ストライキ終了を祝うインディ映画主演俳優たちの素顔
『サイドウェイ』最強コンビが送る心温まる映画『ザ・ホールドオーバーズ（原題 : The Holdovers）』
20年ぶりに最強コンビが帰ってきた。映画『サイドウェイ』アレクサンダー・ペイン監督と主演男優ポール・ジアマッティが贈る新作の舞台はマサチューセッツ州の雪積もる寄宿学校。歴史の教師ポールは、学長の頼みも聞き入れない頑固な中年男性。最高寄付金納付者だろうが、そのバカ息子には容赦なく最悪の点をつける。ある意味、昔ながらの芯の通った教師なのだが、その融通の効かない性格は生徒だけでなく、教師仲間にも嫌がられ、クリスマスに行き場のない生徒たちの面倒を見るはめになる。
『ザ・ホールドオーバーズ』の直訳は留任者で、時代や周囲から取り残された人のこと。変わり者の歴史教師は、自らが卒業した寄宿学校で教師となり、変化のない生活を繰り返している留任者。その教師と冬を越すことになるのが、息子をベトナム戦争で亡くした悲しみに伏せる寄宿舎の黒人料理長、メアリー。そして、成績は悪くないにもかかわらず、問題ばかりをおこして切羽詰まった高校生アンガス。年齢も人種も違う3人の人間が、クリスマスなのに待つ家族もなく、雪が積もる寒い校舎に取り残されるのである。
アレクサンダー・ペインの映画にハートがあるのは、描かれる人々の心の迷いが物語のあちこちで見え隠れし、他人と衝突しながら自分自身の葛藤を乗り越え、悲しみと笑いが心地よいリズムで描かれる点にある。クリスマスというある意味、切なくなるこの時期を舞台に、自らの心を奮い起こしてお互いを理解しようとする教師と生徒、そして、悲哀から新たな希望を見出す料理長の織りなすドラマは極上で、格別に味のある映画に仕上がっている。
16日にセンチュリー・シティでおこなわれたフォーカス・フィーチャーズの懇親会には、主要俳優3人、監督、編集マン他が集まり、批評家たちとお酒を飲みながら、映画談義に花が咲いていた。ポール・ジアマッティは映画『サイドウェイ』でワイン通という役柄だったが、ワインは嫌いだそうで、テキーラを片手に大勢のプレスの質問に真摯に答え、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のレオナルド・ディカプリオと主演男優を争うことになるのではという質問にも目力大きく、はにかんでいて好印象だった。寄宿学校の女性料理長を演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフは、エディ・マーフィーと共演した『ルディ・レイ・ムーア』でも評価が高く、ブロードウェイでトニー賞にノミネートされるほどの実力派の女優らしく、来年のアカデミー賞助演女優候補に期待がかかっている。
そして、今作が映画デビューとなる新人俳優ドミニク・セッサは、撮影されたマサチューセッツ州の公立高校フェアヘイブン・ハイスクールの生徒で、演劇部だったそう。オーディションでまさか、こんな大役を得るとはと終始、笑顔で大勢の記者たちの質問に答えていた。アレクサンダー・ペイン監督は、「僕はギリシャの移民の家族に生まれたから、ペインというラストネームに変更したんだよ」と、自身の生い立ちなども振り返りながら、ざっくばらんに映画以外の話でも盛り上がり、去年3月に撮影が終わって以来の主演俳優たちとの再会を機に記念写真。ハリウッド産業を半年以上も封鎖した２つの組合ストライキ終了は、監督、俳優、映画関係スタッフや記者陣も含めて、安堵の年越しとなりそうである。
文・写真 / 宮国訪香子
舞台はマサチューセッツ州の雪積もる寄宿学校。歴史の教師ポールは、学長の頼みも聞き入れない頑固な中年男性。最高寄付金納付者だろうが、そのバカ息子には容赦なく最悪の点をつける。ある意味、昔ながらの芯の通った教師なのだが、その融通の効かない性格は生徒だけでなく、教師仲間にも嫌がられ、クリスマスに行き場のない生徒たちの面倒を見るはめになる。
監督：アレクサンダー・ペイン
出演：ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ
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2023年10月27日より米国公開中
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