『銀河旋風ブライガー』から『水戸黄門』まで、歌舞伎で培った“存在感”が多くのファンを魅了

歌舞伎町の皇帝ウインドブラストX誕生秘話!!

平野：

そして、今回ぜひお伺いしたかったのが、昨年、テレビやネットのニュースで大変な話題になった歌舞伎町のぼったくり注意喚起アナウンスのお仕事（編集部注：柴田さん演じる皇帝ウインドブラストXが、歌舞伎町訪問客にぼったくり被害への注意喚起をしつつ、悪徳業者を断罪するという内容。現在も歌舞伎町内で聞くことができる）。皇帝ウインドブラストX……あれは、どうして柴田さんがやることになったんですか？

柴田：

ゴールデン街に店を持っている関係で、新宿区歌舞伎町タウンマネージメントっていう団体のメンバーになっていて、その縁で頼まれたんだよね。それまで歌舞伎町の注意喚起アナウンスは警察署の職員がやっていたらしいんだけど、全く効果が感じられないとかで。それなら、声優の柴田さんがやればもっと効果が期待できるんじゃないか……って。

古川：

良いアイデアですね！

柴田：

でもさ、「え～、歌舞伎町の皆さん、声優の柴田でございます」なんて挨拶しても聞いてもらえるわけがないじゃない。それで、俺がこれまでにやったキャラクターの声でやれば良いってこっちから提案したの。許可はこっちで取るからって。

古川：

結果、すっごい話題になってましたよね。歌舞伎町で過激なアナウンスが流れてるってテレビでも取り上げられてましたよ。デギン・ザビ（『機動戦士ガンダム』）の声で「客引きはカスである！」とか面白すぎる（笑）。

柴田：

あの原稿はうちのお客さんたちが考えてくれたんだよ。俺よりもお客さんの方が、俺のやった役に詳しいからね。

平野：

ウインドブラストXという名前はやっぱり、ご自身のお店の名前「突風」から取られたんですか？

柴田：

そう思うだろ？　でも違うんだな。本当のネタ元は俺が、モンキー・D・ドラゴン役をやっている『ONE PIECE』の海外版コミックスからなんだよ。海外版では、ドラゴンが登場するシーンで「Wind Blast!!」って叫びながら登場してくるんだ。

古川：

それで皇帝ウインドブラストXなのか～。知らなかった！　……さて、本当に柴田さんのお話は面白すぎて、いくらでも聞いていたいのですが、さすがにそろそろまとめに入りましょう。声優・柴田秀勝の「これから」について教えてください。

柴田：

とにかく何歳までできるか挑戦だね。いま、現役の先輩はほとんど残っていないからなあ。元気なのは羽佐間道夫さん（『超時空要塞マクロス』グローバル館長役など）と、小林清志さん（『ルパン三世』次元大介役など）くらい？　この2人ががんばっている限り、俺もがんばろうって思ってるよ。

古川：

お芝居はもうやらないんですか？

柴田：

さすがにもう身体が付いていかないかな。あと、記憶力も。芝居の最中に台詞が全部抜け落ちちゃった自分を夢に見そうで怖いよ（笑）。

平野：

では、声優を長く続けていくにあたって、心がけていることはありますか？

柴田：

ありますよ。それは滑舌です。カ・ツ・ゼ・ツ。実写の役者なら歳取ってろれつが回らなくなってきても、それが「味」ってことになるのに、声優はそういうわけにもいかないでしょ？　俺はもう80歳よ？　そんな歳になって、滑舌完璧、語尾もピシッ!!　なんてありえないよ。もう最近は演技のことなんか考えず、滑舌をちゃんとすることしか考えてないね。それ以外のことを考える余裕はありません（笑）

古川：

でも、何だかんだで、最近のアニメにもたくさん出演していますよね。今後の活躍にも期待してます!!

構成・文 / 山下達也
撮影 / 田里弐裸衣