本年度アカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画『FLEE フリー』が6月10日(金)より新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほかにて全国公開される。
本作は、主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作された。いまや世界中で大きなニュースになっているタリバンとアフガニスタンの恐ろしい現実や、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描く。
公開された特報映像は、主人公アミンの親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)が、彼に向かって尋ねる「誰かに話したことは?」という問いに対し、アミンが「一度もない」と答えるシーンから始まる。アミンが誰にも明かしたことのなかった自身の過去を、20年の時を経て初めて語り始める様子と、その言葉により回想される幼少期からの余りに過酷な経験を捉えていく。
アミンの複雑な感情をより忠実な形で伝えるために、本作ではシーンに応じて2つの全く異なるスタイルのアニメーションが用いられた。また、ニュース映像など実際の映像も織り交ぜながらドキュメンタリーとしての臨場感も伝わってくる。アミンの言葉を通じて明らかになっていく心を揺さぶる物語だけでなく、本作が持つ手法としての斬新さも確認でき、映画本編への期待が高まる。
もともと数々のラジオ・ドキュメンタリーを手掛けてきたヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、独創性に溢れるスタイルで本作を作り上げたことについて、「私的な物語を語る過程で、私は常に新しい方法や新しいアプローチを探求しようと心がけています。語られる物語に沿うように、映画の形式を捻じ曲げる方法を探るのです。『FLEE フリー』では、そのレパートリーにアニメーションを加えました。アミンが惜しみなく私に共有してくれた、貴重な証言にふさわしい舞台を与えられるよう、説得力があり、魅力的な語り口を作ることを目指したのです」と語っている。
あわせて公開されたティザービジュアルにはそれぞれの境遇を生きる国籍も様々な119人が描かれているが、これらは全て本作に登場するキャラクター。
この中には、カセットプレーヤーでお気に入りの曲を聴きながらはしゃぐ幼い頃のアミン、自身のトラウマと向き合う現在のアミン、そして彼の恋人や家族、ラムスセン監督の姿も。〈故郷とは、ずっといてもいい場所〉というキャッチコピーは、作中のアミン自身による印象深いセリフ。難民であり、ゲイであるという、2つの葛藤を抱えながら生きてきた彼にとって、この〈故郷〉という言葉が示す意味は非常に重い。ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督はアカデミー賞授賞式を控えて、先ごろ行われたインタビューでこう語っている。「この物語は、過去やセクシュアリティも含め、自分が誰なのか。それを知ることのできる場所を見つける、一人の人間の物語なのです」。
本作は、多くの観客に深い感動と衝撃を与え、昨年のサンダンス映画祭でワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の最高賞であるグランプリを獲得。アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞するなど、ドキュメンタリー、アニメーションという表現の垣根を越えてジャンル横断的に高い評価を受け、3月18日現在、各国の映画祭で76受賞140部門ノミネートという圧倒的な評価を獲得している。
ドキュメンタリー映画『FLEE フリー』は、6月10日(金)より新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほかにて全国公開。
アフガニスタンで生まれたアミンは、幼い頃、父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める‥‥。
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
配給:トランスフォーマー
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2022年6月10日(金) 新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほかにて全国公開