Oct 02, 2017

コラム

『ひよっこ』ロスなあなたに。脚本家・岡田惠和氏に、あの疑問、この疑問を聞いちゃいました!その3

──テレビドラマを見られることは幸せですね。岡田さんは、まだまだ朝ドラを書きたいそうですが。

脱稿して喉元過ぎているので、書きたいですね(笑)。朝ドラが書きたいっていうか、いま、朝ドラしかないからそう思うんですけど、たぶん、終わらない話が書きたいんですよ。

──サザエさん的な?

『渡る世間は鬼ばかり』的というほうが近いですね。作家が書けるうちは書けるっていうものが本当に羨ましい。自分が作りだした人物がずっと生きていられることは羨ましいです。『渡る世間』も、ある種、日常系のドラマじゃないですか。起こっている騒動は大きいけれど、ほぼスタジオ撮影で、店と家という限られた場所のみで話が展開していて。何年か前に、ロケに行くことになって、みんなの緊張感と遠足気分が相当だったらしいですよ(笑)。家族があって、子どもたちが成長して、また家族ができて……と家系図的に広がっていくなんて、すごくリアルな家族ドラマで、あんなことがやりたいと思うんですよ。

──実人生は、半年や1年で終わらないですものね。

『ひよっこ』も、本当だったら、最終週にいろんなことがどかどか片付いていかなくてもいいのだけれど、一旦終わりにしないといけないから、どこかフィナーレ感を作る必要がありました。観ていただいた方の、あれはどうなったんだろう? という疑問にはなるべく答えたいと思っていましたし。でも、先程話した、雄大と正義の友情をはじめとして、積み残したことがまだまだあって。由香の描かれなかった同棲相手のこととか、なんでヤスハルが片仮名なのかとか、三男の家にはふたりしか男がいないのに、なぜ三男なのかとかね。

──そういえば……。

それが語られるのは、高ちゃん(佐藤仁美)か米子か、どちらかに子供ができた時かと思っていたのですが、そこまでたどりつかなかったです。そういうのも含めて、どういう形かわからないですが、続編をやりたいと密かに暗躍中です(笑)。

──最近、そういう書ききれないことはスピンオフで書くみたいな流れがありますが。

スピンオフってここ数年の傾向ですよね(07年『ちりとてちん』が最初だった)。あれって、撮影中に、主役じゃないキャストで、同じスタジオを使って撮るシステムだから、まだ本編が手を離れていない作家本人が書けないことが多い。スピンオフ自体は書きたいネタはあるんですが、自分が書けないのはいやなんです(笑)。そっちが面白いと思われてもいやだしね(笑)。それは冗談ですが、作り手が、本編を書きながら、書ききれないことを、ここはスピンオフに回そうと思ったら何かが終わっていくような気がするんですよ。

──出し切ってほしいですね、本編で。

もちろんヒロインが中心のドラマであって、他の人たちのストーリーを全部書けるわけはないし、それこそ、朝ドラは後半になってくと撮影できる場所も限られてくるから、場面として描きたいこかったことはたくさんありました。例えば、乙女寮の子たちのそれぞれの居場所。澄子(松本穂香)の石鹸工場とかね。豊子の会社。幸子の団地生活とか。秋田の優子はやれたから嬉しかったけど。スタッフ頑張ってくれた。あの役は帰郷したあと出すのが難しいんですけど、どうしても出し続けたかったんです。

 

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優秀なスタッフのおかげで

──澄子といえば、豊子(藤野涼子)がクイズ番組に出たときの最終問題が、澄子の苗字・青天目の読みっていうのは、素敵でした。

あれはよかったでしょう(笑)。実は、乙女寮にいる間に、豊子がクイズに出るって話を思いついて、そのときから、最後の問題は青天目のネタを使う予定でした。あのエピソードは、演出も本気でしたね。

──クイズの問題は、岡田さんが考えているのですか?

問題は書いてないんです。高学歴NHK スタッフの力がみごとに発揮された設問でしたね。優秀な彼らの調査力、再現力はありがたいです。

──島谷の研究論文のテーマは。

あれもお任せしました。僕は、そういう細かいところは、☓☓☓にして、スタッフのアイデアに任せるほうです。

──そういうところ、ほかにもありますか?

巷でいろいろ言われた、水着問題。僕は、海辺のシーンを書いてないんです。台本では、雨が降っていたけれど、夕方になって晴れてきたというところで終わっていました。そもそも、あの撮影は、2月頃で、水着で海に入るのは無理だったからこその海を諦めてのシーンだったんですよ。だが、演出家は時間を捻出し、夕方ほんとに1時間くらいで、あのシーンを撮ったのだと思います。たぶん、みなさんすごく寒かったと思いますよ。

──でも素敵なシーンになってましたよね。

ちなみに、澄子の水着は、バーゲンの一番安いやつでサイズが合ってないものと指定したら、紫のビキニになってました(笑)。富さんと恋人の回想シーンも、演出家が自由にやっています。そういうの結構好きなんです。あと、尺の問題で泣く泣くカットすることになったしまったことも結構あって、残念だったのは、小さい話ではあるんですけど、みね子から大量に歯磨き粉を買った、鈴子と省吾が、由香に送ることにするシーン。それから、実さんをあんな目に合わせた、ひったくり犯が、実が生きていたことを知って号泣するという エピソード。他にもあるけど、ま、台本が長いからいけないんですけどね。

──雨で田植えしていた場面は、雨指定じゃないですよね。

もちろん。

──あれは、実が雨男で、雨のシーンが続いて……と何かうまくつながって見えました。

田植えのシーンを撮影するために、田んぼを貸していただける日が限られていて。その日に、雨が降ってしまったんですね。ただ、あの天候がどこかまだ心が晴れるまでは行ってない、みね子達、谷田部家の心情とどこかマッチしていたように思いました。ただ撮影は過酷だったみたいです。

木俣冬

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート?恋とはどんなものかしら?」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
初めて手がけた新書『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中! http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884273

その他、エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。 otoCotoでの執筆記事の一覧はこちら:https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/

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