Dec 07, 2017 interview

『DESTINY 鎌倉ものがたり』山崎貴監督が語る“初めて見るのにどこか懐かしい”異界の作り方

A A
SHARE

 

電子書籍ならではのメリットと怖さとは……?

 

──otoCotoではクリエイターのみなさんに愛読書や読書スタイルについてお訊きしています。山崎監督は電子書籍を愛用されているそうですね。

毎日のように大人買いしているので、大変なことになっています(笑)。ノートパッドの中に、すでに2500冊ほど本やコミックが入っています。

──読み切れないんじゃないですか?

いえ、全部読んでいます(笑)。買っただけの本は一冊もないですね。電子書籍だとコミックの第1巻を無料で試し読みできるじゃないですか。読み始めると、まずハマりますね。思う壺なんです(笑)。「これ、全部で何巻まであるんだろう」とドキドキしながら読んでいます。読むのは速いんですが、自宅にいただけなのに、外出して映画館で映画を観るよりよほどお金を使ってしまうので困っています(苦笑)。

 

 

──電子書籍ならではの良さがあるわけですよね。

それは「続きが読みたい」と思ったら、即読めるということでしょうね。40〜50巻ある長いシリーズものだと、気づいた瞬間に怖くなりますけど(笑)。これが書店まで買いに行ったり、Amazonで注文したりすると、ひとハードルあるので、そこで一度思い直すこともできるんですが、電子書籍だと最後までついつい読んでしまいますね。「ドラえもん」や「三丁目の夕日」「鎌倉ものがたり」などはすでに単行本で全巻持っていたんですが、さらに電子書籍でも買いそろえてしまいました。仕事相手と「この何巻にある、このシーンだけど」と原作を見せながら打ち合わせすることができるのも便利なんです。電子書籍だと旅行中に読めるのもいいですね。上橋菜穂子さんのファンタジー小説「鹿の王」はかなり厚い本なので、海外旅行に丁度いいなと思って上巻だけ持って旅行に出たところ、とても面白かったので行きの飛行機の中で上巻を読み終えてしまい悶え苦しみました。それで電子書店で探したら、電子書籍にも「鹿の王」があったので前半は紙の本で、後半は電子書籍で読破したんです。旅行中はそれでも読み足りなくて、上本さんの本は初期の小説は読んでいたのですが、最近のものを全部電子書籍で購入して、遡るようにして読みました。

──「鹿の王」以外にもおススメ本はまだまだありそうですね。

最近、ハマったのは塩田武士さんの小説「騙し絵の牙」。出版業界の裏側が描かれていて、すごく面白かった。もうひとつ、弘兼憲史さんの人気シリーズ「黄昏流星群」も夢中になって読んでしまいましたね。高齢者同士の恋愛模様が描かれているんですが、内容はいやらしくないんです。これからの高齢化社会にぴったりな題材だなと思います。でも、翌日朝から大事な仕事があるのに、面白い本に出会ってしまうと大変です。「最初の一章だけ読もう」と思って読み始めると、気が付いたら朝方になってしまって。今は書店にない本もネットですぐに配達してもらえるし、電子書籍で即読むこともできる。すごく便利な時代になったけど、あまりハマりすぎると危険だなと感じているところです(笑)。

 

取材・文 / 長野辰次
撮影 / 中村彰男

 

 

プロフィール

 

山崎貴(やまざき・たかし)

1964年長野県生まれ。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業後、株式会社白組に入社。伊丹十三監督の『大病人』(93年)の臨死体験シーンなどのデジタル合成で注目を集め、SFファンタジー映画『ジュブナイル』(00年)で監督デビューを果たす。『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年)、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07年)、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』(12年)三部作の大ヒットで人気監督に。その他、『永遠の0』(13年)、『STAND BY ME ドラえもん』(14年)など数多くの作品をヒットさせている。

 

作品情報

 

映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』

『永遠の0』(13年)、『海賊とよばれた男』(16年)と重厚な歴史ものが続いていた感のある山崎監督にとって、久々のコミック原作の軽妙なファンタジー作品。原作と同様に鎌倉が舞台だが、1931年から80年ごろまで運行していた江ノ電の旧車両、通称「タンコロ」を走らせるなど、ノスタルジームード溢れる世界となっている。魔物と人間とが一緒に一緒に買い物を楽しむ「鎌倉夜市」は、『千と千尋の神隠し』のトンネルの向こう側にある街と『スター・ウォーズ』の宇宙酒場を混ぜ合わせたような賑やかさ。VFXを得意とする山崎監督ならではの不思議世界に、山崎作品初出演となる堺雅人と高畑充希もうまく馴染んでいる。コメディタッチの前半から、後半は黄泉の世界をめぐるちょっとシリアスモードへと転調。「当たり前のように思っている日常の日々が、実はかけがえのない宝物」と語る山崎監督の温かい想いがじんわりと伝わってくる。

原作:西岸良平『鎌倉ものがたり』(双葉社「月刊まんがタウン」連載)
監督・脚本・VFX:山崎 貴 
出演:堺雅人 高畑充希 堤真一 安藤サクラ 田中泯 中村玉緒 市川実日子 ムロツヨシ 要潤 大倉孝二 神戸浩 國村 隼古田新太 鶴田真由 薬師丸ひろ子 吉行和子 橋爪 功 三浦友和
配給:東宝
©2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
2017年12月9日(土)より全国東宝系にて公開
公式サイト:http://kamakura-movie.jp/

 

Loading the player...

 

 

原作本紹介

 

「鎌倉ものがたり」西岸良平/双葉社「月刊まんがタウン」連載

1984年から連載が始まった西岸良平のロングセラーコミック。鎌倉で暮らす売れないミステリー作家・一色正和と12歳年下の若妻・亜紀子とのほのぼのホームコメディを軸に、鎌倉近辺で起きる不思議な事件の数々を一色夫妻が解き明かしていくミステリーエピソードが1話完結で描かれている。一色家の周辺には魔物や幽霊が頻繁に現われ、殺人事件も度々起きるが、『三丁目の夕日』で知られる西岸良平のほのぼのとした絵柄のため、怖さはまったくない。子どもの頃に夢中になっていた推理小説や怪談噺が日常生活とミックスされたファンタジックな世界となっており、初めて読む人にも奇妙な懐かしさを感じさせてくれるはずだ。

■電子書籍で購入する

Reader Storeはこちら
ブックパスはこちら

 

鎌倉ものがたり 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」原作エピソード集

Reader Storeはこちら
ブックパスはこちら

 

山崎監督のおススメ本

 

「鹿の王」上橋菜穂子/角川文庫

「精霊の守り人」などで知られるファンタジー作家・上橋菜穂子の2015年本屋大賞受賞作。祖国を守る戦士団の首領ながら奴隷に身を落としていたヴァンと天才的な医術師であるホッサルの2人を主人公に、国と国との長きにわたる戦争と動物によって感染が広まりつつある奇病をめぐる深遠かつ勇壮な物語が奏でられる。長編ファンタジー小説だが、中世の中央アジアを思わせる大自然と一体化した独特な文化&世界観に一度ハマると、山崎監督のように最後までいっき読みしたくなってしまう。

■電子書籍で購入する

Reader Storeはこちら
ブックパスはこちら

 

「黄昏流星群」弘兼憲史/ビッグコミックオリジナル

■電子書籍で購入する

Reader Storeはこちら
ブックパスはこちら

 

「騙し絵の牙」塩田武士 大泉洋(写真)/KADOKAWA・メディアファクトリー

■電子書籍で購入する

ブックパスはこちら