川口春奈×松本穂香×中島瑠菜インタビュー 実在の愛と覚悟を胸に 3姉妹それぞれの寄り添い方とは 映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』

実在の人物を演じる覚悟

――この作品の出演が決まった際の率直なお気持ちを教えてください。

中島 私は今回オーディションで、この作品に出演することが決まりました。オーディションを通過したのは嬉しかったんですが、家族との向き合い方や、家族に対しての考え方を、もっとしっかり持たないとな、と感じました。「家族」というテーマをより大切にして撮影に臨もうと思っていました。

松本 まず、遠藤和さんが書かれた原作を読ませていただいて、悩みました。やっぱり生半可な気持ちでは、引き受けられないものだと思っていましたから。でも、遥さんの日記に書かれている気持ちを読ませていただいた上で、「私にできることがあるのなら」という気持ちで、演じさせていただきました。

川口 お話をいただいてすぐに「やりたい、やります」とは言えない、責任と覚悟が必要な作品でした。実際に、映画で描かれている人生を送ったご本人、ご夫婦がいて、原作もあり、ご本人やご家族の映像も残っています。私ももちろんご本人やご家族の存在を知っていたので、「これを映画にして、私が和さんを演じる」というのは、果たして自分に務まるのか?と、かなりプレッシャーを感じていました。

でも、実際のご本人の映像や日記を拝見していくうちに、悲観的なことばかりではないことに気づいたんです。和さんも、彼女を支えた家族も、みんなが様々な選択と決断をして、「覚悟」を持って生きていて、和さん自身の生き様を感じることができました。「映画化するなら1人でも多くの方に届けなきゃ」という使命感を感じるようになり、監督も同じ思いだったので、すごく共鳴しましたね。撮影が終わって公開前の今も、「これが果たして皆さんにちゃんと届くのか?」という不安はもちろんあります。だけど、和さんを演じさせていただいたのは、結果的に自分にとっても大きな出会いでしたし、感謝しています。

ご家族に観られることを想像して

――松本さんは次女の遥さん、中島さんは三女の結花さんを演じられました。それぞれが和さんに寄り添う姿が印象的でした。それぞれどのように役を理解し、演じられましたか?

松本 原作の巻末には、和さんに代わって遥さんの思いが書かれていたので、とても参考にさせていただきました。そこに書かれているのは、本当に起こったことなんですけど、経験していない私には、やはり想像もできないほどの大きな思いでした。だけど、遥さんの文章を読んでいると、彼女の葛藤や覚悟を感じられて、「遥さんやご家族の方が、この映画を観たときに、本当に後悔しないものにしたい」という一心で演じていました。

中島 実在する方を演じるのは、今回が初めてのことでした。私自身、「結花さんが、この映画を観たときに、少しでもよかったと思ってもらえるように」という気持ちで現場に臨んでいました。家族にとっては苦しく、不安な日々だったと思います。でも、そんな中でも日常を日常として過ごすことが、結花なりの思いやりだったんじゃないかと思いました。だから、「日常を大切に」ということを意識していました。

――映画では、交際からがん告知、結婚、出産と和さんのライフステージが凝縮されています。川口さんが、お芝居する上で大切にしたことは何でしょうか?

川口 精神的にも身体的にも変わっていく役柄なので、時系列どおり順撮りであったことが、とてもありがたかったです。何気ない日常生活が、尊くて幸せなものであるということ。そんな日常には限りがあり、お別れがだんだんと近づいてくるという流れを演じながらも、体感せざるを得ませんでした。

撮影をしながら、日常に対するありがたみ、それを普通に過ごせなくなる苦しさをひしひしと感じていました。和さんとしてワンシーン、ワンシーンを積み重ねていくうちに、家族と過ごす時間、子どもを思う時間が、よりリアルに身に染みていったように思います。1カ月半ほどの撮影期間でしたが、本当に1日1日後悔しないように、丁寧に、みんなで積み重ねていったような気がします。お芝居に集中させてもらえるような環境を作っていただけたことが、とてもありがたかったです。

団地住まいの3姉妹の空気感

――映画を拝見していると、団地で暮らしてきた仲の良い3姉妹という関係性を自然と感じられました。その空気を出すために、特別な工夫をされたことはありますか?

川口 撮影初日が団地のシーンでしたね。猛暑日で狭いお部屋の中での撮影で、外に出てポタポタ溶けたアイスを持ったりして、結構、動きもあって大変だったんですけど(笑)。

松本 そうでした。スーパーボールを持ってやりましたね。大変でしたね(笑)。

川口 団地の匂いとか、姉妹が奪い合うように並ぶ洗面所など、そこにある小道具1つにしても、用意してくださったロケーションや美術には、「どこにでもいるような仲の良い3姉妹」のイメージが表れていました。すごく没入できた感覚がありました。

――初日の撮影で、3姉妹のイメージが出来上がったということですか?

中島 そうですね。

川口 おかげさまで、緊張して馴染めないといったことは初日からありませんでした。それに、山戸監督は、お芝居を撮っているというよりもドキュメンタリーのように、私たちを切り取ってくださった感覚があるので、普通の姉妹、普通の家族像が、映像の中に残っているんじゃないかなと思っています。

――ドキュメンタリーのような撮影といえば、映画本編中、遥と結花はTVのインタビューに答える独白シーンがあります。クランクアップ前に撮影されたとお聞きしましたが、どんなお気持ちで撮影に臨まれたのですか?

