Feb 24, 2017 interview

水川あさみ主演であの『東京カレンダー』の炎上リア充女子を映像化!タナダユキ監督に制作の裏側を聞いた

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──出てくる街の中で好きな街はありますか?

それ聞かれると困っちゃうんですよ。私は山手線だと恵比寿よりも大塚や巣鴨が落ち着く人間なので(笑)。三茶は住みやすそうと思ったけれど、道幅に対しての自転車が多すぎるかなとか、代々木上原も静かでいいなと思ったけれど、坂が多いなとか(笑)。銀座は、住むとこあるの? というくらいで(笑)。綾の志向が面白いのは、銀座の女になるって銀座に住んじゃうところですよ。

──突き抜けていますよね。

そうなんですよ、その突き抜け具合がいらっとするところでもある。でも彼女は決してブレない。最後のほうで少しブレますが。最初、見る人が毒づきながら観ていても、気づいたらほんのちょっとだけ応援したくなるといいなと思いながら作りました。最終話まで観ていただくと綾なりにすごくがんばったなっていうのがわかると思います。他の登場人物たちも、東京でバカやりながら、みんな一所懸命生きていたんだなと。

 

主題歌の大熊猫子は実は・・・

 

──ところで、主題歌を劇団『猫のホテル』の佐藤真弓さんが歌っていることが気になりました。

気づいてくれてうれしいです(笑)。

──なぜ、佐藤真弓さんだったのでしょうか?

ドラマのクランクインのちょっと前に大倉孝二さんがやっているジョンソン&ジャクソンの『夜にて』という舞台を観に行って、そこでスナックのママ役で出ていた佐藤さんが歌うシーンがあって、すごく上手くて。それまでも佐藤さんには『ロマンス』などにもちょっと出てもらったりしていましたが、こんなに歌がうまいって知らなかったから、これは世の中にお知らせしないといけないという使命感で(笑)。佐藤真弓さんがピコピコサウンドで歌うなんて、小劇場で彼女を観ている人も想像しないだろうし、彼女を知らない人にとっては、こんなに可愛い声で見た目も若いけれど、若いアイドルじゃない(笑)っていうことの意外性だとか、いろいろな意味で裏切りがあっていいなと。それでオファーしたら快諾してくれました。

──東京リリー&ローズというのはこのドラマのためのユニットですか。

遊びなのでユニットというほどでは……もうひとりのn.oは大熊猫子のn.oで、大熊猫子は私のペンネームです(笑)。コーラスをやっているのですが、使われているかわからないです。配信の良さは、こういう遊びもやれることですね。地上波だったら、しかるべきミュージシャンとのタイアップになると思うんですよ。

──歌詞がドラマを端的に表している気がします。

私たちは多かれ少なかれ、知らない誰かが決めた何かに常に踊らされているだけなのかもしれないと。だからこそ踊らされていることを承知で、それでも突き進むストレートな歌にしました。基本的にはいつも“ないものはつくる”主義なので、ドラマのためのユニットをつくれてよかったです。

──今回ほかにトライしたことはありますか。

銀座のオールロケですかね。あとは、マキシマっていうカメラ機材を、日本ではじめて使った作品です。ステディカムは角を曲がるときの揺れにちょっと弱いそうなんですが、マキシマにはそれがないんです。

──街の画がきれいに撮れていたのはその機材のおかげですね。

やっぱり街を撮ることは映像にかかわる人間として大事なことのような気もしていて。昔の映画を観ると、例えば、銀座ってこんなに道路が広かったんだって映像作品を通して知ることが多い。だったら、これは20年間の話を描いてはいるけれど、今の東京をちゃんと撮っておいたら、海外の人が観ても、東京ってこんな街なんだって、意外とキラキラしてない場所もあるんだ、やっぱりキラキラした場所もあるんだっていろいろ楽しめるのではないかという気持ちで撮っています。

──現代の小津安二郎に(笑)。

ははは(笑)。恐れ多すぎて笑ってしまいました。英語字幕とドイツ語字幕をすでにつくっているようです。