otocotoでは年末・年始に楽しんでもらいたい、動画配信サービスで観られる今年配信開始された配信オリジナル映画&ドラマのおすすめ作品をご紹介。
今回のテーマは「配信オリジナルの邦画作品」。「動画配信のサブスクサービスに入ったけれど、何を観ていいか分からない」「自分好み以外の面白い作品も知りたい」など、悩んでいる方はいませんか？ そんな貴方におすすめしたい、今年配信された配信オリジナルの映画＆ドラマ2作品をお届けします。
01. 映画ライターが選ぶ2022年おすすめ配信オリジナルドラマ
「拾われた男」(Disny+ )
豪華かつ雑多なキャストが贈る、ある俳優の実話をもとにした名作！
これは名作。ディズニープラスで2022年6月26日から全10話の配信が始まり、同時にNHK BSプレミアムでも放送。のちにNHK総合などでも放送された。原作は俳優・松尾諭の自伝風エッセイ(文春文庫刊)。本編には各回の冒頭に松尾本人が登場し、編集者マリ役の夏帆との掛け合いを開始。そしてマリ＝夏帆による「これは運と縁に導かれていく、ある俳優の人生の物語。すっごい実話を基にしたドラマですが、登場する人物名・団体名については、おおむね架空です」との前口上(ナレーション)で幕を開ける構成だ。
主人公の松尾ならぬ”松戸諭”を演じるのは仲野太賀。もう本当に最高。松尾の風貌に寄せるため、デ・ニーロ・アプローチ的に約10kg増量したとのことだが、決して”ものまね”系の演技ではなく、むしろ仲野独特の固有性が際立つチャーミングな主人公像が出来上がった。例えば『今日から俺は!!』で演じた今井勝俊役のようなコミカルさを基本軸としつつ、多面的な感情を豊かに湛え、笑いと涙、人間味のかたまりといった凄さを堪能できる。
物語はそんな主人公が兵庫県からノリ一発で上京し、まさしく”運と縁”の力で俳優としての道を歩んでいく姿が描かれる。時に少年時代の様子など、自制をシャッフルしながら展開する脚本は、2023年後期のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』を手掛ける足立紳。『百円の恋』や『アンダードッグ』などの脚本のほか、映画監督(『喜劇 愛妻物語』など)や小説家としても活躍する彼の鮮やかすぎる再構築がストーリーテリングの生命線だ。そしてNHKの名ディレクター、井上剛(『その街のこども』など)の丁寧な演出。もちろん他のスタッフワークも含め、すべてが素晴らしい。
全10話の内容をざっくり整理すると、前半は主人公の自己実現に向けた青春物語。伊藤沙莉扮する結との出会いをめぐる一連のエピソードが白眉となる。後半は家族の物語で、なんとメインの舞台はアメリカ！ 草彅剛が演じる主人公の兄・武志の知られざる15年間の生活が明かされる。舞台となるミシガン州南西部の田舎町カラマズーで実際にロケされ(ディズニープラスの資金力を感じる)、海外の地に流れる阪神タイガースの球団歌「六甲おろし」がまた泣ける！
そして何より特筆したいのは豪華かつ雑多なキャスト陣。まず”本人役”の面々が華々しい。ドラマに大きく絡んでハジけまくる井川遙や、生けるアイコンとして姿を見せる柄本明や塚本晋也。ちなみに『バッファロー’66』や『バレット・バレエ』のポスターなど、映画の小ネタや固有名詞系の文化記号をちりばめている作風は最近の坂元裕二作品っぽくもある(映画『花束みたいな恋をした』やドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」など)。アメリカのパートでも、タランティーノ風の日本映画オタク青年ウッディ(エヴィン・チャールズ・アンダーソン)など、愛おしい登場人物ばかり。
個人的には前半だと、渋谷TSUTAYAのバイトメンバーで荒井晴彦マニアの吉ミラ役を怪演する北香那。後半では主人公のオカン役の石野真子にハマった。もちろん芸能事務所の薬師丸ひろ子や鈴木杏など、劇中の”名演”を挙げていけばキリがない。そして本編を観た後には、太巻き寿司(物語のキーアイテム)を食べたくなること間違いなし！
文／森 直人
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監督：井上剛
原作：松尾諭著「拾われた男」(文藝春秋刊)
出演：仲野太賀、伊藤沙莉、草彅剛
制作・著作：ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社／株式会社NHKエンタープライズ
© 2022 Disney & NHK Enterprises, Inc.
公式サイト disneyplus.com/ja-jp
