Apr 15, 2021 interview

映画『椿の庭』が魅せる日本の香り【上田義彦監督インタビュー】

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— シム・ウンギョンさん、チャン・チェンさんなども出演されている本作ですが、外国人キャストを積極的に配役した意図を教えて下さい。

渚は元は10歳前後の少女の設定でした。ウンギョンさんを初めて紹介されたとき、彼女は日本語があまり上手ではなかったのですが、それでも頑張って話してくれた。その、”想い”が先行して言葉を補っている姿が僕に染み込みました。一つの言葉にいろんな想いを込めて話していて、聞く側にも自然と想像力を掻き立たせてくれるのです。そこに強く惹かれ、僕が探していたのはこの人なんじゃないかと思い、(渚の)設定を変えました。

チャン・チェンさんの場合は、アジアの香りがする白開襟シャツの似合う魅力的な男。どうしても僕の映画に出てほしいと思っていたのです。僕の想いとしては、この映画は日本の映画ではあるのだけど、それと同時に東アジアの映画でもある、という感覚を持っています。東アジアの土の匂い、雨の匂い、湿度や光、この東アジアの映画に彼らが参加してくれることは僕にとっては自然でした。

—すると、渚が新聞を読み上げる場面などは、ウンギョンさんが参加されることが決まって脚本を変えた部分でもあるんですか?

彼女に当てて変えたところですね。でも元々、新聞のシーンはあったんです。僕は新聞を読んでいる人の姿を見るのがとても好きでね。僕の昔の写真の中にも、妻が新聞を読んでいる姿を収めたものがあります。(劇中で)孫と祖母が新聞を一緒になって読んでいる姿、やっぱり良かったですね。

—これから映画を見る方へぜひメッセージをください。

長い時を経て、かつてつくりあげられた日本の文化、生活、家、それらの中で暮らすことによって感じることができていた日常、そこには庭があり、四季の移ろいが家に居ながら感じられる文化があった。そんな景色が知らない間に目の前から少しずつ静かに消えていく。そこには何か一緒に大事なものもあったのではないかと思うのです。そして、それは確かに”美しいもの”であったのではないか、と。

(インタビュー・文:オガサワラ ユウスケ)

『椿の庭』は4月9日(金)、シネスイッチ銀座他で全国順次ロードショー 

椿の庭ポスター
映画『椿の庭』

監督・脚本・撮影:上田義彦
キャスト:富司純子、シム・ウンギョン、田辺誠一、清水綋治、チャン・チェン、鈴木京香

製作:ギークピクチュアズ/yoshihiko ueda films/ユマニテ/朝日新聞社
配給:ビターズ・エンド
制作プロダクション:ギークサイト
2020年/日本/128分/5.1ch/アメリカンビスタ/カラー
©2020 “A Garden of Camellias” Film Partners

4月9日(金)、シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー