高橋文哉×櫻井海音インタビュー 才能のエゴイストたちは何を見たか 映画『ブルーロック』

”青い監獄 (ブルーロック) ”と呼ばれる施設で300人の高校生ストライカーたちが生き残りをかけた熾烈なサバイバルを繰り広げる大人気漫画『ブルーロック』。その実写映画が、2026年8月7日(金)に全国公開される。

漫画の世界観を再現しつつ、実写ならではの迫力とリアリティを追求するという挑戦。そしてこの物語は、青春を描いた単なるスポーツ映画ではない。「自分というエゴイズム」をテーマにした人間ドラマである。

実写映画化への抜擢と心境

——人気サッカー漫画の実写映画化作品である本作ですが、出演が決まった際のお気持ちを教えてください。

高橋 いまから3年半ほど前に声をかけていただきました。あの『ブルーロック』が実写映画化! ? というのを期待と驚きいっぱいで、お話を聞いたのを覚えています。しかも、自分に主人公・潔世一という役を任せていただけるということで、ただただ嬉しい気持ちが勝っていましたが、いざ撮影が始まってみると、そんな自分が情けなく感じるぐらいスケールの大きい作品でした。撮影が始まってからのここ数年間は、映画が公開される2026年までに自分がどうなっていなければいけないのかを考えながら、歩みを進めてきました。

櫻井 原作漫画を読んでいて、蜂楽廻は好きなキャラクターでした。ドリブルが得意でテクニックが光るキャラクターなので、幼少期からサッカーをやってきた自分にしかできない蜂楽があるんじゃないかと感じていました。サッカー経験を活かせるということもありましたが、自分を育ててもらったサッカーに対して、恩返しじゃないけど、やっと何かを返せるという気持ちもありました。自分にとっては覚悟も必要な作品でしたね。

元日本代表選手指導によるリアリティ

——元サッカー日本代表の松井大輔さんが、本作にサッカー監修として参加されています。どんな指導を受けましたか?

高橋 最初は個人で教えていただき、だんだん人数を増やして練習していきました。海音くんはどんな感じだったの?

櫻井 僕も最初は個人でしたけど、松井さんは、「一緒に遊ぼうぜ」のような感覚で、ほぼ放置状態でした (笑)。

高橋 海音くんはサッカー経験者だから、別に教えることがないというか、蜂楽の技を練習するという、役としてのトレーニングだよね。

櫻井 サッカーの技術的な練習ではなく、監督や演出が求めている映像とサッカーのリアリティのバランスをどう取るかを、撮影に入る前に、みんなでシーンごとに固めていく作業が中心でしたね。

高橋 僕はもう2メートルくらいの距離のパス練習から始めました。松井さんが「とりあえず、サッカーを好きになってほしい、そうじゃなきゃ本当に上手くならない」と仰っていたのが、印象に残っています。新しいことに挑戦する不安もあって、最初の数カ月はなかなかサッカーのことが好きになれなかった。でも素直に向き合っていると、どんどん上手くなってくる。そこで「楽しい」というスイッチが入りました。あと「潔は視野が広い選手だから、首を振り続けてくれ」とも言われました。意識しても最初は全然できなかったのですが、だんだん「この瞬間はボールから目を離してもいいんだ」という感覚がわかってきました。そんなこともあって、今後役者としても視野の広さが武器になったらいいなと思っています。

潔と蜂楽 それぞれの関係性

——高橋さんは潔世一、櫻井さんは蜂楽廻。それぞれ演じられた役柄に共感した部分やご自身と似ているなと思ったところはありますか?

