Aug 06, 2020 column

07:アイズナーの一言が最後の決め手『キングダム ハーツ』

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業界のプロフェッショナルに、様々な視点でエンターテインメント分野の話を語っていただく本企画。日本のゲーム・エンターテインメント黎明期から活躍し現在も最前線で業務に携わる、エンタメ・ストラテジストの内海州史が、ゲーム業界を中心とする、デジタル・エンターテインメント業界の歴史を語ります。

06 「プレイステーション米国ローンチ時の混乱と成功」はこちら

2020年はゲーム業界の大戦争の年というお話をしてきましたが、ウォルト・ディズニー・カンパニー(ディズニー社)にとっても大きな節目の年になりました。

2020年2月、15年もの長きにわたりCEOの座にいたロバート・A・アイガー(Robert A. Iger / 通称:ボブ・アイガー) がその座をおりたのです(2021年末までの期間限定でChairmanとして残るそうです)。彼の前のCEOはマイケル・D・アイズナー(Michael D. Eisner)。彼もまた20年にも及ぶ長期政権を維持しました。

この2人がディズニーを世界のエンターテインメント業界の頂点に導いたといっても過言ではありません。アイズナーがCEOに就任した1984年には、ディズニー社は瀕死の状態だったのです。すべての事業が大きく傾いていた為、他社から買収のターゲットになっていました。そこからアイズナーのビジネス的な剛腕で、ディズニー社は立て直されますが、1990年代の晩年からその勢いは徐々に衰えていき結果、再び買収のターゲットにもなりました。

2005年に、アイガーがそのあとを引き継いだ事で、ディズニー社は再び大きく勢いを回復。今では世界のエンターテインメント業界で圧倒的な立場を誇示しています。例えば昨年の2019年度の米国Box Office(映画の興行)収入のシェアは1社で40%越えと、今まででは考えられないレベルで他社を圧倒しています。

私は、米国でプレイステーション(PS)ビジネスの立ち上げを行った後、セガへと移り、2000年にディズニー社に入社しました。ディズニー・インタラクティブ社のアジア太平洋代表を務めたのですが、その時期に私はアイズナーとアイガーの2人に直接プレゼンテーションをする機会を得たのです。

PS2向けに発売された『キングダム ハーツ』というゲームを御存じでしょうか。ディズニー社とスクウェアが提携し、ディズニーキャラクターとファイナルファンタジーシリーズのキャラクターがディズニーの世界観で共演するゲームタイトルです。全世界で600万本以上を売り上げ、現在もPS4やXbox One向けに新作が作り続けられています。その最初のタイトルの正式承認が下りたプレゼンテーションは、この2人の前で行われたのです。

この『キングダム ハーツ』は、実験的なプロジェクトとして動いているけれど、ディズニー本社でオーソライズがされていない。しかし、スクウェア側では、そのような事を知る由もなく、精力的に開発が進められていたプロジェクトだという事を私が入社した直後に聞かされ、非常に驚きました。

全く新しい世界観を持ったディズニー作品のライセンスが日本で認められたことはこれまでなかったですし、ディズニーの複数タイトルをひとつの作品にいれるという行為自体もディズニー社では前例がありませんでした。そもそも、ミッキーマウスの3Dモデル化用スタイルガイドすら存在していなかった為、日本側ではこのプロジェクトを判断できる人が誰もいなかったのが、本社にオーソライズすら取れていなかった原因だったそうです。

2002年3月に発売されたプレーステーション2向けのゲーム『キングダム ハーツ』

日本のディズニーのベテランスタッフの中には、「こんなもの通るわけない」と早めにプロジェクトをやめる算段をつけるようにアドバイスをくれる人もいました。それを私がアイズナーにプレゼンし、製品化の承認をとることになるとはその時点では夢にも思っていませんでした。

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