Mar 18, 2022 interview

映画の美味しいところをミックスした『ガンパウダー・ミルクシェイク』 オタクを自負するナヴォット・パプシャド監督に聞く日本映画の影響

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映画の楽しさのうえにのったチェリー

―― 映画を撮るとき、印象的なシーンをつくるためにどういうことに気をつけていますか?

キャラクターとストーリーが何よりも重要です。これはアクションのシーンであっても、そうでなくても同様です。僕はアクションシーンをみるときに、「エモーショナルなところ、ストーリーを生む瞬間はどこ?」と常に探すようにしています。その瞬間が心理的なフックとなって、後半に起きることに繋がっていくわけです。

―― 本作でいうと、どのシーンにあたりますか?

例えば、本作品でいうとボウリング場のシーン。主人公サムが、”追手のギャング3人をボコボコにするんだろうな”、ということが観客は分かると思います。ここで、ただボコボコするだけでなく、辱めているからこそ、すごい怒って彼らは20分後に再びやってくるわけで。ストーリー的に繋がりがあるわけです。暴力的なシーン、アクションシーンでも、大切なのはバイオレンスにすることじゃないと思っています。

―― アクション=暴力描写ではないというのは、どういうことですか?

僕にとって、バスター・キートンとかジャッキー・チェンがアクションヒーローなんです。彼らの作品は暴力的な行為が行われていても、どこかでコメディーの要素がある。くわえてストーリーテリングがしっかりされていて、彼らが最悪な状況から抜け出せるように、観客が笑顔で応援できるようなつくりになっているんですよね。だから、キャラクターとストーリーが何より大事。技術的なことは後からついてくると思っています。

―― まずは、キャラクターとストーリーありき、ということですね。

技術的なことでいえば、照明だったり、画角であったり、先に言った黒澤、ヒッチコック、レオーネのインスピレーションが入ってきます。例えば、ワイドレンズで撮るとか、どう演出するか、などです。

―― ストーリーテリング、撮影方法以外でのこだわりについて教えてください。

僕のなかでは色彩もとても重要。さらに音楽も”映画作りの楽しさのうえに乗っかっているチェリーのようなもの”で、一発で観客の感情を揺り動すことができるから、それも素晴らしいおまけの要素だと思います。もう、こういった話は話し始めたら尽きないです(笑)。

―― ラストシーンに流れる『It’s All Over Now, Baby Blue』も最高でしたよ

気づいてくれて嬉しい。最後の最後まで権利がクリアになるか分からなかったから、使用できると分かったときは、心の底から嬉しかったです。

取材・文 / 小倉靖史

プロフィール
ナヴォット・パプシャド(Navot Papushado)

監督 / 脚本

1980年3月4日、イスラエル、ハイファ出身。アハロン・ケシャレスと共同脚本 / 監督したホラー、『ザ・マッドネス 狂乱の森』(10/未)でデビュー。同作は、ポルトガル・ファンタスポルト映画祭で批評家賞、韓国・富川ファンタスティック映画祭で特別賞を受賞した。再度ケシャレスと共同脚本 / 監督したクライム・サスペンス『オオカミは嘘をつく』(13)は、トライベッカ映画祭でプレミア上映された後、世界各国で上映。米サターン賞では国際映画賞、スペインのシッチェス‐カタロニア映画祭と前記ファンタスポルト映画祭では監督賞、カナダ、モントリオールのファンタジア映画祭で作品賞と脚本賞を受賞するなど、高く評価された。ホラー・オムニバス『ABC・オブ・デス 2』(14/未)に参加したのち手掛けた本作『ガンパウダー~』で、ケシャレスは製作総指揮にまわり、パプシャド初の単独監督作となった。次回作は、1946年の英国統治下のパレスチナを舞台に、マカロニ・ウエスタン、戦争映画、ラブコメ、無声映画などの要素を取り入れたサスペンス『Once upon a time in Palestine』を予定している。

作品情報
映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』

ネオンきらめくクライム・シティ。サムはこの街の暗殺組織に属する腕利きの殺し屋。だがある夜、ターゲットの娘エミリーを匿ったことで組織を追われ、命を狙われるハメに。殺到する刺客たちを蹴散らし、夜の街を駆け抜ける2人は、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込んだ。図書館秘蔵の銃火器の数々を手に、女たちの壮烈な反撃が今始まる。

監督・脚本:ナヴォット・パプシャド

出演:カレン・ギラン、レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ、クロエ・コールマン、アダム・ナガイティス、ミシェル・ヨー、アンジェラ・バセット、ポール・ジアマッティ

配給:キノフィルムズ

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2022年3月18日(金) 全国公開

公式サイト GPMS-movie.jp