池ノ辺 そういう話を持ちかけられて、久保さんはどう思って判断したんですか?
久保 母校なので、その恩返しというと大げさかもしれないですけど、私があのときNCWに通ってなかったら、今この仕事をやれていないし、人脈とかチャンスもなかったと本気で思っているので。武藤さんから、そういう相談をもらったということは、これはもう自分がやるべきだろうし、映画業界に対しても、やっぱり若い人材を輩出することって絶対やらなきゃいけないことだと思っていたので。だから、特に細かいことをうかがわずに決めました(笑)。
武藤 それで2016年から、フラッグが親会社、うちは子会社という形になって、久保さんがNCW代表、私は主宰という体制になりました。ああ、これで続けられると思って私としては非常に嬉しかった。そこから5年が経ちました。
池ノ辺 使命感でやると決めた久保さん、5年間やってきてどうですか?
久保 私が代表になってから、必ず受講生の方たちに伝えているのは、私はそもそも皆さんと同じ受講生だったんですと。その時は全然映画業界の知識もないし、繋がりもなかった。でもここを上手く利用して、活用することで映画の仕事がやれるようになりましたと。私にも出来たんだから、皆さんも活用しないともったいないですよ、みたいな話を必ずしています。実際ここから業界に入ってくる方が今もたくさん出ています。
池ノ辺 最近の若い人たちは、久保さんが受講生だった頃と比べてどうですか?
久保 NCWに配給さんや宣伝会社さんから正社員の募集とかアルバイト募集とか結構来るんですけど、私らの若い頃だったら、みんな飛びついて、とりあえず面接となるんですが、今はすごく慎重なんですよね。
池ノ辺 私のところにも、映画の予告編の仕事がしたいと言ってくる人がいるので、「じゃあ、履歴書送ってもらって、お話する?」って言ったら、そこからいなくなっちゃう子も多いんですよ。
久保 もったいないなと思いはしますけど、でも、これは世の中の流れ的にはカルチャーの変化を考えると、仕方ないのかなと思うんです。
池ノ辺 楽な仕事じゃないですからね。昔はこういう仕事をしていると荒っぽくて、私なんて「おまえ、何やってんだ!」「早く嫁に行っちまえ!」って何度言われたか。
武藤 昔はそれが当たり前みたいな風潮だったけど、そんなことを今も言ってたら、新しい人たちがついてこない。どんどん辞めちゃいますよ。だから、そういう風潮の名残もどんどん変えていかないとダメだとつくづく思うしね。私も、今は優しくなった。
久保 私らの頃なんかは武藤さん、かなり辛辣に厳しく言ってました(笑)。
武藤 それでむかついた人も相当いたと思う。
久保 今はね、ちょっときついこと言ってもすぐフォローするんですよね。
池ノ辺 コロナになってから、授業はオンラインで行うこともあったんですか?
久保 これまでは通学制でやっていたんですが、コロナが始まる1年前ぐらいから、通信講座というのを始めていたので、コロナ禍ではオンラインでやっていました。地方に住んでいる方の受講も増えましたね。
池ノ辺 東京まで通わなくても受講できますもんね。
久保 もちろん、東京に映画の仕事ってかなり集中をしているから、最終的に業界で働きたいとなれば上京しないといけないけれど、いきなりっていうのはなかなかハードルが高いので。今だとまずは通信講座で勉強して、自分の目指すべき道としてどうなのかというのを判断することが出来るという意味では、すごくいい形になっているかなと思いますね。