有村架純×南沙良インタビュー 不器用で愛おしい女性たちの人生を逆転させる選択 映画『マジカル・シークレット・ツアー』

逃げ道でなく選択 重くなく滑稽に

——本作は、金密輸事件をテーマにした作品です。出演が決まった際のご感想をお聞かせください。

有村 3人の女性の物語というところがすごく面白いなと思いました。実話に着想を得た作品ということで、世界にはそうした犯罪がはびこっているとは思いますが、自分の実生活には本当にない感覚です。それをフィクションとして作品で体現できる面白さや、女性たちが人生をやり直すために奮起していく物語が面白そうだなと思って参加しました。

 私は、有村さんと黒木さんと初めてお芝居させていただけることになったので、緊張しましたがすごく楽しみでした。これまで、家庭環境に問題を抱えた役や、似たような境遇のキャラクターを演じることが多くて。実はこの作品の前にも、大麻を育てる役を演じていまして、あと不法侵入もしましたし‥‥ここ1年くらいは役でずっと犯罪をしています。なので、また犯罪に関わる役が来たなと、ご縁を感じていました(笑)。

——誰にも聞いてもらえない気持ちを抱えている女性たちを演じたわけですが、おふたりは、この物語をどう捉えていますか。

 普段生活しているときでも、与えられた環境の不平等さや理不尽さを感じることはあります。正しいことと、懸命に生きることの間で揺れる彼女たちの姿には、私自身は共感しやすかったです。

有村 彼女たちにとって金の密輸は「逃げ道」でもない。そうせざるを得なかった「選択」だったんだと思います。ただ演じる上では重たくしすぎず、どこか滑稽に見えるような、笑えるような方向性を監督と目指しました。彼女たちが密輸を楽しそうにしている姿を映し出すことが、一番かなと。もちろん行為として肯定できるものじゃないですけれど、彼女たちにとっては、自分が自分らしくいられる時間だったんだと考えています。

——有村さんがおっしゃるように、本作にはクスッと笑えるような空気感があります。監督とはどのような話をされましたか。

有村 本読みをしたとき、監督から役の紹介が細かく書かれたお手紙をいただきました。そこで人物像をすり合わせて、さらに和歌子の夫役の塩野瑛久さんともリハーサルの時間を設けてもらい、台本にはない夫婦の積み重ねてきた時間を共有しました。クランクインまでの準備時間がしっかりあったことが助かりました。

 私も監督からお手紙をいただきました。それと家族との掛け合い部分のリハーサルもさせていただきました。麻由が外で見せている姿と、家の中で生活しているときの温度差、普段の生活での声のトーンなど、細かい部分を監督と相談させていただけたのは、役を演じる上でとても大きかったですね。

初挑戦の母役と妊婦役 そしてシンガポール

——有村さんは母親役、南さんは妊婦役ということで、おふたりとも今まで演じていない役柄だったと思います。

有村 出産した役の経験はありますが、子育てをしている主婦役は初めてでした。主婦とはどういうものなのか、金銭的な状況や環境をまず考えました。お金に余裕がない家庭だとしても、いろいろな工夫があるはずじゃないですか。そうした中で、和歌子という女性が家庭でどう存在しているのかを考えていました。

 私も妊婦役は初めてでした。やはり慣れないので、おなかの膨らみを作る器具を持ち帰って、家でもなるべくつけるようにして、妊婦さんの動き方の感覚をつかもうとしました。

——撮影中のエピソードを教えてください。

 私は叫ぶシーンが多かったんですが、普段あまり大きな声を出さないので、音量調節って難しいなって思いました。普通に人と話すときに、思っていたより大きな声が出てしまって、ちょっと困りました (笑)。

有村 シンガポールで走るシーンがあったんですが、結構派手に転んじゃって‥‥。「久しぶりに本気で走ると人間って転ぶんだなぁ」と (笑)。走ると危険です‥‥。

——シンガポールロケでの思い出はありますか?

有村 撮影時期は4月ごろでしたが、湿度が100%近くて、すごく暑かったです。そんな中で現地のスタッフさんも一生懸命協力してくださり、その献身的な姿勢に助けられました。

 食べ物がすごくおいしかったです。名物のチキンライスもそうですが、みんなで食べに行った屋台のラクサがすごくおいしかったです。

有村 あとは現地のバーにも行って、ピーナッツの皮を床に捨てるという慣習も体験したよね。

 シンガポールロケ最終日に行って、軽い打ち上げみたいで楽しかったですね。

有村 実際に金を売っているお店にも行ったんですが、スタッフさんたちが「アクセサリーを買おうかな」と言ってて和やかな雰囲気で楽しかったです。

——おふたりは、本作のポスターのように金を目の前にしたらかじりたくなりますか?

