長編アニメーションで夢が叶う
池ノ辺 今回の『我々は宇宙人』は、監督が子どもの頃に経験したいろいろなことを思い出しながら企画し、脚本を書いたということですが、絵も監督が?
門脇 レイアウトを発注するところまでは自分がやりました。そのレイアウトから原画にしていくところはみんなで分業して描いていって、最後、撮影をして映像になっていく段階での加筆修正はもう一度自分でやっています。
池ノ辺 じゃあ、あのポスターの絵も監督が? 躍動感があってすごいと思っていたんですけど。
門脇 ありがとうございます。アニメーションは、動いている最中もあれば止まっている瞬間もありますよね。歩き終えたところとか、しゃべり終えたところとかは止まっている。そういう場面は長く観られることになるので、主に自分が描いています。逆に、歩いたり走ったりしている最中のような0コンマ何秒しか映らないフレームは、分業で描きました。止まっているフレームを自分が描くことで、みんなもどう描けばいいのか、ゴールが分かって描きやすくなったんじゃないかと思います。

池ノ辺 なるほど。監督はYOASOBIの「優しい彗星」などのMVでもすごく高い評価を得ていますけど、作画の雰囲気が違って見えました。あれも監督が描かれているんですね。
門脇 僕も描いています。
池ノ辺 それぞれの作品によって描き分けているってことですね。
門脇 確かに、表現したいテーマ、何をその作品で観る人たちに届けたいのかというところで、当然絵も変わってくるべきだと思って作っています。
池ノ辺 自分で全部できてしまうというのがすごいです。
門脇 小さい頃から描き始めたのは、風景画が多かったんです。富士山とかお花畑とか。小学校3年生のときに絵画教室に通い始めて、最初の課題は父親を描くことでした。その頃から人物も描くようになりました。その後、大学受験では裸体とか石膏像、静物などのデッサンを描かされるので、けっこうまんべんなく描いてきたんです。アニメーションでいえば、キャラクターも背景美術もやってきたということですね。ミュージックビデオの仕事をしている頃は、アシスタントもたくさんの方にお願いすることはできなかったので、自分が描くしかありませんでした。
池ノ辺 そうした経験が、今回の初めての長編作品につながっているということですが、この映画化についてはどういった経緯だったんですか。
門脇 5年前に友人の紹介でプロデューサーの林健太郎さんと出会って、そのときに長編アニメーションで作りたいものがあるんだという話をしていました。2度目に会ったときには別の企画書も用意していたんですけど、最初に話したあの長編も作りたいということを話して、ちょうど林さんも映画会社の立ち上げを考えていた時期だったので、じゃあそれをやろうという話になったんです。

池ノ辺 その映画会社が2022年に設立された“NOTHING NEW”ですね。運命的なタイミングですね。制作にはどれくらいかかったんですか。
門脇 原画を描き始めたのをスタートとするなら、3年半くらいです。
池ノ辺 それだけ時間をかけて、しかも東宝系の映画館で上映されるとなれば感無量ですね。
門脇 本当にありがたいです。ちょっと前を思い返すと、20代後半はミュージックビデオの仕事もやめていたので、ほとんど『我々は宇宙人』のことだけを考えて過ごして いたんです。でも考えてみたら、いつかこういう日が来たらいいなと思っていた日常だな、それを自分は今過ごしているんだなと、そんなことを思ったりしていました。
池ノ辺 夢が叶ったっていうことですね。





