Sep 23, 2016

ニュース

魚のプロ「築地仲卸人」が教える東京のうまい店。
新橋の名店で、ひと手間かけた旬のキンキを味わう

tsukiji_syugo

日々、市場で魚と向き合い、その質を知り尽くす目利きのプロ。そんな厳しい目を持つ築地仲卸人が一目置く得意先、そのうえ、プライベートでも通う行きつけの店にハズレなし!
とびきりの素材を卸す仲卸人と、その素材を存分に光らせる料理人、素敵な関係から生まれる美味を、存分に味わおう。

 

数々の名店を常連に持つ高級鮮魚店
「熊梅」の仲卸人がおすすめする北海道の美味

eavin

熊梅 アービン/皆川英幸さん

築地歴8 年。深夜から翌朝は仲卸人、昼はミュージシャンと二つの顔を持つ男。持ち前の人懐っこさで築地の仲間を集めてくれた今回の企画の立役者。

 

 

北輝(新橋)

仲卸人との静かだけど熱い絆

「サラリーマンの聖地」とも呼ばれる新橋。それはただ酔客が集まる場所ということではなく、美味を求め、肩の荷を降ろして楽しめる店が多いからこその称号だろう。北海道の素材を、北海道らしい飾らないスタイルで楽しめる『北輝』もそのひとつ。
 北海道出身のご主人・藤田睦男さんが、ここに店を開いたのは昭和55年(1980年)。奇しくも、このガイドの一人、仲卸人アービンの誕生年であり、そんな縁が藤田さんと築地の関係をより強くしたという。アービンが語る。
「築地での取引だけではなく、お店と同い年というのもあってなのか、音楽活動を同時に行っている僕のことを気にかけていただいて、店に作品を置いていただいたりしているんです。家族ぐるみのつきあいもしていて、魚選びにも気合が入りますよ」
 普段は物静かだという藤田さん。照れ隠しなのか、軒先に吊るしたキンキの一夜干しの様子を見ながら、「もともと、彼は魚選びの目利きだから信頼しているんですよ。彼はこんなユニークな顔しているけれど(笑)、商売も、魚に対しても、僕に対しても正直だから」と、返す。

 

おまかせの中に登場したキンキの一夜干し。新鮮なキンキを、あえて天日で干し、ぎゅっとうまみを凝縮させたもの。脂がのりまくったキンキも、ひと手間かけるとしつこくなく、むしろ口当たりは淡白で、旨みは後からついてくる。

おまかせの中に登場したキンキの一夜干し。新鮮なキンキを、あえて天日で干し、ぎゅっとうまみを凝縮させたもの。脂がのりまくったキンキも、ひと手間かけるとしつこくなく、むしろ口当たりは淡白で、旨みは後からついてくる。

 

プライベートでお世話になっている竹中直人さんを、感謝の気持ちをこめてこの店に案内したこともあるのは、味、腕、雰囲気に加えて、「ホーム」に招くという感覚。仲卸人と料理人の強く、朗らかな信頼関係は、旨い魚にありつけるということになるわけで、これは間違いなくお客さんにとってもメリットだ。

 

無口な職人、寡黙な時代劇俳優のような風情もある藤田さん。しかし料理を口にすれば、温かい人柄が伝わってくる。飲兵衛のツボを抑えた焼酎、日本酒のセレクトもうれしい。

無口な職人、寡黙な時代劇俳優のような風情もある藤田さん。しかし料理を口にすれば、温かい人柄が伝わってくる。飲兵衛のツボを抑えた焼酎、日本酒のセレクトもうれしい。

 

キラキラと輝く魚貝
目からも元気をいただく

 北海道の生まれ育ち。藤田さんの人生の歩みがあってこその真の北海道の味。これを求めて来るお客さんのために、築地の仲卸人も、北海道の美味を求めて奔走する。豪快というイメージもある北海道料理だが、グルメなお客さんがしみじみ「旨いねぇ…」と感嘆するように、おおらかさの中に、にじみ出るやさしさも、また魅力だ。
 まず、花形は刺身だろう。北海道スタイルとでもいうべきか、大ぶりに切り分けられ、肉厚な身がキラキラと輝く。ピンクと白の北寄貝や、輝くボタン海老、鮮やかで深みのあるオレンジのウニに、透きとおるイカなどがその皿にあれば、気分はもう北の港に飛んでいく。肉厚で瑞々しく、噛んでいくと、蕩けるというよりはねっとりと甘みを増しながら、じわじわと旨みが強まっていく。そう、洗練や繊細というよりも、むしろ飾らない大らかさが、心と体に広がっていく感覚だ。

