Apr 13, 2017 interview

生きている人間は多面体である。大友啓史監督×神木隆之介が『3月のライオン』で生み出した新しくリアルな2.5次元の世界

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神木隆之介を苦しめた両極の存在

 

──神木さんは劇中で、佐々木蔵之介、伊藤英明、加瀬亮、豊川悦司……とタイプの異なる実力派俳優たちと将棋盤を挟んで対戦したわけですが、いちばん印象に残っている対局は?

 

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神木 宗谷さん(加瀬亮)と後藤さん(伊藤英明)はどちらもまったく違う気迫でした。「A級棋士をなめんなよ」と後藤さんから言われたときは、本当に伊藤英明さんの前にいると熱いんです。絶対に何度か温度が上がっていたと思います(笑)。伊藤さんからすごい熱気を感じるので、その熱気にどう負けないかの勝負でした。役とはいえ、伊藤さんには負けたくないし、いちばん覚悟を持って当たっていかなければならない人でした。逆に宗谷さんは二海堂(染谷将太)から「吹っ飛ばされるぞ」と言われて気をつけてはいたのですが、宗谷さんを演じた加瀬さんの雰囲気が透明すぎて、圧力がどこに掛かっているかが分からないんです。圧力に負けないように必死に耐えていたのですが、たまにスカッと耐えられなくなることがあって、「ここか!?」とハッとさせられるのが加瀬さんでした。

大友 確かに、あの2人は役へののめり込み方はすごいものがあった。

神木 2人ともすごい圧力だったのですが、圧力の掛かり方がまるで違って、両極端でしたね。加瀬さんも、伊藤さんも、どちらもすごかったです。

──いろんなタイプの俳優たちと手合わせすることで、俳優・神木隆之介はますます成長を遂げていくわけですね。

神木 そうなれるよう頑張ります(笑)。

 

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──後編は映画独自のオリジナルシーンもかなりありますが、一番こだわったのはどこでしょうか?

大友 後編で重要だったのは、原作にはなかった葬儀シーンですね。勝負師たちが意識してか意識せずか、自分が犠牲にしてきたものと面と向き合うことになる。あのシーンには棋士たちが全員集まり、その中には零もいる。零は葬儀の後、自分を育ててくれた幸田家にふらっと戻る。すごく大事なシーンだったと思います。零の中でも感情が大きく変化し、周囲の人間に対する接し方が変わるきっかけになる。それは零にとっての成長に他ならないわけで、あのシーンは後編の大きな転換点になっていますね。

──神木さんは現在23歳。大友監督が23歳の頃って、どんな若者だったんですか?

大友 俺のことはいいよ。放っといてくれよ(笑)。

──『クリエイティブ喧嘩術』(NHK出版新書)を読ませていただきましたが、ちょうどNHKに入局した年齢ですよね?

大友 そうか、俺がNHKに入った年齢かぁ。秋田局に配属された初日に新人歓迎会で飲み過ぎて、酔いつぶれて先輩や同僚たちに大迷惑を掛けたんです。もらったばかりのNHKの社章もそのとき紛失してしまった。とんでもない新入社員でした(苦笑)。

神木 そんなことがあったんですね。

大友 俺の若い頃の話はもういいよ。俺たちにとって大切なのは、過去じゃなくて現在なんだからさ(笑)。

 

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