松本 あのシーンは、遥さんが、お姉ちゃんの前では表に出せなかった感情を吐き出しているところもあったと思います。山戸監督が綴ってくれた言葉がとても丁寧で、「1つ1つこぼさないように伝えよう」「大切にしよう」という思いがありましたね。

中島 私は、カメラの向こうにお姉ちゃんがいるような気持ちで話していました。山戸監督から送られてきたセリフを読んだときに、きっと結花が心の中で思っていたことだけれど、「お姉ちゃんや、家族のみんなには、わざわざ伝えようとはしなかった言葉たち」が書かれているなと思いました。あの撮影当日、山戸監督からある言葉を耳打ちされて、それが私の心を動かすきっかけになりました。思い出しただけで涙が出そうなんですけど‥‥よりお姉ちゃんを身近に感じて、結花の気持ちを膨らませました。

3女優それぞれのイメージ

――役柄としてではなく、ご自分以外のお2人の印象を教えてください。まず中島さんの印象はいかがでしたか?

川口 中島さんは、3姉妹の末っ子にふさわしい存在だと感じました。チャーミングで初々しくて、とにかく眩しい(笑)。もう、「かわいい妹」って感じですね。

松本 中島さんの眩しさは本当にその通りで。物語の内容がどうしても重いシーンも多かったので、カメラが回っていないところで、パッと目が合うとつられて、こちらも笑顔になっちゃうようなピュアさに、とても助けられていました。

――では、松本さんの印象はいかがでしょうか?

中島 松本さんは、姉妹として会話するシーンが多かったので、役柄について監督と話されているところも近くで見させていただいていて。役柄への向き合い方をたくさん学ばせていただきました。

川口 一緒に過ごしていると、しっかりしていて、落ち着いてらっしゃるから、フラットで乱れない。大人っぽいな、という印象ですね。

――最後に、川口さんの印象はいかがでしょうか?

中島 川口さんは、真ん中に軸をずっと持ってらっしゃるのが印象的でした。それをずっと後ろから見させていただいていました。どっしりと構えてくださっていたので、安心して演じることができましたし、「本当にお姉さん」という気持ちでした。

松本 川口さんのことは、遥さんと同じ目線で見守ることしかできなかったので、なんとも言えないんですが、やはり川口さんは、1人で戦わなきゃいけない部分がたくさんあって‥‥。お芝居している姿を見ていたら、「それを支えられたらな」という思いに自然となりました。本当に強かったですよね。役に合わせて、どんどん体が細くなっていくのですが、心の強さはずっと失っていない感じがすごいと思いました。

――完成した映画をご覧になっての感想をお願いします。

松本 難しいですね‥‥。ご家族は、この映画を観たときどう思うのかなと思いながら試写を観ました。撮影しているときは「どんな仕上がりになるんだろう?」と思っていましたが、完成した本編を観ると、「こういうことだったんだ」と腑に落ちました。山戸監督だからこそ描けた世界観でした。スクリーンに映っているのは私たち演者ですが、その裏にはたくさんの人たちの思いがあって、この作品ができています。皆様にもそれを感じていただけたらなと思っています。

中島 映画を観ている間ずっと、「普通の日常」ってこんなにも幸せで、すごくキラキラしているんだなということを改めて感じさせてもらいました。映画を観ているというより、まるで人の心を見せてもらうような感覚でした。この映画が、たくさんの方に届いて、ご家族の方にも後悔のない作品になっているんじゃないかなと思っています。

川口 映画冒頭には、和さんの幸せな日常が描かれています。そこから、いろんな人生の選択や決断を迫られ、生々しく苦しいシーンが続きます。でも、夫になる将一さんとの出会いからデートして2人で時間を積み重ねていく描写はとても愛しい時間です。映像のトーンも非常に綺麗で、山戸監督は、「悩んでどうしていいかわからない」という感情すらも、カメラを回すことで引き出し、その瞬間を映像として切り取られている感覚でした。だからこそ、この映画には「苦しさ」と「尊さ」が詰まっているんじゃないかなと感じています。家族の愛情や夫婦の絆、和さん本人の意思と覚悟がぎゅっと詰まっている作品だと思います。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 立松尚積

映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』

青森で暮らす遠藤和と将一。時にぶつかり、時に笑い合う日常の中で、和の心には「一分一秒、一緒にいたい」「この人と生きていきたい」という愛おしい未来への願いがふくらんでいた。そんな矢先、和を襲ったステージⅣのがん。残された時間は限られていた。それでも将一は「一生大切にする」と彼女の手を強く握り続ける。愛する人と過ごす日々が増えるほど、二人で叶えたい未来があった。結婚したい。家族になりたい。そして、私たちの子どもに会いたい──。治療を止めるという命がけの選択の先に、出会えた新しい命。余命は数週間。それでも和は「今が一番、幸せ」だった。

監督:山戸結希

原作:遠藤和「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」(小学館刊)

出演:川口春奈、高杉真宙、松本穂香、中島瑠菜、清水くるみ、笠原秀幸、豊本明長、一ノ瀬颯、星野真里、森田望智、デビット伊東、小林聡美

配給:東映

©遠藤和/小学館 ©2026「ママがもうこの世界にいなくても」製作委員会

公開中

公式サイト mamaseka