Sep 02, 2026 column

アメリカで社会現象を巻き起こした“出口のない悪夢”――映画『バックルームズ』

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前提を軽くさらったところで、ここからは長編映画『バックルームズ』について話を進めてゆこう。「謎の回廊に迷い込んでしまう」基本的なストーリーライン自体は短編と同じだが、迷い込む先の世界観は大幅に拡張され、さらに考察を呼ぶ設定や展開が足されており、メインとなる登場人物も2人になった本作。家具店の店主クラーク(キウェテル・イジョフォー)はある日、店内が壁を隔てて異様な空間に繋がっていることを発見。その空間は全面が黄色い壁紙で覆われ、どこまでも続く迷路のよう。かつ、奇妙な家具や道路標識が置かれており、クラークは探索を試みるうちに奥へ奥へと踏み込むようになる……。一方その頃、クラークと連絡が取れなくなり心配したセラピストのメアリー(レナーテ・レインスヴェ)は、彼の様子を見に行こうと家具店を訪れる。そして彼女もまた、謎の空間=バックルームズにとらわれてしまうのだった。

本作の魅力は大きく分けて「体感型」と「考察型」という現代のヒットホラーの必須条件を、時代の空気に沿った「静的」かつ「ダーク」な雰囲気で描いている部分といえるだろう。まず「体感型」に関してだが、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026) や『WEAPONS/ウェポンズ』(2025) のザック・クレッガー監督による新生『バイオハザード』(2026) 、或いは『8番出口』(2025) にも共通する“主観映像”の導入が秀逸だ。短編映画との目配せもあろうが、『バックルームズ』はまず調査員の主観映像から始まる。ファウンドフッテージ方式にすることで作品世界に一気に引きずり込み、この空間を調べる何らかの組織がいることなどの“ヒント”も提示して「考察型」の役割もカバー。これらを導入としてクラーク&メアリーの物語が始まっていくが、驚くべきは、主観映像から客観映像へとスライドした際に臨場感や熱量が落ちない点だ。メインとなる部分はダブル主人公のような形でクラーク→メアリーへと交代していく凝った構成が取られており、さらに両者を患者とセラピストという関係性にしたことで人物の背景や内面に対する言及をスムーズに済ませている。説明ゼリフやモノローグもほとんどなく、あくまで必要な会話として処理しているためトーンダウンすることなく、推進力を保ちながら2人がバックルームズに入っていく流れを構築しているのだ。