May 03, 2018 column

『半分、青い。』制作統括・勝田夏子ロングインタビュー(後編) 漫画家編の面白さと難しさ、そして後半の展望とは?

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連続テレビ小説『半分、青い。』は、左耳を失聴し、半分しか雨音が聞こえないヒロイン鈴愛(永野芽郁)が、そのことを悲しむのではなく、半分だけ雨音が聞こえたり、それがあがって青空になることを楽しみながら、前に進んでいくドラマ。
前半では、企画の立ち上がりやテーマ、脚本家・北川悦吏子さんの魅力を伺いました。後半は、東京で鈴愛が漫画家になっていくターンに向けて、漫画を描く場面の面白さや難しさや、キャスト、主題歌、ドラマの時代の流行アイテムなどについて伺います。

 

──勝田さんは『ゲゲゲの女房』(10年)のときにも漫画を描く場面の演出はやってらっしゃるので、『半分、青い。』の漫画のシーンのノウハウは熟知されているでしょうね。

いえ、そんなこともないんですけれど……(笑)。漫画を描く場面の何が難しいかといえば、漫画家さんは“描く”ことが中心で、ほとんど机から動かないため、動きが限られてしまうことです。そうなると、アングルも限られますから。細かい部分では、原稿も用意しないといけないし、俳優本人がどこまで描くかも考えないとなりません。絵がはっきり映るところはプロの方に描いていただくことになるので、段取りが、通常の撮影よりも増えます。ちなみに今回、『ゲゲゲの女房』と違うのは、仕事場のセットです。鈴愛が取り組むのは少女漫画のうえ、くらもちふさこさんのようなスタイリッシュなものを描いている集団なので、セットも『ゲゲゲ〜』とは全然違います。

──『ゲゲゲ〜』では向井理さんが力を振り絞って描いている表情が印象的でした。

『ゲゲゲ〜』では“水木しげる”さんというカリスマが全身全霊で描いている姿が、奥さん(松下奈緒)の心を打って、『一生この人を支えていこう』と考える、その迫力をすごく大事にしていました。『半分、青い。』でも、その精神性は変わりません。北川悦吏子さんご自身が、漫画と脚本というジャンルは違えど、“ものを書く”ということについてプロとして強い矜持を持ち、それこそ“命がけで書く”ということを実践されていますので、『ゲゲゲ〜』と同じような凄みが随所に表現されています。紙の上で死闘が繰り広げられている。それをどう表現するかは演出の腕の見せ所だと思います。

──くらもちふさこ先生の代表作『いつもポケットにショパン』など、実在する作品を、違う作家が描いているという話にされていることがおもしろいと思いました。

今回、北川さんとくらもちさんがお知り合いだったことから実現した企画です。『オレンジデイズ』(04年)のノベライズの表紙もくらもちさんが描き下ろされています。北川さんが、カリスマの秋風が考える漫画の内容は半端なものではいけないので、くらもちさんにご協力いただきたいと、ご本人に話したらオッケーしてくださったそうで。たぶん、私のほうから突然お願いしたら、受けていただけなかったと思います。おふたりのご縁があってのウルトラCによって、かなり画期的な設定が生まれたと思います(笑)。

──現実とパラレルワールドなのだなと思って。“くらもちふさこがいない世界”ということですもんね。

そうですね。『いつもポケットにショパン』の作者は秋風羽織(豊川悦司)ですからね。

──ということは、ずっと気になっていたのですけれど、原田知世はいる世界なんですか? いない世界なんですか?

これはですね……さすがにご本人が俳優として、別の人物を演じているので、“いない世界”です。ただ、ご本人の歌はもちろん出ないですが、あの時代の歌は出ます。けっこうキワキワいっています(笑・3週で原田知世がカバーして歌った元曲『守ってあげたい』が出てきた)

──一人二役(原田知世と萩尾和子)というふうには。

いやいやいや(笑)。

──ともあれ、原田さんに限らず、みなさん、すばらしいキャスティングです。北川さんのドラマに出ている方がキャストにいらっしゃいますよね。

原田知世さん、谷原章介さん、豊川悦司さん。風吹ジュンさん、余貴美子さん、井川遥さん、などなどですね。