「撮影前の10分」が生み出す奇跡
池ノ辺 20代から30代という長い期間を演じていましたが、大変だったんじゃないですか。
ク 実際、僕自身が経験してきた年代なので、大変だったということはありませんでしたね。見た目でいえば、衣装の方と相談して、20代にはカラフルなものや、重ね着のようなカジュアルなファッション、30代になるとシンプルなスタイルで落ち着きを表現する、そういった工夫をしています。それに、話すスピードやトーン、表情などでも歳月を重ねた姿を表現するようにしました。

池ノ辺 ク・ギョファンさんは、現場で生み出される「偶然の面白さ」を大切にしていると聞いたのですが、今回はどうでしたか?
ク 今回もありました。ただ、そういう面白さというのは、本番の演技中に生まれることは難しくて、その撮影に入る10分くらい前に監督や共演者と実際に動いてみて生まれる、ということが多いんです。
池ノ辺 それはどういうところから生まれるんでしょうか。
ク 撮影現場の小物やその日のロケーション、あるいは共演者の演技、そうした周りの環境すべてがアイデアのインスピレーションになっていると思います。ですから、台本はもちろん完璧に把握していますが、現場に行くときは意図的に半分だけ準備していくというのが僕のスタイルです。その偶然のアイデアが入る場所を空けておくんです、決して怠けているわけではありませんよ (笑)。
池ノ辺 なるほど (笑)。そこでアイデアが降りてくるということですね。
ク そうです。ですから僕はその10分前の時間はすごく集中しますし、とても大切にしています。