有村 劇中で使ったのは実際の重さに近づけた小道具でしたけど、本物のような重厚感がありました。かじりたくなりますよね。

 かじりたくなります! 台本にも書いてはありましたが、本物の金を目の前にしたら‥‥と考えるとやっぱり「試してみたい」という気持ちになります (笑)。

ミステリアスなふたりのシークレット

——今回、おふたりは初共演ということですが、お互いの印象を教えてください。

有村 メディアなどで拝見していると、沙良ちゃんは本をたくさん読んでいる方で、「自分の言葉をいっぱい秘めている」という印象が強かったです。実際にお会いしても、ご自身の持っている想像力が豊かで底知れないな、と。それでいて、ご自身を語るわけでもないし、もっと知りたいなと思わせてくれる。本当の沙良ちゃんが分からない、ミステリアスなところが魅力的で好きです。

 私も有村さんに対して、すごくミステリアスな印象を持っていました。穏やかで優しい雰囲気を持ってらっしゃるけれど、芯が強くて凛としている。しゃべればしゃべるほど、どういう方なんだろうと興味が湧きます。

有村 お互いミステリアスだと思ってたんだね (笑)。

——おふたりと一緒に金の密輸をする清恵役を演じた黒木華さんの印象はいかがでしたか?

有村 思っていた以上にさっぱりされている方で、スタッフさんを巻き込んでお話しされている笑顔が印象的でした。男前というか、かっこいい方でした。

 お話ししていてもお芝居していても、思わず肩に寄りかかりたくなるような、頼りがいのある方ですね。

——犯罪だと分かっていながら金の密輸をする役柄を演じました。おふたりは「分かってはいるけどモヤモヤする」というような経験はありますか。

 「否定はしないけれど」と前置きをしてからしっかり否定する方に出会うと「肯定しているようで否定されている」と感じるので正論なだけにモヤモヤします。「ずるいな」と思ってしまいますね‥‥。

有村 私、よくステッカーをもらうことがあるんですけど、貼り替えるときに、きれいに剥がれずシールの跡が残ってしまうんです。そのときかな (笑)。剥がすのにすごく時間がかかってモヤモヤします。

——映画タイトルにちなんで、おふたりの「シークレット」を教えてください。

 実は、携帯電話のカメラのレンズがボロボロに割れていて写真が撮れないんです。撮ると真っ白になってしまう (笑)。周りには内緒にしていて、家族や友人と集まったときは勝手に人の携帯で写真を撮って、それを自分に送るという盗人みたいなことをしています  (笑)。

有村 昨日の夜ごはんは、一昨日の晩ごはんの残りも食べました (笑)。余った副菜やお味噌汁、ごはんと納豆。おかずがなかったから作って食べていたんですが、どうしても冷麺が食べたくなって‥‥。深夜にデリバリーを頼んで、結構食べてしまいました (笑)。

——これから本作を観る方へメッセージをお願いします。

 登場人物それぞれが身を置いている環境は、明るいものではないかもしれませんが、物語自体に悲壮感はないですし、シュールで笑える部分も多いです。3人が人生を取り戻すために走る姿を、笑って観ていただけたらと思います。

有村 3人の女性たちによる人生の再起をかけた青春物語だと思っています。自分の中の「正しさ」は一旦置いて、誰もが経験しうる「こんなはずじゃなかった」という状況で、何を選択していくべきなのか。彼女たちの姿を見て、自問自答したり、笑ったりしてもらえたら嬉しいです。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理

映画『マジカル・シークレット・ツアー』

2017年に中部国際空港で主婦たちが【金の密輸】で逮捕されたという実際の事件に着想を得たオリジナル作品。夫の横領と借金を突然知った二児の母、借金を抱えた研究者、そして貯金ゼロの未婚の妊婦。犯罪とは無縁そうに見える3人が偶然出会い、【金の密輸】を通して仲間としての絆を深めていく。お金と自由を手にし、それぞれの人生をやり直すリベンジゲームが始まる! 周りに流されて生きてきた女性たちが、自分の手で人生を取り戻していく姿が眩しく描かれる。

監督:天野千尋

出演:有村架純、黒木華、南沙良、塩野瑛久、青木柚、斎藤工

配給:アスミック・エース

©2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会

2026年2026年6月19日(金) 全国公開

公式サイト magicalsecrettour