Mar 13, 2018

コラム

コンテストの優秀賞に藤井青銅の作品が?!

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『チャレンジ名作ライブラリー』は、当時大人気の文化放送・吉田照美さんのワイド番組の中にあった10分コーナー。一週間で一冊の本を読むという、ややお勉強チックな番組だ。スポンサーが「進研ゼミ」の福武書店(当時。現在はベネッセ)だから。
 パーソナリティーが松本伊代さんの時だったか、冨田靖子さんの時だったか、憶えていない。というのは、これはパーソナリティーには関係ない話だからだ。

 この番組は、収録時にいつも広告代理店のスポンサー担当者が来ていた。その人は、ぼくが「星新一ショートショートコンテスト」出身だということを知り、
「そういえばウチも先日、会報でショートショートの募集をしたんです」
 と言った。
 進研ゼミの会員に配る会報のようなもので、会員に対しコンテストを行ったという。ショートショートは枚数も短いし、当時の中高生には人気だったので、いい企画だ。優秀な作品には記念品だか賞金だかを贈り、会報に掲載してあげる。
「これが、それなんですけどね」
 と会報を見せてくれた。
「どれどれ…」
 応募作の中から選ばれた佳作数編と、優秀作(だったか、賞の名前は憶えていない)をパラパラとめくって読んだぼくは、
「え!?」
 と手を止めた。

「これ、ぼくが書いた話ですよ!」
 なんと、そこに掲載された作品は、ぼくが『松田聖子・夢で逢えたら』で書いたショートショート、そのままだったのだ。
 広告代理店マンは慌てた。
「ええっ! 本当ですか?」
「嘘ついたってしょうがないじゃないですか」
『夢で逢えたら』は人気番組だったので、番組本も出ていた。聖子さんの語り下ろしエッセイや、写真が入り、さらに、ぼくが書いたショートショートも十数本掲載されている。その中の一本だった。
 おそらく投稿者は、その作品を「面白い!」と思った。そこへちょうど、会報でショートショート募集のお知らせだ。賞品も欲しい。で、つい魔が差して、軽い気持ちで盗作を……ということだろう。

 一般の方が読む文芸誌で大々的に行ったコンテストではない。あくまで内部の会報での企画だから、チェックが甘いのはしかたがない。会報の編集者は応募作を読んで「面白い」と思ったから、単純にそれを選んでしまった。
 放送局もパーソナリティーも違う、まったく別の二つの番組に、たまたま同じ作家がかかわっていたから、バレてしまったわけだ。
 後日、代理店マンに番組本のコピーを見せた。一字一句違っていなかった。バレないように盗作するためには少しは表現を変えるだろうが、その形跡はない。本当に軽い気持ちでそのまま書き移して、応募。選ばれてそれが会報に掲載されてしまったので、実は本人も内心(いつバレるか?)とヒヤヒヤしていたのかもしれない。
 この件がその後どう処理されたかは、知らない。

 しかし正直に言えば、ぼくの気持ちは少し嬉しかった。
 というのは、投稿者が盗作の誘惑に負けてしまうほど「面白い!」と思ったから書き写したわけで、それは作者にとって勲章でもあるからだ。あと、その作品が「優秀賞に選ばれててよかった!」とも思った。佳作の三番目くらいだったら、ちょっと哀しいもの…。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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