Jun 18, 2026 interview

酒井善三 監督が語る 介護、家族愛、そして“解決できない恐怖”が生む新たなホラー『遺愛』

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仕事にするのが難しいからこその、純粋なモチベーション

池ノ辺 最後に、皆さんにお聞きしているのですが、監督にとって映画ってなんですか。

酒井 映画は、視覚と聴覚でもって、何か言葉にできないような感覚とか感情を呼び覚ますものかなというふうに思っています。そういうものにしたいなと。

池ノ辺 それを作る側でいたいと。

酒井 そうですね。作るのも結構おもしろい。こうやったらどんな感じがするだろうかといったことをスタッフと話し合ってやるのはとてもおもしろい作業なんです。そういう実験のようなところも楽しいと思っています。

池ノ辺 最初にもお聞きしましたが、小さい頃から映画監督になりたかったんですよね。

酒井 それは本当に小さい頃です。『ジュラシック・パーク』(1993) を観た頃から。

池ノ辺 それが今や、夢を叶えたわけですね。

酒井 まあそうかもしれないですが、映画監督というのはもはや仕事ではないのかも、と僕自身は思っているんです。

池ノ辺 それはまたどうしてですか。

酒井 それで食べていくというのは現実的には難しいというのがまずあります。それと、どんな仕事もそうだと思うんですが、我々は仕事となるとプライドもあるし、そこでお金をもらってプロとしてやっているということに寄りかかりがちになると思うんです。監督が映画一本で食べていくのが難しいということは、逆にいえばその寄りかかりを持たないということです。持たないからこそ、実験とか趣味とかそういうところをモチベーションにするしかない。

池ノ辺 純粋にそれがやりたい、それが楽しいという‥‥。

酒井 それは僕としては案外否定すべきことではないな、悲観的になることでもないなと思っています。





インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理

プロフィール
酒井 善三 (さかい ぜんぞう)

監督・脚本

1985年生まれ。映画美学校の修了作品として『おもちゃを解放する』(2011) を制作した後、篠崎誠監督の『あれから』(2012)、『SHARING』(2014) に共同脚本として参加。2021年の短編『カウンセラー』は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて短編映画初のSKIPシティアワードを受賞。黒沢清や清水崇からも絶賛された。大森時生がプロデュースを務めたテレビ東京製作の配信ドラマ『フィクショナル』は2024年に劇場公開もされた。その他の監督・脚本作に『RIP』(2018)、『コロナvs信心』(2022) などがある。2021年、本作のプロデューサーである百々保之、脚本・編集を担当した宮﨑佳祐と共に映像制作チームDrunkenBirdを設立。

作品情報
映画『遺愛』

父の死を機に実家へ戻り、母の介護を始めた佳奈。母との時間を取り戻すかのように献身的に介護をするが、次第に周囲で起こる異変に、違和感を覚えていく。佳奈と母は、呪われているのか? それともナニカを呪ってしまったのか? 慈愛に満ちた介護のはずが、徐々に不穏さと違和感が混在したような、ただならぬ恐怖に2人は飲み込まれていく。

監督:酒井善三

出演:山下リオ、小川あん、藤井京子、マキタスポーツ

配給:ライツキューブ

©︎2026「遺愛」製作委員会

2026年6月19日(金) 全国公開

公式サイト tx-iai-movie

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『哀れなるものたち』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ほか1100本以上。最新作は『レンタルファミリー』
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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