高橋 エゴが芽生えていく感覚は、とても共感しました。自分の湧き上がった感情を理解して、自分のものにしていくまでの過程が、潔世一というキャラクターの好きな部分です。僕も言いたいことが言えなかったり、胸に秘めたものを言葉にすることに抵抗があったり、自分の気持ちを整理することができずに、いろいろ探っていた時期があったんです。自分が思っていることを伝えることで、自分だけではなく他の誰かも楽にしてあげられたり、守れたりすることがある。そういう経験を重ねてきたことが、自分にもありました。

櫻井 登場人物の中で、サッカーが大好きで、一番本能のままにプレーしているのが蜂楽だと思っています。でも勝負の世界で楽しさを見出すということって難しいですよね。僕自身、サッカーは大好きだけど、プロを目指していた頃は、そんなに楽しめていなかった。プロを諦めてからとても楽しくなって、ちゃんと練習していたときより上手くなりました (笑)。さっきの話で、松井さんが文哉くんに「サッカーを好きになってほしい」と言ったのは、そういうことだと思います。楽しいから上手くなる、といったところは、蜂楽と自分が似ている部分かと思います。

——潔と蜂楽という関係性を演じる上で、意識したこと、大切にしたことを教えてください。

高橋 蜂楽と交わり合った結果、最終的にお互いを尊重し支え合う関係になれた。潔の蜂楽に対する思いが、どうやって培われたのかは、とても意識していました。蜂楽は潔という才能を最初に見つけてくれた人。それを潔自身がいつ、どう気づいたのかを考えることが大事だと。原作漫画でも映画本編でも「こいつを信じていい」と思えるまでの時間経過が早い。「なんで『俺らだけでもパスを回していこう』って言えたんだろう」とか、自分の中で、その理由を一個ずつ積み上げていきました。その理由があればあるほど、説得力があっていいと思うんですよ。

櫻井 蜂楽にとって潔は、一緒にいると楽しいし、嬉しい。一緒にもっとサッカーをしていたいという気持ちになれる存在。ボールを持ったときでも、持っていないときでも、潔のことをいつも見ているということを、とても意識しながら演じていました。そうすることで、言葉を交わさずとも、お互いを信頼し合えるような関係性に文哉くんともなれたと思っています。そういう点では、役者としても、人としても、とてもいい経験をさせてもらったと思います。

理想のエゴイストとは何か

——ブルーロックに参加する選手は、最強のストライカーになるためにエゴイストであることを求められます。お二人が考える「エゴイスト」とは、どんな存在ですか?

高橋 自分の正解を他人に叩きつけられる人ですかね。一役者としてこの映画で目指していたのは、そんなエゴイストです。僕自身、この作品をどう思っていて、どんな思いで向き合っているかということを、キャストみんなに共有していました。みんなに「高橋文哉という人間」を受け止めてもらっても、まず自分が求めている自分になっていないと嘘つきになってしまう。ただ、自分の正解や理想をみんなに話すことによって、本来の自分と理想の自分との間がどんどんなくなっていく感覚はある。この作品において「エゴイスト」とは、一番大事な部分だと思うので、そういった取り組み方をしました。

櫻井 意見を主張するときは、自分に対して自信があって、その裏付けとなる根拠がなければいけないと思います。エゴイストは、そういう説得力がある人だと思いますね。文哉くんは、それがある人だから、その姿を見た周りのみんなが引っ張られていくんだと思っています。

——私生活で「自分ってエゴいな」と思う瞬間ありますか?

高橋 僕は負けず嫌いなんです。なにより自分に一番負けたくない。自分に嘘をつきたくないですし、自分を信じてくれている人に嘘をつきたくない。そういう思いがとても強いです。どんな勝負事でも、なるべく勝ちたいタイプなので、勝ち負けがない俳優という世界にいることができて良かったなと思っています。

櫻井 僕は焼き鳥愛かな (笑)。店とか鳥の種類とか、食べるときのルーティンとか。色々とこだわりが強い気がします。まず、基本はお任せで注文して、職人さんが一番いいと思っている順番でいただく。で、食べるときには串を持ち上げて、両面を舐めますように見ます (笑)。焼き鳥の裏面を見て食べる方は、なかなかいないと思いますが、焼き具合とか、職人さんの癖とかこだわりを感じたいんですよね。

互いの圧倒的武器へのリスペクト

——映画本編中、登場人物たちは「自分の武器」を探し、それを覚醒させようとします。高橋さんは櫻井さんの武器って何だと思いますか?

