Mar 07, 2018 interview

アカデミー作品賞受賞!『シェイプ・オブ・ウォーター』宣伝責任者が語る舞台裏。

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『シェイプ・オブ・ウォーター』 ©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」

3月5日に発表されたアカデミー賞で、FOXサーチライト作品の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の最多4部門を受賞し、『スリー・ビルボード』は主演女優賞、助演男優賞と主要2部門を獲得。この2作品についてFOXサーチライト作品の業務全体を統括をされている、20世紀フォックス映画の平山義成さんに舞台裏のお話などをたっぷり伺いました。

→前回までのコラムはこちら

池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)

3月5日のアカデミー賞はFOXサーチライトの『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』が両方とも主要部門にノミネートされていて、どちらが獲ってもおかしくないって言われていたんですが、結果は『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の最多4部門を受賞しました! ネットでの中継を観ていて、や〜、ドキドキしました。

『スリー・ビルボード』は主演女優賞、助演男優賞と主要2部門を獲りましたね。

これは確実だな、でもドキドキ。

平山さんは、どっちが獲ると思ってました?

平山義成 (以下、平山)

どっちが獲るんだろうなあ、って思ってました。

でも、どっちが獲ってもいいように広告は作りましたよね。

池ノ辺

そうなんですよ。

アカデミー賞受賞パターンのTVスポットも全部根回しをやって納品しましたので。

発表当日の19:00〜には「本年度アカデミー賞受賞!!」のテレビスポットが流れました。

今年のサーチライトは、『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』が連続して公開されるすごい年になりましたね。

今年はスゴそうだってことは前から分かっていたんですか?

平山

2016年の11月に、各国のサーチライトの担当者がアメリカの本社に集まったんです。

その時に『スリー・ビルボード』の試写を観ているんです。

池ノ辺

その時にもう出来上がっていたんですか?

平山

ほぼ完成版が出来ていました。

その前に脚本も読んでいたんですが、正直なところ、脚本を読んだ時はピンと来なかったんですよ。

まあ、読んだだけだとピンと来ないですよね。

だけど、映画を観たら……。

池ノ辺

これはすごいぞ、ってなったんですね。

『スリー・ビルボード』 © 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

平山

アメリカのテスト試写は、都会とこの映画に出ている人たちのことを誰も知らないであろう田舎の両方でやったらしいんですけど、両方ともすごく受けたらしいんですよね。

池ノ辺

へえーっ!!

平山

それもあって、サーチライトの本社の人たちは、“狙うよ”ってことを言っていたので、これは来るなと思いました。

それで、僕がサーチライトの本社に行った前日は『シェイプ・オブ・ウォーター』の撮影が終わった日だったんです。

これも凄いものが出来るよっていう話が、その時にあって。

池ノ辺

『スリー・ビルボード』もすごくテスト試写の評判が良いし、撮り終わったばかりの『シェイプ・オブ・ウォーター』も凄いって話を、製作陣から直接聞けたわけですね。

平山

サーチライト担当者たちのことをサーチライターって言うんですけど、イギリスやフランス、ドイツのサーチライターと「どうするよ?」って話をしたのを覚えています。

「サーチライト担当者サーチライター」

池ノ辺

サーチライター!カッコイイ。

じゃあ、その各国のサーチライターが毎年集まって、撮り終わったばかりの新作を観るんですか?

平山

いや、毎年は集まらないんです。

なぜかっていうと、サーチライトって、そんなに大きい規模じゃないじゃないですか。

だから6年に1回ぐらいしか集まってないんです。

池ノ辺

それで平山さんたちサーチライターが、その時に、『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』が同時に来そうだって話をしたわけですね。

平山

これだけ並ぶと、「毎月新作が公開されることになるよ。どうする?」みたいな。

池ノ辺

アカデミー賞を狙える作品が続くわけですからね。

平山

そうです。そこから逆算していくと、アカデミー賞狙いのタイミングでアメリカの公開日が決まるわけですよ。『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』が続けて出てくるのを、どう捌くかを考えるところから始まりましたね。