Apr 13, 2017 interview

生きている人間は多面体である。大友啓史監督×神木隆之介が『3月のライオン』で生み出した新しくリアルな2.5次元の世界

A A
SHARE
3lion-1-02

 

一見すると温厚そうだけど、実は心の中にはライオンを飼っている若者―。大河ドラマ『龍馬伝』や『るろうに剣心』シリーズで知られる大友啓史監督がそう評するのは、羽海野チカの人気コミック『3月のライオン』の主人公であるプロ棋士・桐山零のことだ。そして、実写版『3月のライオン』二部作の桐山零に大友監督が指名したのが、『桐島、部活やめるってよ』(12年)、『君の名は。』(16年)とヒット作に次々と出演している神木隆之介。2017年上半期きっての話題作『3月のライオン』の主役に起用されることになった経緯から、前編後編を通じて最も印象に残った対局相手、「otoCoto」恒例の愛読書紹介まで、大友監督と神木隆之介との聴きどころ満載の面白トークがスタート!

 

──大友監督はNHKを退局された2011年にフリーになっての第1作『るろうに剣心』を撮っていますが、『3月のライオン』はその頃読まれたそうですね。

大友 そうです。『るろうに剣心』の撮影準備に入る直前でしたね。アスミック・エース側から勧められて羽海野チカさんの原作コミックを読みました。その頃はまだ4巻までしか出てなかったんですが、その後、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14年)を完成させた頃には10巻くらいまで進んでおり、「じゃあ、(実写映画化)やりましょうか」と具体化していったんです。

神木 そうだったんですね。それは知りませんでした。

──実写版『3月のライオン』が完成した今では、桐山零は神木さん以外には考えられませんが、【桐山零=神木隆之介】はどのような経緯で決まったんでしょうか?

大友 2014年ごろから『3月のライオン』の制作が本格化していったんですが、「桐山役は誰に?」とキャスティングについての話をした際に、僕から「零は神木隆之介」と伝えました。『るろうに剣心−』を撮り終えた直後だったということもあり、「まだ神木隆之介を撮り切っていない」という気がしていたんです。もちろん、『3月のライオン』の零役は彼しかいないという気持ちがあってのことです。

 

3lion-2-2

 

──神木さんが『るろうに剣心−』で演じた瀬田宗次郎は、もっと彼の活躍を見たいと思わせる存在でした。

大友 そう! 宗次郎はアクションシーンが多くて、人間的なバックグランドについてはあまり触れることができなかったんです。

神木 確かに、そうでしたね。

大友 彼のことをもっと撮ってみたいなぁという気分のときに、『3月のライオン』の制作準備に入ったので、キャストを尋ねられたときに、すぐに「神木隆之介」と名前が出たんです。タイミングってありますよね。神木君は20歳を超えていて、一方零は17歳という設定だから、早く撮らなきゃ間に合わないって気持ちになっていましたね。

──「神木隆之介のドキュメンタリーとして撮る」という側面もあったと聞いています。

神木 はい、そのことはクランクインのときに「あくまでも神木隆之介の日常のつもりで撮るから」と監督から言われました。

大友 彼は子役からプロになった。零は中学生でプロ棋士になったわけで、なかなか普通の人間にはその心情は分からないですよ。その点、彼はそこを通過してきている人だから、「神木隆之介のドキュメンタリーのつもりで撮るよ」と同意を求めたんだよね。

 

3lion-2-3