父親の逮捕、両親の離婚、恋人との別れ。人生に絶望していた大学生・佐倉真司は、同級生の花森雪希から、時給わずか三〇〇円の《死神》のアルバイトに誘われる。仕事内容は、人生の延長時間 “ロスタイム” を与えられた《死者》の心残りに寄り添い、あの世へと送り出すこと。出産時に子どもの顔を見ることなく亡くなった女性、大好きな母に想いを届けたい小学生──。《死者》たちの切実な想いと向き合う中で、佐倉の止まっていた人生も少しずつ動き始める。だが、花森が胸に秘めていた “ある真実” が、ふたりの関係を大きく揺るがしていく。
原作は、「 “生きる今” が、どれほど尊いものか教えてくれる」と共感を呼び、コミカライズもされ累計発行部数36万部を突破した、作家・藤まるによる同名小説。西畑大吾(なにわ男子)と福本莉子がW主演を務め、繊細な映像美と感情表現に定評のある酒井麻衣監督が、映画『366日』の製作陣と共に、切なくも美しいヒューマンストーリーを紡ぎ出す。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『時給三〇〇円の死神』の酒井麻衣監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

自然に寄せた心情表現に魅了されて
池ノ辺 本作『時給三〇〇円の死神』は、人気小説からの実写映画化ですが、監督はどの段階から参加されたんですか。企画からですか?
酒井 企画が先にあって、監督のオファーをいただいたんです。「とても素敵な原作で、酒井さんに合うと思うんですが、ご興味ありますか」と。それで原作を読ませていただいたら、藤まる先生の素晴らしい文体と物語で、ぜひご一緒したいとお返事しました。

池ノ辺 最初に原作を読んだ時、こういう映像にしたいなと思ったところはありましたか?
酒井 藤まる先生の、主人公の佐倉くんの心情表現が、季節だったり自然だったり、星の感じなどに見立てて表現されているのがとても素敵で、それを、どうやったら映像化できるだろうか、というのは思いました。あとはやはり冒頭の雨のシーン、そしてクライマックスの、いろんな出来事があっていろんな奇跡が起こる、そこは印象的に描きたいと思いました。