 

北海道料理らしい、見た目にも食べ応えがある刺身の盛り合わせ。今、旬のものならなんでもいいというものではない。お客さんが求める「北海道らしさ」のためにはずせない魚貝を常にキープするのも一苦労。だからこそ信頼できる仲卸人との関係が重要なのだ。

北海道料理らしい、見た目にも食べ応えがある刺身の盛り合わせ。今、旬のものならなんでもいいというものではない。お客さんが求める「北海道らしさ」のためにはずせない魚貝を常にキープするのも一苦労。だからこそ信頼できる仲卸人との関係が重要なのだ。

 

 キンキをはじめ、八角やホッケなど北海道独特の魚は、そのまま焼いても、一夜干しにしても魅力的。こちらも刺身同様、豪快に見えて、どこかほっこりとした余韻。そして、メインには、カニ。カニを食べるときは無言になる、というのは定説だが、北輝の場合は、少しの無言はあっても、旨いと感じた後は会話が弾む。旨みと同様、瑞々しさ、溌剌として健康的なカニは、今日の幸せとともに、明日への元気にもなる。

 

北の海の魅力、毛ガニの魅力をこれでもかと表現した豪快な一皿。だが、藤田さんはこの皿のために丁寧に、丁寧に時間をかけて下ごしらえ。身が瑞々しいのは納得だが、ミソまで明るく軽やかで止まらない。ところが余韻は一転、しみじみ深い。

北の海の魅力、毛ガニの魅力をこれでもかと表現した豪快な一皿。だが、藤田さんはこの皿のために丁寧に、丁寧に時間をかけて下ごしらえ。身が瑞々しいのは納得だが、ミソまで明るく軽やかで止まらない。ところが余韻は一転、しみじみ深い。

 

 魚だけではない。北海道といえば野菜。野菜も市場の目利きとともに、北海道の大地を楽しみたい客のために選ばれる。緑鮮やかなアスパラガスをはじめ、こちらも魚同様、いきいきと弾み、やさしい甘みと大らかさで、ほっこりとさせてくれる。
「気持ちも大らかになって酒の方もついつい楽しくなりすぎる」
 常連さんがこの店でそう漏らしたように、酒も進む。会話は弾むし、ボリュームも少し上がるけれど、でも、騒ぐのではなく北海道の味と寄り添いながら、心地良い時間がいつのまにか過ぎていく。

 

「築地は魚だけではなく野菜もいいんです」と仲卸人アービンがいうように、緑鮮やかなアスパラガスは火を入れてより甘みを増し、大ぶりのしいたけも瑞々しさを失わない。

「築地は魚だけではなく野菜もいいんです」と仲卸人アービンがいうように、緑鮮やかなアスパラガスは火を入れてより甘みを増し、大ぶりのしいたけも瑞々しさを失わない。

 

 北海道からは遠い新橋も、築地は至近。藤田さんにとっては、遠くて近い北海道がそこにある。カウンターに素材を並べるプレゼンテーションは、さながら一夜の北海道博覧会。喧騒、嬌声、解放感いっぱいの酔客の千鳥足。裏路地まで飲食店がひしめき、入れ替わりも激しい新橋にあって、大らかに、朗らかに舌鼓を打ちながら、癒しと元気をいただく。
 新橋で35年以上の歴史。その物語だけで分かる人気店だ。

 

■The voice|仲卸人からのひとこと
「年末は勝手に押しかけて大掃除の手伝いをさせてもらったり、家族ぐるみのつきあいをさせていただいてます。それも落ち着けます!」

 

北輝(ほっき)

住所:東京都港区新橋3-10-6
営業:18:00 ~ 22:30
定休:不定休
TEL:03-3433-2585
アクセス:JR、東京メトロ銀座線、都営地下鉄浅草線「新橋」駅下車徒歩5分/都営地下鉄三田線「内幸町」駅下車徒歩5分
予算:8,000 円~
座席:18 席

*掲載の情報は2015年9月時点のものです。発刊後の掲載内容(営業時間、定休日など)のデータにつきましては、お店の都合により変更になる場合があります。予めご了承ください。

 

⇒掲載本の紹介
仲卸人が教える魚がうまい店【気軽に一人で/少人数でしっぽり編】