Oct 01, 2020 column

15:独立して改めて認識した業界内の仲間作りの大切さ

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業界のプロフェッショナルに、様々な視点でエンターテインメント分野の話を語っていただく本企画。日本のゲーム・エンターテインメント黎明期から活躍し現在も最前線で業務に携わる、エンタメ・ストラテジストの内海州史が、ゲーム業界を中心とする、デジタル・エンターテインメント業界の歴史や業界最新トレンドの話を語ります。

14  起業してゲーム会社を設立、大企業サラリーマンから経営者へ」はこちら

前回はセガを辞め、独立して会社を設立した話と資金繰りやキャッシュ・フローについての話を書きました。今回は資金をいかに調達するかということと、独立してから改めて仲間作りが大事だということをお伝えしていきたいと思います。

資本政策を通じた資金調達

上場を目指す起業を考えている人は、私のように資金繰りで銀行を走り回るような事態になるよりも、資本政策を当初よりきちんと考えた起業を行うべきです。最近はすでに上場を果たした成功者のエンジェル(個人投資家)も多く、資本の出し手も多いことから、うまく立ち回れば個人のリスクは以前より大幅に減らすことができる環境になっています。資本サイドの資金調達というのは起業独特のネットワークを利用した知識であり技術だといえます。

私は、銀行からのお金の借り入れを通じて、このままの会社のスタイルではとてもやっていけないと強く感じました。下請けの会社では大きく成長するのは難しいということと、いずれ資金繰りも厳しくなるだろうという強い危機意識を持ったのです。ちょうど2004年から2005年頃、日本でもベンチャーキャピタル(VC)が活発に資金を供給し始めていることを知ります。東証マザーズやナスダックジャパンといった証券市場が2000年に立ち上がり、ベンチャー企業の上場出口が増え、その市場をとらえた新生VCも活発化。インターネットやモバイルの登場もあり新しい事業の種も数多く登場していた時期に当たります。

そういったベンチャー企業を集めてイベントが行われているという噂を聞き、私も早速イベントへの参加申し込みを行いました。このイベントへの参加がその後の考え方やネットワークに影響を与えてくれました。

出会いの場所には積極的に参加するべき

老舗VCとして知られているグロービスが主催するニュー・インダストリー・リーダーズ・サミット(NILS)と呼ばれるベンチャー向けのイベントに参加しました(現在はインフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)と名前を変えて実施されています)。お金の出し手である企業やベンチャーキャピタルと資金調達を考えているベンチャー企業を招待し、ベンチャーを取り巻く様々な課題に対してセッションやレクチャーが行われ、同時にネットワーキングができる当時としては画期的なイベントでした。

私が最初に参加したのは宮崎のシーガイヤで行われるイベントでした。宮崎空港に降り立ち、開催時間までカフェで時間つぶしをしていると、明らかに宮崎では場違いな、ギークな様相を呈しながら都会的な雰囲気の若者2人がカフェでパソコンを触りながら話をしていました。

おそらく、NILSに出席するのだろうと思ったので声をかけてみたところ、1人は当時ウノウという会社を経営していた、現在メルカリ社長の山田進太郎さんとチームラボ社長の猪子寿之さんでした。ベンチャー時代の勃興の波を捉えていたこのイベントからは、すごい勢いで企業家のスター達が生まれていきます。アプリゲーム関連で上場したメンツはほとんどこういう会議で知り合いました。Klab社長の真田哲弥さん、ドリコム社長の内田裕紀さん、グリー社長の田中良和さん、DeNA社長の守安功さん、mixi(当時)社長の笠原健治さん達との会話は、ビデオゲームの文化やそれまで付き合ってきた人種とは全く違っていて、若くて知的で前向きでとても刺激的なものでした。