Jun 18, 2026 interview

酒井善三 監督が語る 介護、家族愛、そして“解決できない恐怖”が生む新たなホラー『遺愛』

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役者のことは役者に任せる

池ノ辺 今回主人公を演じた山下リオさんはいかがでしたか。この役をどういう風にとらえていたんでしょうか。

酒井 どうでしょう。山下さんはすごく穏やかで、何かを表立っていろいろ言われる方ではないので、もしかしたら脚本で悩んでいたのかもしれません。でも、僕にはそういうところは一切見せていなかったので、ちょっとわかりませんね。僕としては最初からすごく順調に撮影できていたと思います。

池ノ辺 監督はどういった演出をされるんですか。

酒井 僕は、主には場所を見て、役者さんと「こんなふうに動きますかね」とか「こんなところに行ったりしますか」と話したり聞きながら、だいたいの動線を説明して、その通りに撮っていくという感じです。あまりこちらからこうしてくれ、ああしてくれとは言わないですね。

池ノ辺 じゃあ、役者さんに任せている部分が多いんですか。

酒井 そうですね。僕は演技のことはまったくわからないです。

池ノ辺 でも山下さんの演技はすごかったですよね。

酒井 そうなんです。だから役者さんってすごいんだと思います。本当に演技のプロフェッショナルだと思います。監督は演技のプロじゃないので、演技のことは役者さんがいちばんよく知っていると思います。だからこちらはなるべく邪魔しないように障害となるものがないようにして撮影しようと思っています。

池ノ辺 本作の主人公としてはピッタリな方でしたよね。あと、私はあのお母さん役の藤井京子さんがすごく気になったんですが。

酒井 とっても面白い方で、撮影中もずっと楽しそうにされていました。あの役は誰がやっても難しいと思うんですよ。つまり、どういう意図でこの表情や演技をするかという、その意図がそもそもないわけですから。藤井さんにはそこまでやらなくていいですよといっても、「はい」と言いながらやってくださるんです。なぜこうするのかと深く理由を考えていくと迷路に入ってしまうようなお芝居だと思うんですが、そういうところは突き放して、割り切ってやってくれました。うまくコミュニケーションが取れていたと思います。

池ノ辺 本当に怖かったです。お母さんが見ている先のものが気になって、私も思わず自分の後ろを振り返りそうになりました (笑)。

酒井 藤井さんは、今まで話題作で目立つような役柄には恵まれていなかったのかもしれません。これを機に藤井さんが、多くの方に発見されたらうれしいですね。ブレイクしてほしいです。それで僕にも仕事が回ってきたらうれしいです (笑)。

池ノ辺 この映画の続きはないんですか。

酒井 まあ、もっと物騒なことが起これば続くかもしれませんが、今のところはネタ切れです (笑)。