Mar 10, 2018 interview

FOXでの20年間でターニングポイントになった作品、そして今後について思うこと。

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池ノ辺

その20年、ずっと営業畑だったんですか?

平山

そうです、基本的にはずっと営業です。

ただ、その間にはターニングポイントもあって、2006年に『リトル・ミス・サンシャイン』という作品があったんです。

これは今でも残っている良い作品ですよね。

池ノ辺

あの映画は、FOXサーチライトがサンダンス映画祭で見つけてきたんじゃなかったでしたっけ?

平山

そうなんです。

それで、今も活躍されているパルコ エンタテインメント事業部映像担当の堤(静夫)さんから、すごく良い映画をサンダンス映画祭で観たんだけど、FOXサーチライトが買ったらしい。

上映できないかという話が来たんです。

池ノ辺

パルコさんがやりたいって言ってきたんですか?

平山

渋谷にシネクイントという劇場をパルコは持っていましたよね。

そこで上映したいから、出来ないかと。

それで、僕も日本でやりたいなと思ったわけですよ。

ただ、なかなかこの作品の良さを社内でも分かってもらえなかったんです。

最終的にアカデミー賞で脚本賞と助演男優賞を獲りましたけど、そこに行き着くまでは、スターが出ているわけでもないし、地味な独立系の映画に見られていたんですね。

だけど、何か引っかかるものがあったので、何とかしたいと社内で粘っていたわけですよ。

その時にちょうど、会社の日本代表としてジェシー・リーさんが赴任してきたんです。

それで最終的にジェシーさんの判断で日本もやろうということになって。

ところが、誰がこれを宣伝するんだという話になって(笑)。

池ノ辺

宣伝部がやるんじゃないんですか?

平山

そこまで手が回らなかったんですね。

それで、この時は宣伝部の鷲谷(一)さんと二人三脚でやった感じです。

だから、宣伝に本格的にのめりこみだしたのは『リトル・ミス・サンシャイン』からなんですよ。

それ以降、営業部なんだけど何となくサーチライトの作品は、僕がなぜか深くコミットするようになったんですね。

池ノ辺

それは知りませんでした!

平山

実はそういう流れがあるんです。

その後も、サーチライトの宣伝担当者というのが宣伝部の中にずっと居るんですけど、サーチライトに関しては僕も一緒になってかなり密にやるというスタイルがずっと続いていたんです。

池ノ辺

それで今年からは1人でやってね、ということになったんですね?

平山

去年からですね。2016年の暮れにちょっと会社の規模が縮小になったんですね。

その時にサーチライトの作品どうする?という話が社内であったんです。

それで、他の国では社内にサーチライトの担当者が1人いて、その人に全ての情報を集めてやっていくというスタイルを取っているので、日本もそういう風にしたらどうかっていう話がちょうどあったらしいんですよ。

サーチライトって良質な作品を出し続けているから、社内にちゃんと担当者を置いておいた方がいいし、それで平山にやらせたらどうかということになったんです。

池ノ辺

『リトル・ミス・サンシャイン』からやっているんだし、平山さんが全部やりなさいよと。いい考えだわ(笑)

それでね、誰もが聞きたいことを質問します!!今とっても話題になっているのが、サーチライトがディズニーに吸収されるのではないかというニュースが2、3か月前にありましたが、どんな感じなんですかね?こんなにいっぱい良い作品を持っているからこそ欲しいんでしょうけどね。

平山

どうなるかは正直なところ、会社のことだから全然分からないんですけど、僕がひとつだけ言えるのは、良いものはなくならないですよ。

池ノ辺

なるほど!

平山

亡くなった桂米朝師匠が、上方落語のどん底の時期に、こんなにええもんは失くなりませんと仰っていて、それで今があるわけじゃないですか。

本当に良いものは残っていくと思うんですね。

サーチライトは、もうその域に達しているんじゃないかと思うんですけど?

池ノ辺

本当にそうですよ!

平山

だから、そこに関しては全然悲観していないと言うか、それはベルリン国際映画祭に行って最前線で働いている本社のスタッフたちと再会した時も、改めて痛感しましたね。

全然テンションが下がっていなくて、素晴らしいモチベーションを持ってみんな仕事をしていました。

これからも、もっと素晴らしい作品が出て来ると思いましたね。

(文:モルモット吉田 / 写真:根田拓也)


© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

第90回アカデミー賞®最多13部門ノミネート。『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督が贈る切なくも愛おしい、誰も観たことのない究極のファンタジー・ロマンス。声を失くした孤独なイライザと、遠い海から連れて来られた“彼”。冷戦下のアメリカで、種族を超えた恋に落ちる二人だが、国家の行方を握る“彼”に危険が迫る─。

『パンズ・ラビリンス』の名匠ギレルモ・デル・トロ監督の比類なき世界観が、本年度ベネチア国際映画祭でも審査員のみならず観客も魅了。最高賞:金獅子賞に、満場一致で輝いた。

監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ ほか

配給:20世紀フォックス映画

大ヒット公開中

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/


PROFILE

■平山義成(ひらやま よしなり)

20世紀フォックス映画 営業本部/FOXサーチライト シニアマネージャー

1969年生まれ。1994年松竹株式会社に入社。映画興行部にて番組編成スタッフとして従事、以降ブエナビスタ・インターナショナル(ジャパン)を経て、1998年、20世紀フォックス(極東)映画会社に入社。主として配給営業を手がける。 2006年の「リトル・ミス・サンシャイン」をきっかけに、FOXサーチライト作品の配給業務全般に関わり始める。 2017年1月より正式に日本におけるFOXサーチライト作品の業務全体を統括し、以降、『ドリーム』(FOX2000作品)、『gifted/ギフテッド』、『スリー・ビルボード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』を送り出す。 待機作品は『犬ヶ島』(5月公開)、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題)』(7月公開)

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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