Jun 14, 2020 interview

『パラサイト』宣伝プロデューサー星 安寿沙が語る新作映画と、映画をとおして知る世界

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韓国映画初のカンヌ映画祭パルムドール受賞をはじめ、第92回アカデミー賞では作品賞・監督賞他4冠受賞の快挙を成し遂げたポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』。日本でも大ヒット上映中の本作で宣伝プロデューサーを担当した星安寿沙さんに、宣伝秘話や、近年のポン・ジュノ監督作品を連続して配給し、独自の個性を発揮するビターズ・エンドについてお話をうかがいました。また日本の様々なクリエイターたちと交流を持つポン・ジュノ監督の素顔や、6月12日から公開が始まった『パラサイト 半地下の家族』【IMAX】の見どころも明らかに。

映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』の池ノ辺直子が代表を務める予告編制作会社バカ・ザ・バッカは、ビターズ・エンドとは20年ぶりの仕事となった『パラサイト』の予告編を担当。ポン・ジュノ監督の初期作『殺人の追憶』の予告も担当したことから、当時の思い出も語られます。

スクリーンの大きさと音響に注目の『パラサイト 半地下の家族』【IMAX】

――『パラサイト 半地下の家族』【モノクロver.】観に行って来ましたよ〜。面白かった〜!こんなストーリーだった?と思うほど。地下に行くドアが真っ黒で吸い込まれるようで怖かった。そして、【IMAX】も公開しましたね。このIMAX版もモノクロなんですか?

いえ、IMAX版はカラーです。私も当初、このバージョンがあることは全然知らなかったので、IMAX版があると聞いたときはビックリしました。

――IMAX版はどんなところが見どころですか?

スクリーンの大きさによる臨場感もそうですが、豪雨のシーンなどの音のダイナミックさも感じてもらえると思います。

――今回、『パラサイト』が大ヒットしたことで、この作品を配給したビターズ・エンドさんってどんな会社?って思った人もいると思うのですが、問い合わせとか多かったんじゃないですか?私は聞かれた時に「良質な映画を配給したり、製作したりしている会社なんですよ。」ってお答えしておきました。会社が出来てからどれくらい経つんですか?

今年で27年目に入りました。

――社長の定井勇二さんはポン・ジュノ監督と仲が良かったんでしたっけ?

13年ぐらい前からのお付き合いだと聞いています。最初は『TOKYO!』 (2008年)というミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノがそれぞれ東京を舞台にして撮ったオムニバス作品がありまして、弊社が製作にも入っていて配給した作品なんです。そこからポン・ジュノ監督とのお付き合いが始まって、『母なる証明』 (2009年)、『スノーピアサー』(2014年)と配給を続けてきて、『パラサイト』は2018年のトロント国際映画祭で脚本の段階で買っています。

――そうそう。アジアやヨーロッパの監督たちは、各国に企画や脚本の段階から購入してくれるプロデューサーを大事にしていますよね。

そうかもしれないですね。これは代表の定井の方針でもあるんですが、ビターズ・エンドでは、この監督は才能がある、この監督の作品を配給したいと思ったら、ずっと長く手掛けるというスタンスなんです。

――でも、監督と信頼関係が出来ていないと、いくら買い付けたいと言っても無理ですよね。

そこはうちでやりたいと熱意を伝えた部分もあったとは思うんですけど、『パラサイト』を配給できたのは、お互いに信頼関係があったということも大きいのかなと思います。

――今年、ビターズ・エンドさんはどんな作品があるんですか。

公開中の『その手に触れるまで』はダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ)の新作なんですが、これも『パラサイト』と同じ年のカンヌで監督賞を受賞した作品です。

(C) Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

『その手に触れるまで』 公式サイト: http://bitters.co.jp/sonoteni/

――ダルデンヌ兄弟の作品も、ずっと配給されてますよね。

20年以上配給し続けている監督の最新作になります。イスラム過激思想に傾倒していく少年が、先生を殺したいという欲望に駆られるんですが、多くの人たちとの関わり合いの中で、どう変わっていくのか。どうしたら、他者を受け入れることができるのかを問う普遍的な作品です。

――『今宵、212号室で』(6月19日公開)はどんな作品ですか?

これもカンヌである視点部門最優秀演技賞を受賞した作品で、マルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘のキアラ・マストロヤンニが主演です。中年夫婦が離婚の危機を迎えて、妻がアパルトマンの向かいにあるホテルの212号室に籠もるんですが、うたた寝から目を覚ますと、若い頃の自分の夫が現れる・・・という大人なファンタジーです。

(C) Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema

『今宵、212号室で』 公式サイト: http://www.bitters.co.jp/koyoi212/

――これはどこで上映されるんですか?

Bunkamuraル・シネマとシネマカリテなどで上映されます。

――邦画もありますね。

『のぼる小寺さん』という作品で、公開は7月3日になります。オリンピックでも話題のボルダリングに夢中な女子高生・小寺さんをめぐる話で、すべての頑張る人の背中を押してくれるような爽やかな青春ストーリーです。元モーニング娘。の工藤遥さんが主演で、伊藤健太郎さんなど旬なキャストがたくさん出演しています。

(C) 2020「のぼる小寺さん」製作委員会 ©珈琲/講談社

『のぼる小寺さん』 公式サイト: http://www.koterasan.jp/