Oct 01, 2017 column

『ひよっこ』ロスなあなたに。脚本家・岡田惠和氏に、あの疑問、この疑問を聞いちゃいました!その2

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あえて、いま、「記憶喪失」を描いたわけ

──奥さんの、手作りTシャツのエピソード良かったです。

あれを思いついたときは、祝杯を上げましたね。ちょっといいなって(笑)。奥さんが東京に行くのは決めていたので、どういうふうに宗男と溶け合う瞬間を描こうかと思いながら、当時の資料を観ていたら、物販がないので、みんな手作りで、Tシャツに手書きしていたりして。そこから思いつきました。

──後のミニスカートブームで、愛子(和久井映見)が一生懸命、手持ちのスカートの丈を短くしているという、一歩変わっていく感じがいいですね。

あの頃の自分の感覚とか、自分の母のことを思っても、まずは、自分で工夫して、それがかなわないものは、買う時代だった気がします。とくに女の人は。

 

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──岡田さんは、この時代、進くらいの年齢ですか?

そうですね。

──進に感情移入します?

進は田舎の子で、僕は生まれも育ちも東京だったから、少し違いますね。三鷹なので、赤坂ほど都会ではないけれど、ざわざわした街の空気を覚えています。

──お父さんが、演劇の音楽を作られていたそうですね。

うちの父と母は、幸子(小島藤子)と雄大先生(井之脇海)みたいな関係で。母が新宿三越で働いていて、そこに父が音楽を教えに来て出会ったらしいです。

──雄大のモデルはお父さんということですか?

雄大くんのキャラクターとは違いますけどね、ただあの頃雄大くんの社会主義ロマンみたいな発言はわりと当時の青年像としては当たり前なんだけど、今は、ロシア革命の話をしようものなら、左翼の急先鋒みたいに捉えられてしまいますね。山田洋次さんの初期の映画にはああいう人いっぱいいるんですけれどね(笑)。ただ、ひとつ、心残りは、正義と雄大の友情の続きが書けなかったことです。パート2があったら描きたいですね。

──お金を返す話を書いてほしいです。岡田さんのパーソナルな部分も少し入っているドラマなのですね。

もし、明治時代の話を書いていたら“自分”を遮断すると思うんですよ。その時代に生きてないから、わかりっこないから。60年代は、かすかに記憶あるから、なんとなく自分が出てくる感じは今回ありました。それで言うと、「記憶喪失」というモチーフをやったじゃないですか。その理由はふたつあって。ひとつには、ここ近年、自分の中のサブテーマとして、ベタなモチーフを、自分なりに角度を変えて面白く書き換えることをやってみたいと思っていて。たとえば、『スターマン・この星の恋』(13年)だと“宇宙人との接近遭遇”、『さよなら私』「14年」では“入れ替わり”。そして、『ひよっこ』では“記憶喪失”です。韓流ドラマで用いられたことが印象に強いですが、過去には映画『ひまわり』とか『かくも長き不在』とか『心の旅路』などの名作があって。それは、なんらかの人の心を揺さぶる出来事だからじゃないですか。それをもうやり尽くしたみたいに思いたくないっていうのがありました。

──あえてやっていたのですね。

当然、過去作と比較されていろいろ言われるアウェー感満載でしたが(笑)。そこは、やりたいなって思っているんですよ。あとは、“タイムスリップもの”が残っているんですけどね(笑)。