自分の世界を広げてくれる映画の力
池ノ辺 今回、初めての長編映画でしたが、撮り終えてみていかがでしたか。もう次が決まっているんですか?
坂西 いえ、まだ決まっているわけじゃないんですけど、新しい脚本を書いているところです。この映画を撮る前に、自分の夢として「映画を撮りたい、映画監督になりたい」というものがあったんですが、そこから先のことはあまりはっきりとは考えていなかったんです。人によっては、商業映画で成功してずっと映画監督として撮り続けたいとか、海外で賞を取りたいといった目標があったりするんでしょうけど、僕の中にはそういう明瞭なものがなかった。それで、この映画が撮れるとなって、いざ自分の夢が叶いそうだとなった時には、自分はこの先はどうなるんだろうと思ったこともありました。でも実際撮り終わってみると、やりたいことがもっと溢れてきて‥‥。

池ノ辺 何がやりたいか明確に見えてきた。
坂西 こんなこともやりたいとか、こういうこともできたんじゃないかとか、これを踏まえて、じゃあ次はこういうことが生まれるんじゃないかとか、本当にいろいろ思うことが増えているので、日常としては楽しくなりましたね (笑)。
池ノ辺 じゃあ次の作品はさらに楽しみですね。では、最後に皆さんに聞いている質問です。監督にとって「映画」とは何ですか?
坂西 うーん、何なんだろうなぁ‥‥。どんな時代でも、物事の見方、新たな視点を教えてもらうこと、そういった体験ができるものが好きだなと考えています。
池ノ辺 それは「観る側」としての視点ですか。
坂西 そうですね。

池ノ辺 じゃあ作る側、監督としてはどうですか。
坂西 皆さんに自分の作ったものを体験してほしい。「体験」になると思います。
池ノ辺 それは自分の人生を豊かにするための体験、みたいなことでしょうか。
坂西 「人生を豊かに」と大それた事を言うつもりは全くないんです、うーん、映画って脳を広げてくれる感覚があるんですよね。自分だけで考えられることって、一つ、一人分しかない。その世界を広げてくれるもの、という感じに捉えています。
池ノ辺 なるほど。では、そういう映画を撮らなきゃいけないですね。
坂西 そうですね。大変です (笑)。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 立松尚積
監督・脚本
1992 年、東京都出⾝。京都造形芸術⼤学(現:京都芸術⼤学)映画学科卒業。⼤学時代より映画制作を始め、短編映画『すこしのあいだ』『夜のこと』などを制作する。『すこしのあいだ』において、ISCA(INTERNATIONAL STUDENTS CREATIVE Awards)映画祭2013最優秀作品賞を受賞、『夜のこと』において、京都造形芸術⼤学最優秀学科賞を受賞。⼤学卒業後、助監督(⽯井裕也監督『⽉』『茜⾊に焼かれる』など) やメイキングカメラマン(⼟井裕泰監督『花束みたいな恋をした』『⽚思い世界』など) として映画に携わる。80年代から90年代にかけて、⽇本の⾳楽シーンにミュージックビデオという分野を定着させた⻤才、映像ディレクター・映画監督の坂⻄伊作を⽗に持つ。⾃⾝もAwesome City Club「勿忘」などのミュージックビデオを監督。本作品が待望の⻑編映画監督デビュー作となる。

大好きな人を明日も忘れないために。この気持ちをいつか思い出すために。とめどなく続く、家族の記憶と記録の物語。
監督・脚本:坂西未郁
出演:柄本佑、穂志もえか、梅沢昌代、伊佐山ひろ子、成田裕介、占部房子、香椎由宇、イッセー尾形
配給:リトルモア
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2026年6月12日(金) 新宿ピカデリー他にて全国公開
公式サイト memorizu.jp