Jun 18, 2026 interview

酒井善三 監督が語る 介護、家族愛、そして“解決できない恐怖”が生む新たなホラー『遺愛』

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日本家族のドラマに強いという理由

池ノ辺 海外の評価も高いですね。映画祭はどこか行かれましたか?

酒井 オランダの、ロッテルダム国際映画祭に行かせていただきました。作品の評価は、個人個人の感想があるでしょうからちょっとわからないですが、面白いといってくださる方もいました。海外の記者の方たちから取材を受けるというのは、とても貴重な体験でしたね。映画祭も本当に世界各国から人が集まっている大きな映画祭だったんです。我々が日本にいるだけではわからない、到底「映画」という言葉だけで想像できるようなものではなくて、世界ではもっと大きな文化として、映画は人々に受け入れられているんだという感動もありました。

池ノ辺 観終わった人たちの感想などは何か聞かれましたか? 日本はああいう風に介護しているんだ、というようなことも言われたんじゃないですか。

酒井 確かにそうおっしゃってた記者の方もいました。ああいうことは日本では大きな問題なのかと。とはいっても、僕としては社会問題について言いたいわけではない。ただ面白い映画を撮ろうと、かつリアリズムを追求したら偶然こうなったんだと。もちろん底層にはそういう社会問題があるでしょうけど、それを訴えたかったわけではないということは伝えました。

池ノ辺 これは監督の意図するところではないのかもしれませんが、介護というものは、血がつながっているからとか親だからとか、そういう逃げ場のないところでどんどん追い詰められていくというのが切実に感じられたんです。でも先ほどの監督の話を伺って、確かにそこに逃げるという見方もあるのかもしれないと思いました。

酒井 海外の方は、日本のドラマといえば家族の話というイメージもあるんでしょうね。実際そうだと思うし、逆に言えば、それは家族と職場以外の人間関係が希薄だからだと思うんです。日本の社会で介護というものが家族の問題になってしまうというのもそこに要因があると思います。コミュニティが存在しないから必然的にそういう事態になってしまう。今の日本でリアリティを追求した結果、ああいった家族の話になったというところなんですけど、逆にいえば海外に対してはユニークなのかな。

池ノ辺 監督は、見えないからこそ怖いという話をされていましたが、見えないからこそ、その怖さの中に観る人それぞれのそれまでの人生、そこで見てきたこと、体験したことなどが反映されているのかもしれませんね。だからこそ、奥行きのある面白い映画だと思ったんです。

酒井 うれしいです。