Aug 14, 2026 column

祝福まであと7日。ふたりを待つのは永遠の愛か、最悪の修羅場か――映画『ドラマなふたり』

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結婚式まであと1週間。幸せの絶頂にいたチャーリーは、友人夫婦との食事会で婚約者エマの“最悪の秘密”を知り、愛と信頼を揺さぶられていく。ゼンデイヤとロバート・パティンソンが共演し、A24史上最速で世界興収1億ドルを突破した『ドラマなふたり』が、8月21日(金)より日本公開。甘いラブコメを一転、ブラックな修羅場へと変貌させる本作の設定、キャスト、そしてその衝撃性から、なぜ“時代に消費されないラブストーリー”と呼ぶべき作品なのかを読み解く。

物語が生まれた太古の昔から現在に至るまで、「悲劇」や「喜劇」はその姿かたちを変えながらも連綿と受け継がれてきた。そしてそのどちらにおいても、《結婚》は重要な要素であった。「オイディプス王」も「オデュッセイア」も「ハムレット」や「マクベス」「ロミオとジュリエット」も、「シンデレラ」や「白雪姫」も嫁ぐこと/迎え入れることが事件の引き金となる。『アナと雪の女王』(2013)はディズニープリンセスの形をとりながらも結婚=夢という定説を破壊してセルフラブの重要性を伝え、『ANORA/アノーラ』(2024)は結婚してライフステージを上げたいストリップダンサーを通して経済格差を訴えるなど、“いま”の空気を採り入れつつ、ある種の前時代に対するカウンターカルチャーとしての側面も持っている。直近の作品で言えば、『マテリアリスト 結婚の条件』(2025)は現代NYを舞台に婚活事情を描いており、『ハムネット』(2025)は結婚後に生じる夫婦間のズレを炙り出していた。人生の選択肢が増えたことでコスパが悪いものは忌避される「恋愛をしない時代」ともいわれるが、今も昔も結婚という題材が人気なのは間違いない。ただ同時に、ラブストーリーが売れない時代になっているのもまた然り。かつてはメグ・ライアンやジュリア・ロバーツ、サンドラ・ブロックほか「ラブコメ/ロマコメの女王」と呼ばれた女優たちがジャンルの一時代を築いたものだが、ここ数年だと同ジャンルのヒット作は『恋するプリテンダー』(2023)くらいしかパッと思い浮かばないのではないか。前述の『マテリアリスト』や『チャレンジャーズ』(2024)ももちろん人気作だが文脈はストレートとは少々異なり、やはり何か恋愛+αのひねりを加える必要があるだろう。

と、ここで「結婚」×「ラブコメ」を題材にとり、全世界興行収入1.3億ドル超の大ヒットを記録した映画が登場した。日本では8月21日に公開を控えるA24の『ドラマなふたり』だ。本国アメリカでは2026年4月に封切られ、2026年8月10日現在、年間北米興行収入ランキングで29位。ただ『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』『トイ・ストーリー5』『オデュッセイア』『Michael/マイケル』『プロジェクト・ヘイル・メアリー』といった大作や、『オブセッション/災愛』『バックルームズ』といった歴史的ヒット作がひしめいたなかでのこの順位は、十二分に“事件”といえる。いわゆる恋愛映画としても、20位の『嵐が丘』、28位の『Reminders of Him(原題)』が“原作モノ”なのに対して本作はオリジナルであり、“誰も知らない物語”でA24ラブストーリー史上No.1ヒットの記録を打ち立てた功績は、驚嘆に値する。