Feb 14, 2017

コラム

人気コミックのアニメーション化に欠かせない響き! 香しきメロディーが彩った棋士の青春【後編】

人気コミックのアニメーション化に欠かせない響き!
香しきメロディーが彩った棋士の青春【後編】

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アニメーション『3月のライオン』音楽担当:橋本由香利インタビュー(前編はこちら)

 

音楽の存在が最重視された作品

 

 新房監督は「モノローグのないシーンは音楽で語ってほしい」と話していたほど、音楽に映像の一部になることを望み、果たそうとしていたという。具体的には、映像制作前の録音素材だけでなく、完成した映像に合わせての作曲・録音を橋本に依頼したシーンもあり、音楽の存在が重要視された作品となった。

 

──今回、映像の尺に合わせた作曲は結構あったのですか。

そうですね、いくつかの重要なシーンでは合わせて書いてくださいとの依頼がありましたので。そういうことは(テレビ・シリーズのアニメーションでは)意外とあります。たとえば、最終話かその前あたりのこのシーンはこうしたい、とか。今回の『3月のライオン』は第1話の冒頭で流れた曲がそうですね。あの曲はもともと普通の2コーラスの歌もののサイズだったんです。それを新房監督がシーンにサイズが合うように作ってほしいとのことで、修正して、フランス語の歌詞を乗せたんです。その後の電車のシーンに切り替わるときにリズムがインするようにもしています。毎週、それをやっているということではないですけど、何曲かはそうしています。

──そういう依頼があるのは作曲家としては嬉しいものなのではないですか。

スケジュール的には微妙なときがありますけどね(笑)。最終話あたりになると、「間に合うのかな」っていうほど時間的に押してきますので、そういう不安はあります。ただ、今回の第1話に関しては最初からテーマ曲を入れるという話になっていて、サイズだけがなかなか定まらなかったので、あらかじめ曲を長めに作っておくことで備えていました。

──でも、音楽への信頼がなければできないことです。

毎週、完成したアニメーションを拝見していても、新房監督が音楽を大切にされていることはわかります。コミカルなシーンと静かなモノローグ、その差が大きい作品なんですけど、そういうメリハリを音楽でも出してくださっている感じもしますね。コミカルなシーンにつける曲はより面白くなるように作ったので、ひなちゃんの料理のシーンとか、モモちゃんが出てくるところとか、あとニャーたちのところとか、すごく音楽をうまく使っていただいたなと思いました。お話がダークな方向に行くところもあるので、そういう部分とは対になる部分をちゃんと音楽で出したいなと思っていたので、とても嬉しいですね。

 

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──確かに、ニャー将棋音頭のくだりはこのドラマを明るく救っているところがありますよね。

(満面の笑顔で、しみじみと)ホント、そうですよねえ。これからのことを思うと、ホントに救われます。

──その笑顔でいかに橋本さんがこの作品を愛していらっしゃるかが伝わります。

すみません、本当に好きな作品なんです(笑)。

賀来タクト

賀来タクト(かく・たくと) 映画&音楽関連文筆家。1966年生まれ。愛知県出身。雑誌記者・編集を経て現職。編集担当書籍に『映画道楽』(ぴあ刊)、『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)など。企画協力・監修ムックに『オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇』(キネマ旬報社刊)。執筆参加書籍に『映画音楽 200CD スコア・サントラを聴く』(立風書房刊)、『映画×音楽 セッション・レポート103』(音楽之友社刊)など。第66回(2011年度)より、毎日映画コンクール《スタッフ部門》の2次選考委員を担当。2015年9月27日開催の岡山シンフォニーホール主催・岡山フィルハーモニック管弦楽団演奏による映画音楽公演『We Love 映画音楽』では、企画・演目構成・ナビゲーターを担当。1998、2000年にはハリウッド映画音楽の巨人ジェリー・ゴールドスミスの来日コンサート(神奈川フィルハーモニー管弦楽団主催)に企画協力。現在、『キネマ旬報』誌にてコラム「映画音楽を聴かない日なんてない」を連載中。

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