Jun 14, 2020 interview

『パラサイト』宣伝プロデューサー星 安寿沙が語る新作映画と、映画をとおして知る世界

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これからの映画館で映画を楽しむために

――星さんにとっては、『パラサイト』は今まで宣伝で関わった作品の中でも思い出深いものになったんじゃないですか?

本当にそうですね。こんなに長期戦になるとは私も思っていませんでした(笑)。1年間同じ作品の宣伝をすることはないので。

――そうでしょうね。こんなに大ヒットする作品に関わることができるのも、そう毎年あるわけじゃありませんものね。

人生に一回あるかないかぐらいのものだったと思うので、本当に関われたことが光栄だったんですが、そのぶん胃が痛い日々を……(笑)

――えっ、どうしてですか?

良い作品であるがゆえに、多くの方に観てもらえるよう、良い形でお届けしなければ…と、胃がキリキリしました(笑)

――ちゃんと良い形で、観客のみなさんに届いたから良かったですね。気になっていたんですが、アカデミー賞受賞後にポン・ジュノ監督が来日されたときは、どんな雰囲気でしたか?

日本でも交友がある映画監督や俳優の方たちがお祝いに駆けつけてくださいましたね。そこで、次に撮影するときにはお互いの現場に行こうと約束していたりして。刺激を受け合っていて、すごくいい関係性を築いているなと。素晴らしいことだなと思いました。

――日本では是枝裕和監督とも仲が良いんですってね?

是枝監督には、今回も対談などでご協力いただきました。ポン・ジュノ監督は漫画にも造詣が深いのですが、浦沢直樹さんや古谷実さんが大好きで。浦沢さんとは、数年前もお会いになっているんですが、今回も対談をしていただきました。自分が好きだと感じる日本のカルチャーからも刺激を受け、そこから得たものを作品に反映させているようにも感じるので、同時代に作品を生み出している方たちと交流しているのは、とても良いことだなと思いました。

――『パラサイト』は営業を再開した劇場でもまた上映されていますし、【モノクロver.】【IMAX】の上映も始まりましたし、星さんもまだ『パラサイト』の仕事が続きそうですね。ステイホーム期間中は、宣伝の仕事はどうされていたんですか?

『パラサイト』は今後パッケージの発売もあるのでそのやり取りや、『在りし日の歌』という中国映画を担当していたのですが、公開から1週間もしないうちに休映になってしまったので(今は上映が再開されています)、そうした仕事を在宅でやっていました。

――普段はお忙しいでしょうから、少しは時間に余裕ができたんじゃないですか?

そうですね。時間に少し余裕ができた分、見逃していた映画を配信などで観ていました。

――私も普段はなかなかそういう時間が取れなかったので、昔の作品を見返したりしていましたよ。ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』 (2004年)も久々に見て面白いなあと思ってましたよ。あの映画は、うちの小松が予告編を作ったんですけど、当時、試写を見せていただいたときに負けたって思ったんですね。何に負けたって日本映画負けちゃったよって思って。

本当に今見ても面白いと思います。そういう意味では、ステイホーム中は多くの方が、昔の映画にふれる期間にもなったんじゃないかと思います。配信でお気に入りの監督を見つけて、劇場に追いかけていってもらいたいですね。

――そうね。昔の映画にふれて、また劇場に行ってもらえるといいですね。今はまだ劇場へ行くのは我慢しようかなとか思う人もいると思いますが、劇場側は換気もちゃんとやってるし、座席の間も空けて座るようになってるし、いろんな対策を取っているので、やっぱり大きなスクリーンで観てほしいっていうのがありますよね。久しぶりにスクリーンで予告編を観たらドキドキしましたもの。

そうですね。映画館も安全面を考えてしっかり対策をとっていただいているので、来場する皆さんにもご協力をいただきながら、安心して足を運んで頂けると嬉しいなと思います。大きなスクリーンで予告編を観て新作を知るワクワクも劇場ならではの楽しみ方ですし、映画館に行く習慣を忘れずにいてほしいなと思います。

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文 / 吉田伊知郎

プロフィール
星 安寿沙(ほし あずさ)

ビターズ・ エンド 宣伝プロデューサー

1988年生まれ。配給会社や映画館でのインターン・アルバイト、学生映画祭運営などを経て大学卒業後、通信キャリアへ入社。その後「映画と観客を繋げる仕事がしたい」と2013年、映画配給会社ビターズ・エンドに入社。宣伝パブリシストとして『牯嶺街少年殺人事件』、『チョコレートドーナツ』、『おみおくりの作法』、『恋人たち』など約30作品を担当。宣伝プロデューサーとしては『パラサイト 半地下の家族』のほか、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』、『ある少年の告白』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、『在りし日の歌』(公開中)などを手がける。

作品情報
『パラサイト 半地下の家族』

【 IMAX】 6月12日(金)公開
【モノクロVer.】 公開中

全員失業中、“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行く。そして兄に続き、妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…。
この相反するふたつの家族の出会いは、次第に想像をはるかに超える物語へと加速していく――。
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
配給:ビターズ・エンド
ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
公式 HP:http://www.parasite-mv.jp/


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池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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