Jul 02, 2026 interview

フリーヌル・パルマソン監督が語る 実子たちと愛犬と共に描き出す、ビターでスウィートな家族劇 映画『きれっぱしの愛』 

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北欧・アイスランドの田舎町。芸術家のアンナは、しっかり者の長女イダ、わんぱくでいたずら好きな双子グリムールとソルギス、そして愛犬パンダと暮らしながら、芸術家としての道を模索していた。若くして結婚したものの、今や <もう夫婦ではなくなった> はずの元夫マグヌスは、いまだに情を断ち切れず、何かと理由をつけては家を訪ね、食卓を囲み、ピクニックにまで付き合う始末。気がつけば、まるで <まだ家族> であるかのような日常を再び送るようになるが――。

アイスランドの気鋭監督フリーヌル・パルマソンが描くのは、片田舎に暮らす、ごく普通の家族のささやかな日常。大きな事件は起こらない。移りゆく四季とともに、ときにブラックに、シュールに、ユーモラスに紡がれる日常のスケッチが映し出すのは、変わりゆく夫婦、家族、そして失われてもなお残る愛の行方――。監督の3人の子どもたちと愛犬が家族役として出演し、私的でありながら、豊かな陰影に満ちたビターでスウィートな家族を描く。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が、映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!今回は『きれっぱしの愛』のフリーヌル・パルマソン監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

子どもたちとの映画撮影とすてきな「チーム」

池ノ辺 監督のいらっしゃるアイスランドは、今、どういう気候なんですか。

パルマソン ヨーロッパの中部はかなり暑いようですが、アイスランドはそれほど暑くない、穏やかな気候です。日本ほど暑くないですよ。

池ノ辺 そうなんですね。さて、『きれっぱしの愛』拝見しました。アイスランドの広大な自然も食事などの日常のことも、自分が体験しているような感じでした。

パルマソン そう言っていただけてとても嬉しいです。

池ノ辺 監督の3人のお子さんと愛犬が、この作品に出演されているんですよね。

パルマソン そうです。彼らはとても自然な演技ができていたと思います。というのも、これまで子どもたちは私のプロジェクトの写真や絵画、映像、短編映画、長編映画といったものに大なり小なり関わってきているんです。もちろん今回はその中でも最も大きな役割を果たしてくれました。彼らにとって目の前にカメラがあるというのはすごく自然なことで、もはや彼らの生活空間の一部となっていると思います。ですから私の方もすごくスムーズに楽しく撮影できたし、あの子たちも自然にいられたのではないでしょうか。

池ノ辺 撮影中、子どもたちが現場が楽しくなって脚本どおりにいかなくなる、なんていうことはなかったんですか。

パルマソン 実は、彼らは脚本どおりに進めるのはかなり得意なんですよ。

池ノ辺 撮影の際は、どういうふうに進めているんですか。

パルマソン まず、私が脚本を1、2ページ書くと、長女のイダに渡します。それを彼女が双子の男の子たち、グリムールとソルギスに読んで聞かせて、3人でセリフを読み合わせる。その後、私たちが夕飯の準備をしているときなどにそのシーンを演じてみせてくれるんです。それを見て私が何かコメントしたり変更したり、不自然だと思えば彼ら自身がセリフを変えることもあります。そしてその翌日に撮影するんです。

池ノ辺 なるほど。

パルマソン でも時には、どうセリフを読むかというような技術的なことではなくて、その瞬間のリアクションが大事という時もあります。そういう時には事前に何も言わないし脚本で書くこともなく、いきなりその瞬間の彼らの反応を撮ります。どのシーンを撮るかによってアプローチは変えています。

池ノ辺 そこでは子どもたちが、彼らなりに考えて反応したりしているわけですね。

パルマソン そうです。たとえば、ベリーのジャムを作るシーンがあるんですが、イダには、ベリーを入れたミキサーの蓋を閉める前にボタンを押してね、と伝えてありました。でも弟には何も伝えていない。ミキサーの中身が吹き出したときの彼の自然な反応が欲しかったんです。彼は見事にやってのけました (笑)。

池ノ辺 そのシーンは大笑いしました (笑)。じゃあ娘さんはお父さんのアシスタントも務めているわけですね。

パルマソン 私の場合、いつも同じ人たちと仕事をしています。妻も映画作りを手伝ってくれていますし、映画を作るときは、いつも友人や家族に囲まれている。子どもたちも、何年も同じ人たちと仕事をしてきているので、彼らのことをよく知っています。そうなると、1人が複数の役割をこなすようになるんです。たとえば、ある時は助監督が料理を作ったり、娘は、ある日は女優として演技をして、別の日には動物を動かして動物たちの演技をサポートをしたり。みんなが多くの役割を持ってカメラの前で必要なことをサポートしてくれているんです。同じ人たちと長く仕事をすればするほど、私たちは小さいながらも一つのチームとして自然に助け合うことができるようになるわけです。自分はそれがすごく気に入っていて、楽しいんです。

池ノ辺 素敵な環境ですね。

パルマソン 監督として最も大きな役割の一つは、クリエイティブで、かつ安心できる環境をつくることだと思うんです。そのチームのメンバーが、何かを試したり演技したりというときに、これはバカっぽいんじゃないかと思われることや失敗することを恐れて、躊躇したり萎縮したりすることのない、そういう空間をつくることです。そのために特に大切なのが、どういう人たちと一緒に組むかということ、つまり誰かに強制されたわけじゃなく、心からそこに居たい、一緒に映画を作りたい、時間を共有し、一緒にご飯を食べたい、そうお互いに思えるような人たちと組むこと、それは本当に重要なことだと思います。