Oct 08, 2026 interview

滝藤賢一インタビュー 三國連太郎の1枚の写真が導いた、家族のもとを去る父の役作り 映画『遥かな町へ』

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「孤独のグルメ」の漫画家・谷口ジローの名作を、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010)他で土地を生かした撮影スタイルを大事にする錦織良成監督が映画化した『遥かな町へ』。48歳の【中原博史】が故郷である鳥取の倉吉市を訪れ、突然、1963年へタイムスリップしてしまうというミステリアスなファンタジー映画です。

主人公の【中原博史】を演じるのは、韓国で俳優業をしてきた大谷亮平さんとオーディションで役を勝ち取った及川桃利さん。昭和的な懐かしい日本の町並みが残る鳥取の倉吉市でロケを敢行し、14歳の自分の身体に入ってしまった48歳の男が家族との再会で気づく大切な感情が丁寧に綴られていきます。今回はそんな本作で重要な役割を果たす博史の父【中原与志雄】を演じた滝藤賢一さんにインタビュー。難しい役を手に出来たある大物俳優の写真との出会いや恩師・仲代達矢さんの話など盛り沢山でお届けします。

――滝藤さんは様々な作品に出演されていますが、今回は1963年の日本を全編アナログで表現するという作品でした。参加していかがでしたか。

僕は絶対的に本物があった方が演技的にもいいんですよね。そういう中で芝居をした方が色々なものが信じられるんです。芝居というのは虚構の世界だと習いました。だからフィクションの世界の中で真実があるということは、とても心強いというか助けになります。自分がその世界の中で生きているということを信じさせてくれるので、絶対に必要です。ひとつでもあった方がいい、とにかくひとつでも多くあった方がいいです。

――滝藤さんは主人公博史の父親【中原与志雄】役だったので、息子役の及川桃利さんと共演シーンも多かったですよね。オーディションで選ばれた及川さんが心は48歳という難しい役に挑んでいましたが、間近で見ていていかがでしたか。

彼は気合入ってました。必死で錦織監督と戦ってたんじゃないかな。とても難しい役ですから。監督も根気強く演出されてましたね。何度も何度も段取りをしてましたよ。14歳なのに中身は48歳という設定ですから。どうやって演じたんだろう。演じた及川君、そう考えたら凄いですよね。

――当時の雰囲気が凄く出ていました。

及川君は昭和っぽい雰囲気も持っていていいですよね。それに美術さんが一生懸命に昭和の雰囲気を再現してくれました。改めて素晴らしい現場でした。

――鳥取県の倉吉市でのロケでしたが、特に印象に残っている撮影シーンを教えていただけますか。

SLはとても印象深いです。一発本番の長いシーンでもありました。あのような感じで芝居が出来ることってないし、僕のあそこのシーンは今現代の人が観て“どれだけの人が共感してくれるのだろう?”という思いもありました。しかもその後、戸田(菜穂)さん演じる【中原和江】があんなふうに「ほっとした。いつかこうなると思っていた。」みたいなこと言うじゃないですか、あの言葉に“どれだけの人が共感するんだろう?”とも。しかし、あのシーンの戸田さんは本当に素晴らしかったです!現場で見てましたが、目が釘付けになりました。

SLのシーンはとても難しいですが、余白はいっぱいあるから色々な考え方が出来ると思っています。あのシーンの僕は淡々と言葉を重ねていたように思います。観てくださる方に委ねたいです。無責任ですよね。でも凄く思い出のある、悩み苦しんだシーンだったと思います。

――滝藤さん演じるお父さん【与志雄】は、ミステリアスだけど優しいお父さんだと思いました。きっと戸田さん演じる奥さんが以前結婚していて、旦那さんが戦死しているというエピソードがあって、だから“寄り添う”という思いがあったのかなぁと私は解釈しています。

本当ですか。嬉しいです。とはいえ、僕自身は “何でだろう?何で出ていくんだ?”と何回読んでも理解出来なくて。だから錦織監督に何度も聞いたんですよ。撮影直前まで質問をずっとしていました。当時は戦争もあり失踪者が多かったみたいです。とはいえ、もう一押し欲しいですよね(笑)。そんな時現地の「ミタ写真館」に行ってショーウィンドーに飾られている三國連太郎さんの写真を見たんですよ。確か佐藤浩市さんの「ファミリーヒストリー」(NHK)だと思うんですけど、三國さんがまだ俳優になられる前に写真館のご主人が撮った写真で、その写真をそのご主人が映画会社に送ったことで、三國さんは俳優になられたという内容だったと思います。

【与志雄】ってまるで三國さんじゃないですか。ふらっと訪れそうだし、何を考えているか分からない雰囲気というか、ミステリアス。とてもご縁を感じたんです。“彼は三國さんだ”と思ったんです。俺の中にはあまりないけど、ここで1度もお会いしたことがない三國さんの写真とこういう出会い方をしたことに驚いて、三國さんパワーを貰って演じきれました。