Jul 25, 2017 interview

第4回:予告を作ってて一番楽しかったのは、『アメリ』かな。

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小松

でも、ああいうミニシアター向けのアート映画が16億円ものの大ヒットになるというのは、そこまでいくと、予告編は関係ないと思ったりもする。

ヒットの秘訣はやっぱり、口コミだから。

最初のきっかけは予告であっても、そのあとに追随する人たちは、今みたいに、インターネットでいつでも予告編を見られる状況にないから、劇場で予告編を見て押しかけたというよりは、見た友達から評判を聞いたり、映画評を読んだりして言ったりするんだと思う。

池ノ辺

いやいや、やっぱり、予告編の力はあると思いましょうよ(笑)。

予告編を作りながらすっかり恋をしてしまいましたみたいな女優さんとかはいますか?

小松

それはないですね。

仕事する前は、この女優さん、いいなとかあったけど、予告編を作るようになったら、女優さんについては気に留めないようになった。

あと、自分の中ですごく印象に残っているのは、ぐっと最近の作品になりますが園子温監督の『冷たい熱帯魚』(2010)かな。

池ノ辺

あれは日活の映画ですけど、前評判が膨れ上がって興行でも成功して、さらにその年の映画賞をいろいろと席捲しましたね。

どういうところがよかったの?

小松

あの作品は、僕、見たときは、やっぱり何か嫌でね。気持ち悪いし、痛いし、こういう凄惨な作品をやらなきゃいけないのかって、ちょっとどうしようかなって思ったんです。

ホラー映画を散々手掛けておきながら言うのもなんですけど、僕、基本的にホラーって好きじゃないんですよ、怖いしね。

でも、しょうがなく作っているうちに、そういう嫌な気持ちを一回、全部、振り切っちゃうんですよね。

池ノ辺

なんとでもなれ、って思うのかな?

小松

そうそう。

逆に、この予告編に自分の持っているえげつなさとか全部つっこんじゃえ、みたいになる。

で、絵を描くときみたいに、被写体を冷静に見て、何を伝えたいのか冷静に考え、そして冷静に編集する。

池ノ辺

自分はこういう世界は共感できないけど、「だからこそ、こういう要素を入れてやるぞ!」となるのかな?

小松

そうね。

これは見ていて、嫌だろうなという映像やショットをあえて入れる。

もちろん入れ方のテクニックはあるんですけど。

池ノ辺

自分が嫌なものをあえていれると、それがインパクトの強い予告編になると?

小松

そうね、自分が見て気持ちいいものだったらダメだと思う。

ああいう見ている人の生理に訴えかけるようなものはね、もちろん作品によってですけど、そこにうまく、自分の培ってきた編集のテクニックを選んで、わざとこういう音の使い方をしているとか。

いろいろ、仕掛けをいれるんですよね。『冷たい熱帯魚』も、みなさん、あまり細かいところは言ってこなかったので、『アメリ』とはまた違った意味で、好きなようにできた。

池ノ辺

小松さん自身のそういう流れと、映画の興行も洋画より邦画の方が人が入る時代にどんどん移り変わっていったじゃないですか?

小松

そういう意味で、もう一つ、重要な作品が『おくりびと』(2008)ですね。

池ノ辺

そうそう。

あの作品も口コミでどんどん広がっていって、最後はアカデミー賞の外国語映画賞まで取っちゃった。