んだ作品を通し、そこで描かれる生活描写や街並み、文化、都市像といったものを切り出している。

たとえば江戸文化の研究家としても有名であった杉浦日向子の作品から見る江戸庶民の生活や文化。『はいからさんが通る』は大正のファッションや、“職業婦人”など女性の社会進出といった時代性も描写した。変化球としては大正時代をモチーフとした“太正”が舞台の『サクラ大戦』(ゲーム)ではそれがどのように描かれたのか。

サクラ大戦 ©SEGA
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戦中を描いた幾多の作品から戦後。80年代バブル経済期のカルチャーを反映した作品。バブル崩壊後から現代までを映し出しているもの。繁栄した都会に現れては何度も壊していった『ゴジラ』シリーズではそれぞれの作品で東京のどのあたりが登場していたのか。とりわけ多くの人にとってなじみがあるのは『言の葉の庭』『君の名は。』『天気の子』といった新海誠作品の現在の東京の映し出し方だろう。アニメでありながら実際にある風景を緻密な美術描写と光の陰影によって表現したその姿は、街そのものをもう1つの主人公としている。

MANGA都市TOKYO
ゴジラ TM & © TOHO CO., LTD.
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アニメとしてのその部分について「お」と思わさせるものも展示されている。TV『ルパン三世(パート2)』最終回の第155話『さらば愛しきルパンよ』(80)の映像だ。宮崎駿が照樹務名義で手がけたエピソードでシリーズ中でも屈指の傑作回だが、放送時に視聴者が驚いたのは新宿での市街戦、高円寺付近のビル、新宿高層ビル街の夜景などの実際の東京の風景が緻密に描かれていたことにもあった。今ではこういった「実際にある風景をアニメに登場させる」ことは珍しくないが、これがアニメにおいてそれを行った最初(あるいは初期)ではないかと思う。僕も放送後に友人と「黄桜」の看板をわざわざ探しに行ったのだが、今思い返せばあれは僕にとってアニメーション(虚構)と現実が結びつけられた原体験の1つでもある。

MANGA都市TOKYO
ルパン三世(PART2) 原作:モンキー・パンチ ©TMS

実際にある場を描くというのはいわゆる聖地巡礼やアニメツーリズムの点で見られがちな要素だが、本展はその面も含めつつ別の視点も体験させてくれる。こうして俯瞰したときに、例えばたかだかここ2~30年ほどの風景、街並みであっても想像していた以上に大きく変貌していることに今さらながら気づかされる。一体あの時のあれは何だったんだろうか。あれは一体いつ頃からこうなったんだろうか。あらためて考えるとあそこは何でああなんだろうか。つまり会場を訪れた人たちが展示を通してそう気づかされ考える体験そのものが一種の“都市論”“東京論”であるのだ。

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