Dec 28, 2022 column

日本が誇る注目の監督作品 配信中の2022年公開 話題の映画 [Part3]

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たくさんの映画作品が公開された2022年。作品が多くてすべて劇場で観られなかった方も少なくないと思います。otocotoでは、動画配信サービスで観られる今年のおすすめ作品を5回に分けてご紹介。

第3回は「邦画作品」。注目すべきは大きく話題となった海外作品、アニメ作品だけではありません。精力的に活動されてる日本人監督作品を観ていただきたい。そんな思いからコメディからラブストーリーまで取りそろえました。

01. 映画ライターが選ぶ2022年おすすめ映画 

『ちょっと思い出しただけ』:人生を変えるインスパイアが生んだ珠玉のラヴ・ストーリー

80年代にニューヨークのインディーズ映画シーンを牽引したのは、間違いなくジム・ジャームッシュだった。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』、『ダウン・バイ・ロー』、『ミステリー・トレイン』‥‥。彼が紡ぎ出す作品は、オフビートで、飄々としていて、どこか捉えどころがない。そのワン・アンド・オンリーな個性に、コアな映画ファンがシビれたのである。

日本を代表するロックバンド、クリープハイプのフロントマン尾崎世界観もその一人。彼はオールタイムベストに、1991年に公開された『ナイト・オン・ザ・プラネット』を挙げている。そのあまりの衝撃に「よし、バンドやろう!」と思い立ったくらいだから、人生を変えた一本といってもいいだろう(クリープハイプというバンド名は、『ナイト・オン・ザ・プラネット』に登場する“ハイプ”というセリフに由来している)。

お話は、タクシー運転手と乗客との悲喜こもごもをペーソスたっぷりに描いた、全5話から成るオムニバス映画。特に第一話のロサンゼルス編で若い女性タクシー運転手を演じるウィノナ・ライダーは、天下無双のキュートさである!と断言してしまおう。その『ナイト・オン・ザ・プラネット』にインスパイアを受けて、尾崎世界観が作った新曲が「ナイトオンザプラネット」。さらにその「ナイトオンザプラネット」にインスパイアを受けて、松居大悟監督が作った映画が、この『ちょっと思い出しただけ』なのである。

主人公は、元ダンサーで今は照明技師をしている照生(池松壮亮)と、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)。かつて恋人同士だった2人はすでに別れていて、別々の道を歩んでいる。その恋路はどのようなものだったのか? なぜ2人は別れる決断をしたのか? その過程が、照生の誕生日「7月26日」の1日だけを6年間に渡って描く、というユニークな構成で描かれる。

監督の松居大悟は、『私たちのハァハァ』や『アズミ・ハルコは行方不明』、『くれなずめ』など意欲的な映画作品を手がけつつ、舞台やドラマ、ミュージック・ビデオといった分野でも活躍。クリープハイプのMVも数多く製作している(「ナイトオンザプラネット」のMVも松居大悟が演出)。いつものように尾崎世界観からデモテープを受け取ると、「これはミュージックビデオではなく、長編映画にできるのではないか?」と直感が働き、異なる場所の同じ時間を描いた『ナイト・オン・ザ・プラネット』の設定を逆さまにして、同じ場所の異なる時間を描く設定でシナリオを執筆。日本映画に珠玉のラヴ・ストーリーが誕生した。 もしこの映画が気に入ったら、「ナイトオンザプラネット」のMVもチェックしてほしい。夜の艶かしさが最高です。

文/竹島ルイ

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映画『ちょっと思い出しただけ』

監督・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、尾崎世界観、國村隼、永瀬正敏
制作・配給:東京テアトル
©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会
公式サイト choiomo.com

配信サイト Amazon Prime VideoU-NEXT