美しい海と空が広がる、瀬戸内のとある島。そこに転校してきた男子高校生・櫂 (かい)と、この島で育った暁海 (あきみ)。ともに家庭に恵まれず、孤独を抱える2人は、互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。夢を掴むために上京する櫂と、家族のために島で働く暁海。そんな2人に、無情にも突き付けられるいくつもの“岐路”。15年にわたる大恋愛の末の2人の決断とは――。
小説家・凪良ゆうが2022年に発表した傑作恋愛小説『汝、星のごとく』。シリーズ累計発行部数180万部超を誇るこの人気作が待望の映画化。運命に翻弄される櫂と暁海を横浜流星と広瀬すずが演じ、この作品の映画化を熱望した横浜流星に乞われ、藤井道人が監督を務める。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『汝、星のごとく』の藤井道人監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

盟友・横浜流星に乞われて
池ノ辺 本作『汝、星のごとく』の映画化の経緯を教えてください。横浜流星さんから声がかかったそうですね。
藤井 はい。流星に「この役を僕が生きたいんだ。もう原作者に手紙まで書いてしまった」と、どうしても映画化したいと言われたので、原作を読む前に「いいよ。やるよ」と伝えました。そこで原作を読んでみると、まあ、流星が選んだくらいですから素敵な本で、逆に「ぜひやらせてください」と監督をすることになりました。
池ノ辺 その時はまだ、配給も決まっていない頃ですね。
藤井 そうです。流星が頑張って東宝に「一緒にやりたい」と企画を持ち込んで、東宝サイドにもこの企画を考えていたプロデューサーがいて、「藤井も連れてきました」と、トントン拍子の流れで決まったというところでしょうか (笑)。
池ノ辺 タイミングも良くて、同じ思いが結集したんですね(笑)。
藤井 原作の凪良先生も「じゃあ一緒に花火大会を見に行こう」みたいなパッションでいてくださったんです。顔合わせの「初めまして」が、その花火大会だったという、それくらいの熱量で始まったプロジェクトでした。

池ノ辺 スタートした時は、「これは素敵な作品だ。でもちょっと大変そうだな」という感じでしたか。
藤井 もちろん簡単だとは思いませんでしたが、そもそも流星が、櫂という役、つまり15年を生きるという一番ハードルの高い仕事を選んできたので、自分もその15年をどう描くか、大変だからこそやりがいもあると思いました。
池ノ辺 そう考えると、流星さんもプロデューサーみたいな感じですよね。
藤井 そうですね。ただ、この先、彼自身がプロデュース業をどんどんやっていきたいのかというと、そうでもないと思うんです。彼は、役を演じることが好きだから。でも彼自身が「自分が生きたい役を選ぶ」ということは、これからもあると思います。そういう時に今回の東宝のプロデュースチームのようなところがサポートしてくれたら、今後はプロデュース業にも携わる俳優として生きていけるんじゃないかなと思います。
池ノ辺 ということは、流星さんが「この作品をやりたい」と監督にお願いして一緒にやるという作品がこれからも増えるということですね。
藤井 そうですね。でも、『正体』(2024)の時は僕が流星に「これやろうよ」と言って、今回の『汝、星のごとく』は彼から僕に言ってきたので、次は僕のターンだと思ってます (笑)。
