Jun 30, 2026 column

Netflixシリーズ「ガス人間」 小栗旬×蒼井優が挑む、東宝特撮リブートで蘇る“変身人間シリーズ”の現在地

A A
SHARE

本作は脚本制作に足かけ4年、撮影期間はのべ8カ月、クランクインの約1年半前からVFXチームが動き出し、ガスの表現を開発するなど、異例尽くし。通常、これほどの時間や労力、資金を費やしたら手堅く見せる思考――よく言えば王道、悪く言えば“安パイ”なアプローチになってしまいそうなものだが、いわゆる「置きに行く」意識は一切感じられない。現場で思いついたアイデアをどんどん投入するという片山監督のスタイルも寄与しているだろうが、キャスト陣の芝居も、そしてキャラクターたちも新しさと躍動感に満ちており、出番の大小に関わらず各人がなんとも生き生きとしているのだ。物語だけでなく、映像やキャラに対しても「飽きさせない、最後まで観たくなる」魅力が行き届いている。

個人的にではあるが――こうした大胆さ、「大舞台で遊ぶ」チャレンジ精神は、漫画やアニメーションに通じるようにも感じられる。思えばヨン監督はアニメ畑出身のクリエイターであり、第4話では「いきなり新キャラがメインに躍り出る」漫画的な手法を発案した (これからご覧になる皆様においては、ぜひ楽しみにしていただきたい) が、「ガス人間」を観ているときの「こう来たか!」というワクワク感は自分の中で漫画やアニメの観賞体験に連なるものであった。例えば『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』は、静と動のコントラストが原作から大幅に強調され、アクションシーンは目で追えないほどアニメーターや演出家たちの個性がスパークしていた。直近の作品でいえばTVアニメ「日本三國」も然り。ビギナーが敬遠しそうな歴史もののハードルを、キレッキレの演出でカバーしていた。こうした作品群の画面越しに伝わってくるのは、奇をてらってやろうとか、攻めてやろうという打算的なものというよりも、作り手たちの「楽しむ姿勢」であった。

確固たる強度を構築したうえで、全編にわたってとにかく遊び倒す気概――怖さの中に洗練された「笑い」をフュージョンさせる方法論は、『WEAPONS/ウェポンズ』や『オブセッション 災愛』、或いは『バックルームズ』といった直近の人気ホラーとも通じており、「ガス人間」には、新時代のエンタメにおけるヒットの条件とニーズが詰まっている。配信前とのことでネタバレを避けるため具体的な言及は極力行わなかったが、7月2日の配信日以降は、ぜひ細かい部分まで堪能いただき、個々人がグッとくる《面白ポイント》を探求いただきたい。

文 / SYO

作品情報
Netflixシリーズ「ガス人間」

1960年に公開された東宝の伝説的特撮映画『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎、脚本:木村武)を原作としながら、日韓トップクリエイターの手によって現代の視点で再構築された「完全オリジナルストーリー」のリブート作品。

監督:片山慎三

脚本:ヨン・サンホ

原作:『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎/脚本:木村武)

出演:小栗旬、蒼井優、広瀬すず、林遣都、UTA、竹野内豊

2026年7月2日(木) Netflixにて世界独占配信

作品ページ ガス人間