Dec 07, 2017

インタビュー

『DESTINY 鎌倉ものがたり』山崎貴監督が語る“初めて見るのにどこか懐かしい”異界の作り方

 

日本人の郷愁を誘う人気コミック「三丁目の夕日」で知られる西岸良平の世界。そんな西岸作品のもうひとつのロングセラー『鎌倉ものがたり』が『DESTINY 鎌倉ものがたり』として実写映画化された。メガホンを取ったのは、『ALWAYS 三丁目の夕日』三部作を大ヒットさせた山崎貴監督だ。堺雅人&高畑充希という人気&実力派キャストを迎え、日本の風土にぴったりフィットしたファンタジー大作に仕上げている。舞台となった古都・鎌倉の魅力、驚異的なVFXで描かれた“あの世”のビジュアルについて、山崎監督が大いに語ってくれた。

──『ALWAYS』三部作と同じく西岸良平コミックが原作ですが、ファンタジー度がぐんと高くなっています。VFXを得意とする山崎監督にとっては腕の振るいがいのある題材ですね。

そうですね。前半は鎌倉という現実にある街で起きる不思議な現象の数々を描いているんですが、後半は完全なる異世界の中へと入ってくことになります。ファンタジー映画は僕がずっとやりたかったことでもありますし、でも同時に大変な作業になるなと覚悟もしていました。実際にやってみたら、想像以上に大変でした(笑)。僕の見積もりがちょっと甘く、ややピンチを迎えましたが、スタッフは本当に頑張ってくれました。

 

 

──主人公であるミステリー作家の一色先生(堺雅人)と結婚したばかりの若妻・亜紀子(高畑充希)が暮らすのは、鎌倉という歴史ある街。東京から電車で約1時間と近いのに、独特な雰囲気のある街です。

箱庭感というか、ぎゅっと凝縮された不思議な味わいのある街ですよね。昼間はそれほどでもないんですが、日が沈んで夜になると、妖気がぐ〜んと上がる。夜の神社って、独特の空気感があるでしょ? 夜の鎌倉は街全体が神社みたいな独特の雰囲気になるんです。

──鈴木清順監督の代表作『ツィゴイネルワイゼン』(80年)も鎌倉が舞台でした。

そうでしたね。鎌倉って死者や魔物と隣り合わせになっても違和感のない街なんだと思います。異界との距離感が近い。日本が鎖国していた江戸時代、長崎に出島という小さな人工島があって、そこでは日本人と海外からの渡航者たちが交流していた。鎌倉もそんな感じがするんですよ。魔界の出島みたいな感じ(笑)。もちろん、実際の鎌倉は違いますけど、西岸先生が描く『鎌倉ものがたり』の世界では人間社会と魔界が入り交じっていて、普通に歩いていても、ふとしたことで魔界に迷い込んでしまう。そこが面白いし、鎌倉という雰囲気のある街だからこそ成立する物語。日本人がファンタジーものをやっても全然おかしくない世界なんです。アニメならファンタジーものはそれほど不自然に感じないんですが、実写であまりにも西洋的すぎるファンタジー世界だと違和感が生じますからね。でも、鎌倉が舞台なら大丈夫でした。

 

 

CGには頼らない山崎監督の演出

 

──主演の堺雅人、ヒロインの高畑充希は、山崎組初参加。少女のようなあどけなさと母親のような母性も感じさせる亜紀子(高畑)の目まぐるしく変わる表情を見ているだけでも楽しいドラマです。

高畑さんは魅力的な女優です。ただ美しいだけの女優なら大勢いますが、本当に魅力的な女優って、どれだけ豊かな表情を持っているかどうかだと思うんです。微妙な感じに見えるときと、かわいく見えるときの落差が大きければ大きいほど魅力的に映る。その点、高畑さんはかなりひどい顔もやってくれたし、こちらから無茶なことをお願いしてもきちんと受け止めてくれる。すごいなぁ、高畑さんにお願いして良かったなぁと思いましたね。例えば、一色宅に刑事が訪ねてくるシーンで、高畑さんには「くるくる回りながら、一色のいる書斎に向かってください」と頼むと、本当にくるくる回りながら書斎に進んでいくんです。そういうのってお願いしても、できないと思うんですよ。現場がおかしなことになって「すみません、僕の演出が間違っていました。普通にドキドキしながら書斎に向かってください」と言い直すはずなんです。でも、高畑さんはそういう無茶な演出でも、自然に受け止めて当たり前のように演じてみせる。また、それがすごく絵になるんです。「イナバウアーみたいに上半身を反らして振り返ってください」と頼むと、そういうポーズをわざとらしくならずに演じてみせる。しかも、いちいちかわいい。高畑さんはすごい技持ちです。

──クルクルと目が動く高畑さんの表情はCGなし?

いっさいCGは使っていません。100%ピュアな高畑さんの素顔です(笑)。

──ファンタジックな山崎作品の中で暮らす、生きたフィギュアのようにも感じられます。

この作品自体が半歩ほど地上から浮き上がっている物語なんです。映画全体も箱庭感がある世界として作っているので、そこに登場する人たちもほんのちょっと浮いてもらう必要がありました。リアルな人物というよりも、ややキャラクター化された存在になってもらう必要があったんですが、堺さんも高畑さんも、うまくハマってくれましたね。

 

 

──堺雅人演じる一色先生は、優しい夫であり、一家の主としての責任感も感じさせる存在。

そうですね。堺さんと高畑さんに撮影前に伝えたのは、見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに仲良くしてくださいと。そうすることで、物語後半の2人が引き裂かれる展開にお客さんの心も揺さぶられるわけです。堺さんも高畑さんも、これ以上仲良しすぎるとお客さんは引くなぁという、うまいさじ加減の幸せそうな夫婦を演じてくれたと思います。堺さんはさらにその中で、亡くなった両親(三浦友和、鶴田真由)は不仲だったという暗い想いをところどころで感じさせてくれましたね。

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