Mar 07, 2018 interview

アカデミー作品賞受賞!『シェイプ・オブ・ウォーター』宣伝責任者が語る舞台裏。

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池ノ辺

どうしたんですか?

平山

今回これだけの作品を自分たちで宣伝できるわけじゃないですか。

そうなると、これをどういう風に日本で出していくのかっていうことを突き詰めて考えたんです。

それでテーマを3つ設定したんです。

1つはクリエイティブにこだわる。

ビジュアルに関しては妥協しないで良い物にしたい。

2つ目は、最初に出すタイミングをベストにしたい。

池ノ辺

ベストのタイミングっていつ?

平山

アメリカ公開前に日本の映画ファンに見せたいと思ったんです。

アメリカの評判が聞こえてくる前に観られるって、すごい特典じゃないですか?

池ノ辺

それだけ作品に自信があるっていうことですよね?

平山

そうです。

自信があったから、アメリカ公開前に観られるっていう映画ファンにとってのドキドキ感をちゃんと演出したかったんですよ。

だから東京国際映画祭で2本とも出そうと。

その了承を早い段階で日本代表と本国に取ったんです。

それから、ただ早く上映するだけじゃなくて、解説して欲しい人をちゃんとブッキングしたかった。

『スリー・ビルボード』は町山智浩さんにお願いして、『シェイプ・オブ・ウォーター』はヴェネツィア国際映画祭で直接取材をした立田敦子さんにお願いするっていう組み方をしたわけですよ。

おかげさまで、東京国際映画祭ではものすごく評判になりました。

アメリカで公開されても、すごく評判が良いし、賞を狙えるっていう感じになっていきました。

池ノ辺

テーマの3つ目は何ですか?

平山

アカデミー賞の発表前に劇場にかけること。

池ノ辺

なるほど!

平山

映画館で映画を観た状態で、アカデミー賞の結果を楽しみに見るっていうのを、今回はちょっと演出したかったんです。

池ノ辺

新聞広告がそうでしたよね。

『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の両方を並べて、どちらがアカデミー賞を獲るのかって。

平山

やっぱり、1本の映画をどういう状況で見るかによって気持ちの高まり方って違うじゃないですか。

池ノ辺

平山さんは早くから情報を集めて、アカデミー賞を受賞する可能性も高い良い映画だから、そういうお膳立てをしてきたわけですね。

平山

それが出来ることが、サーチライトの作品を日本で配給することの一番大きいことなんじゃないかって思うんですよね。

もちろん、宣伝としての計算もありますけど、どちらかと言うと、楽しむお客さんの立場にとって、「どういうタイミングでこの映画が観られると、気持ちがすごく高まるのかな?」ということを考えていって、今回はいろんな方々の協力を得て、やりたいようにやらせていただけたという感じがしますね。

それから、初日は両方とも映画の日にしたんです。

池ノ辺

そうでしたね。

『スリー・ビルボード』は2月1日、『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日に公開されました。

平山

この2本は、映画ファンに捧げたかったんですよ。

池ノ辺

お〜!かっこいい!!

そんな流れがあったのですね、全然知らなかった。

この流れにご一緒させていただいて、ほんと、面白かったし幸せでした。

予告編もテレビスポットも久しぶりに、こだわって作らせてもらったし、何度映像を編集で見ても素敵な気分になる。

映像に関しては全般的に作らせていただいたので、試写のコメント録りに行って編集して、とても面白くて、結局 4Kのビデオカメラ買っちゃいましたもの、いつ出陣があってもいいように。

人にインタビューするのってすごく大好きなんです私(笑)。

監督の来日の時もオフィシャルムービーを撮らせていただいたので監督にも逢えたし、すごく勉強になった。

代理店やパブリシティーやデザイナーの方ともいつも一緒で、チーム力が半端じゃないから、みんな、無理なことも頑張ってやっちゃう(笑)

平山さん、とても素晴らしい映画に関われたことに感謝しつつ、これからも宜しくお願いします。

心から、アカデミー賞受賞おめでとうございます。

(文:モルモット吉田 / 写真:根田拓也)


© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

第90回アカデミー賞®最多13部門ノミネート。『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督が贈る切なくも愛おしい、誰も観たことのない究極のファンタジー・ロマンス。声を失くした孤独なイライザと、遠い海から連れて来られた“彼”。冷戦下のアメリカで、種族を超えた恋に落ちる二人だが、国家の行方を握る“彼”に危険が迫る─。

『パンズ・ラビリンス』の名匠ギレルモ・デル・トロ監督の比類なき世界観が、本年度ベネチア国際映画祭でも審査員のみならず観客も魅了。最高賞:金獅子賞に、満場一致で輝いた。

監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ ほか

配給:20世紀フォックス映画

大ヒット公開中

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/


PROFILE

■平山義成(ひらやま よしなり)

20世紀フォックス映画 営業本部/FOXサーチライト シニアマネージャー

1969年生まれ。1994年松竹株式会社に入社。映画興行部にて番組編成スタッフとして従事、以降ブエナビスタ・インターナショナル(ジャパン)を経て、1998年、20世紀フォックス(極東)映画会社に入社。主として配給営業を手がける。 2006年の「リトル・ミス・サンシャイン」をきっかけに、FOXサーチライト作品の配給業務全般に関わり始める。 2017年1月より正式に日本におけるFOXサーチライト作品の業務全体を統括し、以降、『ドリーム』(FOX2000作品)、『gifted/ギフテッド』、『スリー・ビルボード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』を送り出す。 待機作品は『犬ヶ島』(5月公開)、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題)』(7月公開)

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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