――【真理】は実在された方がモデルになっています。その責任感もあったんですか。
多緒 最初はそこを追求していたんです。実際にモデルである宮野 (真生子) さんのご実家にも、濱口監督が一緒に連れて行ってくださって、宮野さんのお墓参りと、お母様にもご挨拶させてもらいました。やはりご本人を知っている方がいらっしゃるわけですし、ご家族や、共同の原作者である磯野 (真穂) さんから見たら、ソウルメイトである宮野さんのことを思い出すような仕上がりに出来たらいいなという思いが凄くありました。
でも途中からだんだんと濱口監督が書いたセリフにそれだけではないエッセンスも色々と散りばめられていると気づいて。監督にも「迷ったらとにかく原作を読み返して下さい」と言われていたので、それをしているうちに不安を感じずにいられるようになっていきました。試写で初めて映画を観た時、一緒にご覧になっていた磯野さんが「自分達を連想させるところがたくさんあった」と涙ながらに言って下さったので、その時に“凄く救われたな”と思いました。

――磯野真穂さんは、カンヌにも一緒にいらしてましたね。黒崎さんはどうでしたか。濱口監督は、黒崎さん出演の映画『さよなら ほやマン』(2023) を観られていたんですかね。
黒崎 そうなんです。たまたま色々な繋がりがあってオーディションに呼んで頂いたんですけど、濱口監督は『さよなら ほやマン』を観て声をかけてくださったみたいです。
――冒頭の【智樹】の登場シーンには一気に引き寄せられ、彼が演劇の中に入り込む展開も面白くて、どこからどこまでが演出なのか?凄く気になりました。あの動きは、すべて演出されていますね。
多緒 私の友達や周りを含め「ずっと泣きっぱなしだったよ」と皆が言っていて、特に【智樹】の登場からうるうるしてきたって。あのシーンからガラッと空気が変わりますよね。
黒崎 トラムと並走するシーンは、実は去年のカンヌ国際映画祭に参加した時に、パリに寄って濱口監督とリハーサルをしたんです。実は去年のカンヌ国際映画祭の時点で、今年のカンヌ国際映画祭の為の練習をしていました (笑)。

――なんと! 昨年のカンヌで『見はらし世代』が監督週間に選出されて登壇された後に、ということですよね?
黒崎 はい、あの後、濱口監督とパリで落ち合って、そこで練習をしました。もちろんマネージャーさんも居て。「絶対にこれは難しいシーンになるから」と。本当にリハーサルをしておいて良かったです。
――凄いですね。私は最初に『さよなら ほやマン』を観た時、『ギルバート・グレイプ』(1993) を思い出しました。
黒崎 ありがとうございます。もちろん、観ました。
――そこから更に自分なりのアプローチで役を作り上げていかれたんですか。
黒崎 そうですね。演じているのがレオナルド・ディカプリオさんという天才なんで、どうしようか迷いましたけど。『さよなら ほやマン』の時も脚本を読んだ段階から、“これは『ギルバート・グレイプ』だ”と思いました。本当にレオナルド・ディカプリオさんは凄いから、そこからはあまり観ないようにしていました。どうしても辿ってしまうから。
でも今回はレオナルド・ディカプリオさんを考える暇もないくらいに、何度も何度も濱口監督と【智樹】についてずっと話せたので良かったです。





