「誰かのために」の思いでプロの映画監督の壁を越える
池ノ辺 最後の質問です。監督にとって映画って何ですか。
中野 作り手というところから言うと、映画を観た後に、良かったなと思ってもらえるような映画であってほしい。少しでも日常の生活が豊かになるような一つの種になってくれたらいいなと思っています。僕は、しばらく自主映画を作っていて、それはそれで評価されたけれどなかなかプロにはなれなかったんです。
池ノ辺 その時期が長かったんですね。
中野 そうなんです。それが、ある時、誰かのために作ろうと思ったら、そこから一気にプロの壁を越えられた。
池ノ辺 その前は自分のためというのが強かったということですか。
中野 もちろん、自分のために表現するというのは今もありますけど、以前は「自分の表現はこんなに面白いだろう」という気持ちが強かったのかもしれません。それが、「これは誰かにきちんと伝えなきゃいけない。観た人の生活の何かになったらいいな」と、そう思って作り出したらパッとプロになれたんです。ですからその感覚というのは今も大事にしていて、作り手としての映画というのはそういうものじゃないかと思っています。

池ノ辺 映画を観る側としてはどうですか。
中野 観る側としても同じかもしれないですね。日常とはちょっと違うものを観て、生活に潤いができたらいいなとか。今は作り手になっているので、なかなか難しいんですけど、そういうものも全部忘れて「ホントに面白い、最高!」という時を求めて映画を観に行っているのかもしれないです。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
原案・脚本・監督
2016年、『湯を沸かすほどの熱い愛』で商業長編映画デビュー。日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞・最優秀助演女優賞含む6部門を受賞。2020年、『浅田家!』は日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞含む8部門を受賞。2025年、『兄を持ち運べるサイズに』では、日仏共同製作を果たした。

西山夕平は天涯孤独の身。粛々と働き、自分の中で決められたルーティンで生活をし、たった一人のその環境を寂しいとも感じずに生きてきた。職場にやってきた新しいパート職員・紗月と出会うまでは。彼女と出会い、生きる喜びを得て夕平の毎日は輝いていった。そしてある日、紗月から自分の5歳の娘・朝子を紹介される。彼女は実はシングルマザーだった。紗月と朝子との生活が、これまで知らなかった“家族”という幸せの形を知り、夕平の心を開放していくが‥‥。
原案・脚本・監督:中野量太
主演:坂口健太郎、早瀬憩、堀田真由、倉田瑛茉、滝藤賢一、 原田美枝子
配給:クロックワークス
©IDKYPs./Pyramide Productions
2026年8月28日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
公式HP watashiramovie.com