高橋 海音くんの一番の武器は「他者へのリスペクト」だと思います。今日の取材中もずっと「文哉くんの背中が、主演としての姿が」って言ってくれていて。撮影終盤になって「どんどん居心地がよくなっていく現場だな」と気づいたんです。それも、やっぱり海音くんのおかげ。サッカーのプレーのことでも、お芝居のことでも、迷ったら海音くんと相談して決めていました。でも、いつも「文哉くんがやりやすい方でいいよ、俺、どこでも合わせられるから」って言ってくれるんです。相手を尊重することによって自分の役に対する表現も変わるでしょうし、もちろん人間誰しもエゴを出したい中で、相手を尊重できる強さは、すごいと思います。それは僕に対してだけじゃなくて、役へのリスペクトもある。「蜂楽だから」と決めつけるのではなくて「蜂楽だったらこうもあるだろうな」と、型にはめずに演じていることが素晴らしいことだなと思います。

——では櫻井さんは高橋さんの武器って何だと思いますか?

櫻井 最近、初めて文哉くんに言えた話なんですけど‥‥ (笑)、文哉くんも負けず嫌いですけど、僕にも負けず嫌いな部分があります。もちろん役者としてのプライドもあります。でも、現場で文哉くんの姿を見ていたら、「あ、この人になら負けてもいいや」と思ったんです。それぐらい圧倒的な主演力というか、存在感を目の当たりにしたときに、「高橋文哉が主演を張っている作品だったら、もう自分は最高の2番手を務めたい」という気持ちに素直になれた。それがとても大きいですね。すごいですよ、現場での「座長力」みたいなものは。なかなかできることじゃないし、できる人は本当滅多にいない。稀有な役者だなと感じています。

——これから映画『ブルーロック』を観る皆さんへのメッセージをお願いします。

櫻井 サッカーの「リアリティの部分」と「フィクションの部分」のバランスがしっかり取られている。それでいて、とても迫力のあるプレーシーンになっていると思います。映像とお芝居、全部ひっくるめて、この作品を感じてもらえたら嬉しいです。特に「覚醒」シーンのプレーは、僕も何回も観たいぐらいかっこいい映像です。本当に何度も観ていただきたい。

高橋 キャスト・スタッフが本当に一丸となった作品です。僕ら役者が、それぞれの役であるために、瀧悠輔監督をはじめとして、スタッフさんたちのサポートを受けて、本当にやりやすいようにやらせていただきました。

人気漫画『ブルーロック』を実写映画化するという挑戦に対して、一切物怖じせず立ち向かって足並みをそろえたキャストの皆さんと、そこに大きく背中を押してくれたスタッフの皆さんがいたおかげで、公開までたどり着くことができました。やっとこの作品を観客の皆さんに届けられます。

よく取材で「この作品、誰に観てほしいですか?」という質問をしていただくんです。誰だろうなぁってずっと考えていたのですが、僕はこの映画を「まだ自分を見つけられていない全ての人」に観てほしい。夏の思い出の一部に、この熱い映画『ブルーロック』を受け取ってもらえたら嬉しいです。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 猪岐沙矢佳

映画『ブルーロック』

サッカー⽇本代表は⻑年得点⼒不⾜に陥っており、それを打開するために極秘のプロジェクトが計画された、その名も“⻘い監獄 (ブルーロック)”。そこに集められた300 ⼈の⾼校⽣ストライカーたちは、数々のトライアルを受け、最後に勝ち残った者だけが、世界⼀のストライカーとなれるという。⼀⽅では、脱落者は⽇本代表⼊りの資格を永久に剥奪されるという残酷な条件付きだった。無名の⾼校⽣プレイヤー潔世⼀は、299⼈を蹴落とし、最強のエースストライカーとなれるのか!?

監督:瀧悠輔

原作:金城宗幸・ノ村優介『ブルーロック』(講談社「週刊少年マガジン」連載)

出演:高橋文哉、櫻井海音、高橋恭平、野村康太、青木柚、西垣匠、橘優輝、石川雷蔵、岩永丞威、浅野竣哉、櫻井佑樹、倉悠貴、窪田正孝

配給:東宝

©金城宗幸・ノ村優介/講談社 ©CK WORKS

2026年8月7日(金) 公開

公式サイト BLUELOCK-MOVIE.JP